『乙女ゲーム』が舞台という設定の小説を書いてみた。その途中で知ったこと、困ったこと等を書き連ねたエッセイ
私、『皇帝の罠、令嬢の罠』という異世界恋愛ジャンルの連載を書きました。
割烹とかで何回か書いたことがあるのですが、実はこの小説、大変難産でした。連載開始は今年の2月ですが、実は書き始めたのは2017年(!)です。
こんなことになった一番の理由は、エタらせるのが嫌だったからです。
2017年当時(※今もかもしれません)、始まったはいいものの、暫くすると一切更新されなくなる小説が多く、悲しい気持ちになることが、たびたびありました。
ですから、自分はそうはなるまいと、最後まで書き切るか、少なくても完結する見込みがはっきりしてから投稿しよう決意しました。そして、本作に取りかかったのです。
が、暫くして転勤があり、それまでとは比べものにならないほど多忙を極めるようになり、書く時間が無くなってしまいました。そして、昨年、再度転勤したことによって、再び時間的な余裕ができ、執筆を再開したと言うわけです。
「全体の6割ぐらい書けたかな?」と感じられるようになった、昨年8月。練習の意味も込めて、『なろう』への投稿を始めたのです。
最初は「エッセイでも出してみるか!」と当時疑問に思っていたことを書き始めたら、完全に嵌まってしまいました。
今年に入るまで、ほとんどエッセイしか出してこなかったのは、我ながら「なんだかなぁ」と思います(笑)。
そんな理由で、エッセイばっかり書いていたので、当然、他の人のエッセイもたくさん読むようになりました。
エッセイは良いですよ。はっきり言って、書籍化されていてもおかしくないような興味深いものが、いくらでも見つかります。あくまで、素人エッセイなので、鵜呑みにするのはよくありませんが、私は、知らなかったことを、たくさん知ることが出来ました。
そんなエッセイ三昧だった昨年9月某日。私は、とあるエッセイに出会いました。そのエッセイに出会ったことで、私の小説『皇帝の罠、令嬢の罠』は、大幅な改稿が必要となったのです。
迷惑だった? とんでもない! 大感謝ですよ!!
だって、生半可な知識で、実態とはかけ離れた内容を世に垂れ流すのを止めてもらえたんですから。
私が感謝してもしきれないそのエッセイとは、『弓良 十矢 No War(1744420)』さんよる以下の連作です。
『乙女ゲーの世界を描いている作者さんって、実際どれくらい乙女ゲーをしているんだろう?(n4443he)』
『乙女ゲームの世界を舞台に設定しているのなら一度くらいプレイしてみろよっていう怒りを書いただけ(n5001he)』
これらを読むまで、『乙女ゲーム』なるものは、「『悪役令嬢』なる、ライバルと言うより、頭足りないいじめっ子のような、性格の悪い娘が出てきて、『主人公』の邪魔をする。その障害を乗り越えて、『攻略キャラ』と結ばれるゲーム。『悪役令嬢』キャラの陰湿さによっては最後の『ざまぁ』もお楽しみ! うまく動いたら『逆ハーレム』だってあるかも!!」という、けったいなものだとばかり思っていました。
何の影響でそう思っていたかはお察しください。たぶん、今、「えっ!違うの!?」と思われた方々と一緒です(笑)。
『乙女ゲーム』について、偏った(誤った?)知識もっていた私が、『乙女ゲーム』をモデルにした(と思っている)小説を書いているわけですから、相当、歪なものになっていたに違いありません。そんな作品は、出来上がったとしても、知っている人が見れば失笑するか、激怒するようなものにしかならなかったでしょう。
実際、私の書いていた小説の主人公は、「ゲームで『悪役令嬢』とされていた人物」という設定でしたし、『逆ハー』を狙う『ヒロイン』(?)も登場しておりました。
ところが、私が「『乙女ゲー』テンプレ」だと思っていた内容は、実は「『乙女ゲー風小説』テンプレ」だったのです。
それを知ったときの衝撃と言ったらありません。
確かに、冷静になって考えてみれば、基礎的な設定としておかしいと感じてしまうところがいくらでもあります。
・なんで、あんなに簡単に婚約破棄とかできちゃうの?
・そんな幼稚なイジメじゃなくて、権力があるならもっとえげつない方法で排除すれば良くない?
