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あらすじ

 異世界転生者である上野勇一は、竜人の村を壊滅させた仮面の男に復讐するべく、男の言い残した「北へ」という言葉を頼りに旅に出る。しかしたった一人で山や森を越えられるはずもなく、行き倒れてしまう。

 そんな彼を拾ったのは、各地をまわり演劇を披露する劇団「メフィニ劇団」の者たちだった。

 劇団の同行者を名乗るアイリーン・ハウルも加え一同は勇一の向かう先、北を目指すことになる。

 団長オーダスカ・メフィニの娘アドリアーナは、最初こそ突然現れた勇一に不信感を持っていた。しかし彼の献身にうたれ、とりあえず劇団に身を寄せることを許し、少しずつ惹かれて行くのだった。

 劇団と旅をしながら、アドリアーナから地理や文化を少しずつ学ぶ勇一。それによればサンブリア大陸と呼ばれるこの大陸には、西にヴィヴァルニア、東には多種族間同盟というものがあるらしい。メフィニ劇団はヴィヴァルニア内を巡業していた。竜人の村では知り得なかった世界に、勇一は興味を持つのだった。


 悪夢は未だに続いていた。しかしこれまでとは違う夢に、勇一は困惑する。相変わらず目覚めれば内容を忘れてはいるが、これまでと違って不快な感情が残らない。しかし見覚えのない記憶が何度も彼を翻弄し、時には意識を失うこともあった。


 悪夢の解決策がないまま、一行は商業都市サウワンに到着する。そこで勇一は、団長オーダスカの妻であるラシアタが奴隷と言われたことに唖然とする。そんな彼に二人の娘であるアドリアーナから、百年前の大陸戦争後からホラクトと言われる種族は奴隷として扱われているのだと教えられた。ラシアタもホラクトなので、当然奴隷扱いだ。勇一は自らを拾ってくれた人たちが蔑まれることに憤るが、百年続く奴隷の身分をどうこうできるわけもなく、自らの無力さに落胆するのだった。


 サウワンで劇団の生活費を奪われた勇一。彼はその埋め合わせをしようと、裕福層向けの演劇を提案する。彼の世界で経験した演劇をオーダスカが書き起こし、皆で演じる。結果は大成功で、劇団はオーダスカの弟であるライアンの屋敷で祝杯を挙げるのだった。


 当面の生活費を得たメフィニ劇団は、次にヴィヴァルニアの首都エンゲラズに向かう。サウワンで仮面の男がエンゲラズに向かったと言う情報を得た勇一も、彼らについて行くことになった。エンゲラズ行きのキャラバンに同行する一行。旅の途中、アドリアーナは自らの想いを勇一に伝える。しかし彼が返事を返す直前、襲撃を知らせる鐘がキャラバン全体に響く。


 襲撃者である野盗はオーダスカの息の根を止めた。父の突然の死に取り乱すアドリアーナ。勇一も抵抗するが、複数の野盗どもに殴られ立てなくなってしまう。劇団員の必死の抵抗も虚しく、野盗は顔を見られたという理由で全員を始末しようと剣を振り上げた。


 ラシアタが二人目の犠牲者になりかけた時、助けに入ったのはアイリーンだった。サウワンでの調べ物を終えた彼女は劇団に追いつき、野盗どもに制裁を加える。数人を倒したところでアドリアーナを人質に取られた彼女は、意識を取り戻しつつある勇一にアドリアーナ救出を期待し、彼もそれに応えようとショートソード(マナン)を構えるのだった。


 異世界に来て初めての殺人を行った勇一。心に深い傷を負った彼を助けたのは、野盗から解放されたアドリアーナだった。ラシアタを助け出し、アドリアーナも無事に取り戻した皆は、これで終わったのかと息を吐き、オーダスカの亡骸を見つめる。

 しかし戦いはまだ終わっていなかった。闇の中から再び野盗どもが現れ、劇団に標的を定めたのである。アドリアーナが止めるのを振り切り、アイリーンだけに戦わせまいと震える脚を立たせる勇一。どう考えても蹂躙される未来しかなかった彼らに、予想外の援護者が現れる。


 現れたのは多腕族の女傭兵だった。先に逃げ出した劇団員が呼んできた大柄な彼女は、野盗どもを腕力のままになぎ倒し他を寄せ付けない。

 そして勇一は自らの力を自覚した。無自覚な力の使用によって、死んだはずのオーダスカが一時的に蘇ったのだ。サウワンで得た知識を勇一に託すオーダスカ。それによれば勇一の力は「星魔法」と呼ばれる死を司る魔法で、精霊魔法とは違う女神魔法の一つであるとのことだった。歴史の変わり目に現れるという「太陽・月・星」の女神魔法を持つ三人の魔法使い、その一人が彼だという。

 皆にお別れを言うと、オーダスカは塵となって消えた。


 女傭兵の凄まじい働きによって窮地を救われたメフィニ劇団。次に彼らを待っていたのは、報酬の請求だった。

 多腕族の女アトラスタ・クヴァが提示した金額に、アドリアーナは顔を青くする。金の入った袋は野盗に奪われ、稼いだ金のほとんどをサウワンの金庫に預けた劇団に、支払い能力は無かった。どうしようかと皆で話し合う中、手を上げたのは勇一。彼は、亡き恋人から渡された金の首飾りを支払いに充てると言い出した。他に手がないアドリアーナは、渋々それを承諾する。更に彼は、首飾りを買い戻すためにアトラスタに同行したいと言い出した。


 勇一とメフィニ劇団はエンゲラズへの道中で別れることとなった。アドリアーナは勇一にしがみつき泣き叫ぶ。しかし首飾りに固執する彼を止めることはできなかった。彼は女傭兵について行き、ヴィヴァルニアと大陸を二分する勢力、黄金同盟ゴールデン・アライアンスへと向かうのであった。

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