転生したら彼の生徒だった件!~トライアングルレッスン・転生~
「先生、バイバーイ!」
オレに手を振りながら、ユイは元気に駆けていった。
「まったく、廊下を走るなと何度言えば…」
窓の外に目をやると、校門前にはタクトが立っていた。ユイを待っているらしい。
その姿に、18年前の記憶が重なる。
ユイコとタクミとオレ。あの日までオレ達はいつも3人一緒だった。そう、彼らが交通事故で死んでしまうまでは。
1人残されたオレは今、教師として地方の高校に勤務している。
そんなオレの前に、この春、2人が現れた。
記憶は無い。顔も名前も違う。でも、すぐにあいつらだと分かった。
昔のように3人で過ごすことは叶わないけれど、今度こそ2人を失わないように…ユイコを守れるように、教師として見守る日々だった。
「?」
視線を感じて振り向くと、先生が校舎から私達を見ていた。
「なんか、オレらのことじっと見てないか?」
タクトも気づいたようだ。
「…いや、ユイのことを見てる?」
「そんなわけ……」
そんなわけない、と見上げた瞬間、先生と目が合った。その途端、不思議な感覚に襲われた。
懐かしいような、悲しいような、嬉しいような。いろいろな感情が胸を締めつける。
「ユイ!」
呆然と立ちつくしていた私は、タクトに腕を掴まれ我に返った。
「もういいだろ。さっさと帰るぞ!」
私の手を引き、足早に歩き出す。
「タクト!?ちょっと待って…」
校舎を見ると、先生は立ち去ろうとしていた。その姿が誰かと重なる。誰だろう?知らない人だ。でも、知っている気がする。懐かしいあの人の名前は……
「ヒロシ!」
タクトが立ち止まった。
「…ユイコ?」
驚いた顔で私を振り返る。
私の前世の名前を知っているってことは、タクトも…?
「…そっか。昔の記憶、思い出したんだな」
「うん。全部思い出した」
タクト…タクミは寂しそうに笑った。
「ごめん。私、ヒロシのところに行ってくるね」
「ああ。行ってこい」
私はヒロシの元へと走り出した。
ヒロシは屋上で眠っていた。横に座ると、気配を感じたのか目を開けた。
「…帰ったんじゃなかったのか?」
再び目を閉じる。
「こんなところで寝ていたら風邪ひくよ、ヒロシ」
「こーら。『先生』だろ?」
「ヒロシ」
もう一度名前を呼んだ。
彼は何かを察したのだろう。ガバッと上体を起こすと、私をじっと見つめて言った。
「ユイコ?」
「……うん」
涙が溢れ、ヒロシの姿が霞んでいく。
「また会えたね、ヒロシ!」
「ゆいこのトライアングルレッスン スピンオフ~ゆいこが転生したら〇〇だった件2~」に応募した作品です。
残念ながら不採用だったので、供養したいと思います。
でも、楽しんでいただけたら幸いです。