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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
4章 春季大会

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20話 釣る

公式戦での、チーム内で初めての被撃墜。

それも、撃たれたのではなく、接触による墜落。

つまり自滅。


「う、上に退避します!」

「ダメ!1機で空にいたら狙い撃ちされるよ!」

「今行く!待ってろ!」


そのせいで、ダガーが孤立状態にある。

何をやってるんだ、私は。


「ジャベリン、仕切り直すぞ。早く来い」

メンバー同士の通信が飛ぶ中で、私は呆然と、何も答えられなかった。

「どうした、返事しろ!」

私のミスのせいで、みんなが一気にピンチに……。


『お前のせいで負けた』って、脳裏を掠めた。

奥歯を噛み締める音が鳴った。


「スコアは取り戻したから、気にしないで!」

「そういうこった、早く合流しろ」

「どんまい、だよ!」


スコアを……取り戻した?

確かに画面左上に映るスコア表示は、100-100の同点で並んでいた。


……いつの間に?


「支え合うのがチームだからね~。お姉さんに任せなさい!」

しれっとビハインドを取り戻している。

やっぱり、すごいな。この人は。


「す、すみません!ジャベリン、今行きます!」

さっき「脅威のニューフェイス」なんて言われて。

18の撃墜スコアのうち8を私が記録した、なんて言われて。

少し浮かれていたのかもしれない。


「いちいち凹んでる時間はねえぞ!