・逆ハーって、誰の子だかわからないような子どもが生まれる可能性があるってことでしょ。どういう理屈でそれが許容されるの?
・そもそも、寝取りゲームって多くの人(しかも女性がメインターゲット)に需要あるの?
etc.
なんだかんだで、色々と考えさせられたことは多かったです。
知らなかったのならまだしも、知ってしまった以上、そのままにしておくことは誠実とは言えません。
「これは書き直すしかない!」
そう思って、修正を始めたのですが……。
これが難しい!
まず、作品自体が「『乙女ゲー風小説』テンプレ」をベースにしているので、それを修正するとなると世界観を根底からひっくり返す必要があります。ところが、それまでに3万字近い文章を既に書いていたこともあって、これをつじつまが合うように直すなら、消して最初から書いた方が速いくらいでした。
でも、せっかく書いてあるものを全部放棄するのは流石にもったいない……。
悩んだ私が考え出したのが、「モデルとなる『乙女ゲーム』の制作者が、ネット小説に影響されていた」という裏設定を作ることでした。
ネット小説に影響されただけじゃなく、実際に作っちゃうためには、どんな下地が必要か。
普通だったらマーケティングとかするはずなのに、なぜ、売れ筋とは思えない設定のゲームを世に送り出してしまったのか。
そして、『乙女ゲーム』としては、王道とは言えない内容のものを、どんな人がプレーしたのか。
それらの理由を考えて、辻褄合わせのために追加した新キャラもろとも文章にぶち込みました。
その結果、どうなったか。
当然、設定が増えたので、小説自体も、だいぶ長くなりました。当初は、理不尽に婚約破棄をされた主人公が、破滅覚悟で復讐するという、だいたい50,000字ぐらいの話の予定だったのですが、最終的には100,000字を軽く突破してしまいました。
それだけではありません。エンディングも大きく変わってしまいました。
当初の予定では、この小説の方向性は『悲恋』。それも、ほとんど全員が救われない話になる予定でした。
ところが、新たにぶち込んだキャラが存在する影響で、『悲恋』の方向にもっていくことが難しくなりました。そして、話を足していったら、どんどん救われる人が増えてきて……。なんと、投稿時には『ハッピーエンド』タグをつけるまでに(笑)。
これがよく言われる「キャラが勝手に動く」ということなのでしょうか?
今回、思ったのは、事前調査は大切だってことです。当たり前ですみません(笑)
『漆沢刀也(1499742)』さんという方がいらっしゃいます。
この方は男性なのですが、小説を書くに当たって、実際に『乙女ゲーム』を購入・プレーされ、『ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー世界で愛を知る?-(n1723hj)』と言う小説の執筆に生かしていらっしゃいます(※注)。
「いいおっさんが『乙女ゲーム』なんて恥ずかしい」「『乙女ゲー風小説』を読んでるから大丈夫」なんて考えて書き始めちゃった私なんかとは違う、真摯な姿勢を感じます。
あ、勘違いしないでください。私は、『悪役令嬢』『婚約破棄』『ざまぁ』。こういったものを否定しているわけではありません。それどころか、この手のエッセンスは大好物です。
じゃあ、何がいけないと考えているのか。
それは、『悪役令嬢』『婚約破棄』『ざまぁ』が出てくる小説を「大人気乙女ゲームの世界」だなんて書いちゃうことです。
メジャーな乙女ゲームには、主人公と競い合う『ライバル』はいても、主人公を陰湿な手段を用いて排除しようとする『悪役令嬢』は出てこないようです。
ちょっと考えれば当たり前ですが、誰が、『自分』がいじめられるゲームをしたいと思いますか?
まあ、全くニーズがないとは言いきれませんが、『自分がいじめられるゲーム』は、少なくても大ヒットはしないでしょう。
前述の『弓良 十矢』さんのエッセイへの反応を含め、この件に関する『なろう』内の意見を見ていると
『そんなに目くじら立てなくても』
『気にしすぎじゃね?』
といった声が結構な割合であるようです。
大変ありがたいお言葉です。
読者の方が「気にしないでいい」と言ってださるのなら、書き手は思うままに書くことができますから。
ただし、書き手の方からこれを言い出したのだとしたら……。
注:そのいきさつは『おっさんですが悪役令嬢のために乙女ゲーをやってみた(n0545hj)』というエッセイで公表されていらっしゃいますので、是非ご覧ください。