表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
3章 春大会に向けて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/36

15話 槍

「風咲、索敵だ」

「了解。2時方向、4機固まってます」

「風咲はヒュドラを撃って。散ったところを追うよ~。

 ひばりは風咲に付いて」

「りょ、了解です!」


会議で色々な案が出たものの決定打にならず、TACネームは決まらないまま。

「とりあえず飛んで考えよう」という蘭花の一言で、野良の4機編成との対戦を始めた。


「ロックオン、ヒュドラ撃ちます!」

「特殊兵装はFOX3だね~。ヴァイパーならFOX2」

「厳密には違うって、おっさんが言ってたぞ」

「いいの!ゲーム内ではそうなんだから!

 そんなこと言ったら『全部フレアで回避するのはおかしい』って、先生頭抱えちゃうよ」

「き、きつねさん?」


4機をまとめてロックし、ヒュドラ射出。

目論見通り、敵機が散開。

私たちは2機ずつに分かれて追う。


「風咲は高度を取っておけ。ひばりは風咲から離れるな。

 お前の目標は生き残ることだ。死んでも生き残れ!」

「そんな無茶な!」

相変わらず蘭花はスパルタだ。


「蘭花との練習を思い出してね」

「が、頑張ります!」

「行くよ!離されないでね!」


相手はミサイルの回避に専念している。

先に撃った私たちが流れをコントロールし、優位な位置取りに成功。


でも、仕切り直した2機が向かってきている。

動きの遅れたひばりに、敵が狙いを付けた。


初心者のひばりが対戦で活躍できるほど、

このゲームは甘くない。

人間のプレイヤーは、キャンペーンモードの敵エースよりも遥かに手強い。


ひばりも逃げようとしたが、1機が背後を取った。


大きな三角の尾翼と、突き出したデルタ翼。

コクピットの横に小さなカナード翼。

流線型のフォルムに、鼻先から一本だけ伸びた給油口が見える。

EX-88『ストームエッジ』だ。


「ロックされてるよー!音がー!」

「落ち着いて!ミサイル来るよ!」

でも助けに入るのは、まだ。

試合前の打ち合わせでは「すぐには助けるな」という指示を受けている。


蘭花との練習成果のチェック、

戦いの中で生存率を上げる練習も兼ねている。


EX-88から、ミサイルが白煙を上げるのを確認した。

直後、ひばり機から複数の光の粒が舞う。フレアの射出。

同時にひばり機が急旋回。ミサイルから角度を取るように動いている。


間違いなくブレイク機動だ。

「練習の成果、出てる!」

敵ミサイルはフレアに吸い込まれ、回避に成功。


もうそろそろいいだろう。


上空から急降下。

高度を速度へ。

ひばりを狙う不届き者を、上から狙い撃つ。

「FOX2!」

速度を乗せてミサイルを放つ。


回避の間もない。直撃。

大きな主翼はもぎ取られ、

グレーの機体がオレンジの炎に包まれ、

EX-88が回転しながら落ちていく。


「お~!グッドキル!」

「やるな!ナイスキルだ!」

月子と蘭花がほぼ同時に叫んだ。


直後に再度上昇し高度を取る。

もう1機の敵の姿も確認した。

青いカラーだ。


機首の下に大きなエア・インテーク。

コンパクトで引き締まったシルエット。

AX-16『ブレイズ・レイブン』だ。


その機体は急遽背を向け、離脱を図る。

大きな1基のエンジンノズルにアフターバーナーを焚いた。


2対1の状況で、不利を察して即離脱。

素早い判断だ。

でもスコアは頂く。


再び高度を速度に変換し、

一気に仕留めようと後ろからロック。


AX-16はロックを振り切ろうと急旋回。


「もう1機来たよ!」

ひばりが注意を促す。

急速接近中の機体が1。

背中の大きな三角翼。シルエットが遠くに見えた。

さっきのEX-88だ。


「さっき落ちたのに!」

「試合は8分間の落とし合いだ。

 撃墜されても、数秒で戦線に復帰する」

戸惑うひばりに、蘭花が補足している。


勝利条件は敵を全滅させることではない。

8分経過時点でスコアの高いチームの勝利だ。


「まあでも難しいことは考えず、全部落としちゃえばいいよ~」

相変わらずの緩い口調で、月子は月子で無茶なことを言う。

これが女王たる者の余裕か。


「2機、風咲の方に!」

逃げ回っていたAX-16が踵を返し、2機で私を狙いに来た。

さっきの仕返しか。


「わ、私はどうしたらいいの!?」

「スモーク、お願い!」


今ひばりが使っているのはTX-04『ブルーコメット』。


イルカのような丸みを帯びたシルエットが特徴。

主翼はキャノピーのやや後ろから流れるように伸びている。

胴体の左右に小さめのエア・インテーク。

現実世界では曲芸飛行で使われる機体がモチーフだ。


あまり速度も出ず決して強い機体ではないが、

操作のしやすさには定評がある。


そして特殊兵装のスモークは、

視界を阻害しレーダーから身を隠し、ロックオンをも無効化する。


敵は左右から私を挟み込もうとしている。

距離およそ2000。

ヒュドラの射程内だ。


長距離兵装の範囲内なのは、向こうも同じ。

被ロックの警告音が鳴っている。


ひばりが撒いたスモークに退避。

ロックを断ち切る。


すぐに10時方向のEX-88に向けてヒュドラ射出。

当たらないだろうが回避を強いる。

それで充分だ。


続いて2時方向に機首を向ける。

AX-16に対しヒュドラで先制。

ここまでの機体操作や状況判断能力を踏まえると、

この青い機体の方が手強い。先に叩く。


敵の回避行動を見越し、上昇し高度を得る。


スモークから飛び出た私に、機首を向けようとしている。

甘い。私の方が優位だ。

すぐさま翻し、スロットル全開で急降下。

すれ違いざまにヴァイパーを叩き込む。


AX-16の青い機体が炎に包まれた。


もう1機、EX-88の位置も把握している。

急降下からの、旋回、機首を引き起こし上昇。

EX-88の5時方向、斜め下からヴァイパーを突き上げる。


グレーの機体を再び、蒼空に散らした。


「すごい!えーっと……」

「ナイスキル!」

「な、ナイスキルだよ!」

月子と蘭花の声に少し遅れて、ひばりの跳ねるような声がした。


* * *


VRヘッドセットを外して、大きく息を吐いた。

酔い止めを飲んだので、今日はフラつきが抑えられている。


「リプレイ流しますか?」

「うん、お願い~」

それぞれの視点の画面をみんなで見ながら、試合の振り返り。


「ここ、すごいね」

私が続けざまに2機を撃墜したシーンに注目が集まった。


「この鋭い機動は、私には真似できないなあ」

「悔しいが私もだ」

市原、成田がそれぞれ感想をこぼす。

「突き刺す感じが良いね」

「これは惚れるわー」

佐倉、鴨川も続く。

そんなに言われると、ちょっと気恥ずかしい。


1年生たちが楽しげに話しているのを尻目に、

腕を組んで鋭い目線で画面を見つめていた蘭花が一言、告げた。

「お前は槍だな」


* * *


「セイバーから各機へ。今日の夕飯はハンバーグが食べたい。応答して」

「なんだよそれ。オーキッド、じゃなかった、メイス了解」

「えっと、だ、ダガー了解!得意ですよハンバーグ!」


「ジャベリン、了解」

それが、私の新しい名だ。


「今度、食べさせてね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