 どうやって勝つか、だけを考えろ!」


気を引き締めるには、いい薬だ。


* * *


残り時間は『低空を逃げ惑うクロウラー』と『攻めあぐねる私たち』の構図になり、

1ラウンド目は有効打なく、ドローで終了。


2分のインターバルにて、対策を練る。


「みんな。いいリカバーだったよ」

山本先生が言ってくれたのは、試合内容そのものよりも、

私のミスをみんなで取り戻そうとした一連の流れについて。


それは嬉しいけど、

勝つための具体的な攻略法は、まだ見つかっていない。

「どうしましょう……ミサイルが障害物でブロックされちゃう」

「怖かったよー。あっちは建物の隙間を縫って攻撃してくるんだよー」

「新設のチームと言ってたが、しっかり地形を研究してやがる」


蘭花は困った様子のまま、先生に尋ねた。

「おっさん、何か策はないか」

「そうだね……僕は一緒に飛ぶ人間ではないから。

 戦場での指揮権は常に、1番機の朧谷くんが持つべきだ。ただ……」

先生はそう前置きしてから。


「相手が嫌がることをする。古来よりゲーマーの鉄則だね」

とだけ言い残した。


「あのね。思ったんだけど」

月子はいつものニコニコ顔で、両手を胸の前で合わせた。


「相手の得意フィールドで戦う必要はないよ」

その言葉に蘭花は納得したようで、腕を組みながら考えを示した。


「いくら奴らが低空を飛ぼうと。

 付き合わなければ向こうはスコアが取れない。

 どこかで攻撃に転じるはずだ。そこを」

腕組みを外し、拳を他方の手に打ち付けた。

「ダガーで釣る」


「うん、それでいってみよう!」

月子は胸の前で両手を叩き、パンっと乾いた音を鳴らした。


「ひばり。ギリギリまで高度を下げてね」

「攻撃が来たら全力で逃げろ。スモークもフレアも躊躇うな」

「は、はい!頑張ります!」

「風咲は上から敵の位置を把握しろ」


次のラウンドは、私は主に目の役割を担う。

ひばりがピンチのときにはいつでも助けられるよう

特殊兵装を高性能誘導ミサイル『ワスプ』に変えておく。


「私と蘭花はプレッシャーをかけるよ」

「リザードたちが顔を出したら、全力で叩くぞ」

方針は決まった。


1ラウンド目の借りを返してやる。


* * *


「最初は、みんな散開して」

「固まればヒュドラの餌食だ」


散開した状態で、相手が潜り込むであろう港湾都市を回り込むように飛ぶ。

その中で、相手の先制攻撃。ヒュドラの曳光が見えた。

ロックの先は、セイバーとメイス。

2人は難なく回避する一方。

「アーバレスト!いっくよ~!」

セイバーが射程の長いアーバレストで反撃。

回避されたけど、リザード機は低空のビル群へ潜り込もうとする。

そこへセイバーがもう1発アーバレストを放った。


今度は。

「かすったよ~!」


スコアには、半端な値の「25」が加算された。

近接信管でミサイルが爆発し、相手に手傷を負わせたことを意味する。


「これでスコア優位だ!連中は攻撃に転じる必要が出てきた」

「あとは根比べだね〜。行くよメイス!」

「了解だ。構わず撃ちまくってやるぜ」


建物の、橋梁の、クレーンの合間を、リザード機とクロウラーの各機が縫うように進む。

セイバーとメイスの2機は、地形の影響を受けない高度を保ち、攻撃をしかけながらリザード機を追う。

その横っ腹を、あるいは背後を突こうと、クロウラー隊がさらに回り込む。


私は上空で、その様子を伺う。


「次の角、RF-29来ます!」

先輩たちに状況を送りながら。

「AX-16、メイス機の後方に移動中!」

クロウラー隊の意図を読み取る。


クロウラー4機は、港湾都市に複雑な軌跡を描きながらも、

規則に則って動いているように見えた。

全体が、1つの巨大な意志で動いてるみたい。

HUDを見てても、狙いが明確。

『このときはこう対処する』って、綿密に打ち合わせがあり、

今なおリアルタイムで連携を取っているに違いない。


下に集中している私は、急に襲われたら多分対処できない。

でも、クロウラー隊にはその意図は見えない。


見えるのは、『自分の領域に飛び込んだ獲物だけを確実に狙う』という鋼鉄の意志。


新しいチームだって言ってたのに。

1年生もいるのに。

どれだけ特訓すれば、この連携が手に入るんだろう。


倒すべき敵なのに、少し感動してしまった。

でも気持ちはすぐに切り替える。

あえて言い換えよう。


読みやすい。


「ダガー、降下して!先輩たちの9時方向!

 横を狙うTX-04を釣るよ!」

「りょ、了解!」


「食らいついたら、セイバーが行く。ダガー、堪えろよ!」


ここからは私たちの連携を見せる番だ。


クレーン地帯の隙間を通って進む敵機の進路に、ダガーを案内する。

まず後方の上空から狙ってもらう。

「ロックしました。ダガー、FOX2です!」

当たらないのは想定内。

『お前を狙っているぞ』という意図が伝わればいい。


敵機は、慣れた動作で障害物でミサイルをカット。

その後ダガーには、あえて前に出てもらう。


敵がピッチアップ。加速。

ダガーを狙った。


食いついた。


「ロック、されました!」

「今行くよ~」

セイバーが上昇し、大きなループを描いた。

地形から顔を出した敵のブルーコメットを狙いに行く。

相手は危険を察し、スモークを散布。

でも上空の私からなら、スモークの広がり方から、敵がどこに移動したか見える。

「ターゲット右旋回!」

「おっけ~!多分、ここ!」

セイバーがスモークの上から機銃を掃射。

激しいマズルフラッシュと、スモークに吸い込まれる光の列。

そして青いスモークの中で弾けるオレンジの炎が、

私の位置からも確認できた。


「落とした~!」

「ナイスキル!」

「さすが、グッドキル!」

「怖かったー!ナイスキル、です!」


セイバーはそのまま移動しメイスと合流。


そのとき、ダガー機に向けてもう1機。

スモークを揺らして飛び出そうとしている機影がいた。


「ロックされてる!うそ、ミサイルアラート!どこ!?」

「ダガー!下だよ!ブレイク!」


ダガーから、即座にフレア射出。

同時にスモークが展開された。


双方のスモークが重なって二重に視界不良だけど、

一瞬見えた。RF-29が迫ってきている。


機体をロールし背面にしつつ機首を挙げ、フルスロットルで降下。

「ワスプ!FOX3!」


退避するダガー機と入れ替わるように、上から敵機へワスプを叩き込んだ。

相手の機銃が少し掠めて甲高い音が聞こえたけど、スモークの中に敵機の爆発が見えた。


2ラウンド目の8分が終了。

いつの間にか息を止めていたことに気づいて、大きく呼吸をした。


最初の削りの25と、今の2機撃墜で200が私たちに加算。

機銃を受けてのダメージ分33が相手に加算。


スコア、225-33。

これで1勝1分。


次の第3ラウンドは、ドローだったとしても私たちの勝利が決まる。

クロウラー隊は、必死に攻撃を仕掛けてくるはずだ。


どう来る?

何であろうと、受けて立つ。

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