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prologue ~Overture~

私がまだ、ほんの小さかった頃のお話。

お父さんは私の手を引いて、私を肩に乗せて、とあるものを見せてくれました。

それは、幼い私にとって心を突き動かすもので――


「おとうさん、あれすごいね!あれ、なんていうの?」

「あれかい?あれはね・・・」





「・・・さん?・・・カノンさん?」

「え、あぁ、はい!」

どこか遠い目をして少しぼーっとしていた少女、”カノン・パッヘルベル”に、面接官は声を掛ける。

「大丈夫ですか?どこかお具合が?」

「い、いえ!そんなことありません!至って健康ですっ!」

今度は肩をこわばらせるようにしてカノンが答えた。

「では、面接の続きを。あなたにとって、”皇楽聖律団(こうがくせいりつだん)”とは?」

「あ、えっと、私にとって、皇楽聖律団とは・・・」





「あれはね、”皇楽聖律団”というんだよ。」

「へー。すごいなぁ。カノンもおおきくなったら、あんなひとたちみたいになれるかな?」

「あぁ、きっとなれるさ。・・・なぁ、カノン?」

「なあに?おとうさん。」

「いいかい、もしも・・・」





「私にとって、皇楽聖律団は、”すべての始まり”なんです。煌びやかで、誰かの心を突き動かすことができる、そんな素敵な存在です!」

「・・・わかりました。それでは、これで面接を終わらせていただきます。最後に何か訊きたいことなどは?」

「いえ、大丈夫ですっ!」

「そうですか。では結果は後日ご自宅に送付しますので、しばらくお待ちください。」

「わかりました!」

そう言ってカノンは席を立ち、面接会場をあとにした。


面接会場の入り口で、カノンは安心したかのように肩を撫でおろした。

「はぁ。途中、昔の事を思い出して少しボーッとしちゃったけど、面接、大丈夫かなぁ・・・。」

そんなカノンの肩を、ポン、と叩く者が居た。

「大丈夫大丈夫!」

「そうだよね、大丈夫・・・・・・って、うわぁあぁっ!」

カノンはその声にびっくりして、その場にしりもちをついた。後ろを見る。カノンの肩を叩いたのは、誰とも知らぬ同い年くらいの女の子であった。

「あ、あの!だ、誰ですか!」

「名乗るほどの者でも・・・いや、名乗っといた方が良いかな。アタシ、アンナ。”アンナ・シチェドリン”。アタシも今日の面接を受けに来ててさ!まぁ、あなたと同じ立場って感じかな。あなたは?」

「あ、えっと、私、カノンです。カノン・パッヘルベル。」

「へー、カノン、ね。覚えた覚えた!あのね、アタシからカノンになーんとなく言いたいことがあってさ。」

「な、なんでしょう・・・?」

「面接、きっと突破するよ。アタシが保証する。・・・といっても、アタシがあなたの面接内容を知ってるわけじゃないし、アタシ関係者でもないし。けどね、なんだかあなたとは縁を感じるの。初めてこの会場の門のところで心配そうにため息をつくあなたの後姿を見て、”ややっ”と、”ビビッ”ときたんだよね!」

「は、はあ。」

「そんなわけでさ!緊張せずに、のんびり結果を待とうよ。ね?」

「そ、そうですね・・・ありがとうございます。縁、ですか・・・私、そういう直感というかなんというか、そういうものには疎いので、あまりわかりませんけど・・・」

「あぁ、アタシね、人との縁をすごく大切にするんだよね!で、今話しかけないと絶好のチャンスを逃しちゃうぞ、って思ってさ!」

「そうなんですね。・・・あ、馬車がもう行っちゃう時間だ。私、帰らないと。」

「そっか!じゃあね!カノン!」

アンナと名乗った女の子は、カノンの帰路とは反対の方向に小走りで去って行った。

「い、今のは何だったんだろう。まるで嵐が突然来て突然去ったような・・・いや、そんなこと言ってる場合じゃない!馬車に乗り遅れるー!」

カノンはじたばたと馬車の停留所へと走って行った。


これは、音楽と魔法が描く、壮大な物語の”序曲”。

カノン・パッヘルベルと、その仲間達が描く、世界を変えるような、そんな物語の始まりである。


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