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プロローグ
スタッフルームのドアが、少しだけ開いていた。
漏れてくる光が、まだ誰かが残っていることを示している。
クスクスクス。
その笑い声に、ギクリとする。
スタッフルームの中を見てはいけないと、頭の中で警告音が鳴る。
でも、目がスタッフルームに向かってしまう。
そんなはずはないと、思いたい気持ちが、まだあった。
目が合う。
その目が、冷たく笑っている。
心臓が凍る。
私はきびすを返して、走り出す。
私ではない相手とキスをしながら、私を見て冷たく笑うその人が、まだ私の彼氏なのだとは信じたくなかった。
だけど、あれが事実なのだ。
あの人は、私の味方では、もうないのだ。