エピローグ
『薫、終わった?』
学会の終了の時間を教えていたからか、航さんから電話がかかって来た。
私はザワザワと騒がしいホテルのロビーを出口に向かって進む。なおさんと本宮先生と4人で食事に行くのは、明日の夜になった。二人は明日の夜も1泊するらしい。なおさんの実家もこっちだからだ。
「丁度今終わったところ」
『えーっと、ロビーの右のほうで待ってる』
え? と思って右側を見ると、私服の航さんが手を振った。みんなスーツ姿なのもあって、ちょっと目立っている。
「どうして?」
「だって……心配だから」
航さんが私の体を寄せる。元々甘い人だったけど、妊娠が分かってから、過保護になった気がすごくしてる。
「大丈夫なのに」
「何が起こるかわからないだろ」
拗ねた様子の航さんに、私は笑顔を向ける。
「ありがとう。帰ろうか?」
航さんに手を引かれて、ホテルから外に出る。
空は、夕焼けに染まっていた。
目に入った真っ赤な空が、いつもより一段と鮮やかな色に見えた気がした。
繋げた手が、温かかった。
完
最初なろうで連載していた時には、『しばらくゆっくりしてみたら』というタイトルでした。
修正しているので、少しだけ感じが変わっているかもしれません。
楽しんでいただければ幸いです。
他に2作復活させる予定ではありますが、仕事が立て込んでいるのと他諸々で気持ちが落ち着かず、作業に入れておりません。
そのうち落ち着いたら作業に入りますので、のんびりお待ち下さい。




