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第壱ノ巻「迷いの竹林の小さな少女」

「…けて。助けて…。」


声が聞こえる。綺麗な声が…。


「待ってろ…。今、助けてやる…。」


手を伸ばす。でも届かなくて、どんどん離れて行く。消えて行く。そしていつの間にか真っ暗になって、僕は目を覚ました…。


「…っ!ここは、どこだ…?」


目を覚ますと、見たこともない場所にいた。見渡す限り木が生い茂っている。どこかの森か?それより何より……。


「……僕は、誰だ……!」


記憶がない。僕は誰だ?名前は?どこから来た?何もわからない……。ただ覚えてるのは、”助けて”と言う綺麗な声のみ。そして、手に持ってる本。”竹取物語”と書かれている。これは知っている。竹の中から少女が出てきて、その少女が天界に帰ってしまう話だ。なんでこんな本を持ってるんだ……?


「とにかく、早くこの森を抜けださないと……。」


そうして僕は歩き出した。空は明るい、昼のはずなのに森の中は久我日の光をさえぎっていてとても暗い。どこに向かえばこの森を出られるのかそれさえもわからない。だがしばらく歩くと、小さな明かりを見つけた。小さな希望をもってそちらに歩み寄る。見てみると、根本の光る竹が一本あった。不思議に思いその竹に触れてみる。するとその竹は簡単に切れてしまった。そして中から出てきたのは、三寸ばかりの小さな女の子だった。……いや待て。何だこの違和感は……。……まさかこれって!


「……竹取、物語……?」


間違いない!竹取物語の最初の場面だ!山西ばかりに行ったおじいさんが光る木を見つけて、不思議に思いそれを切ってみると、中から小さな女の子が出てくる。まさにその場面じゃないか!


「ど、どうする?このままにしていいのか?いやでも物語ではおじいさんは家に持ち帰ってるし……。」


その場でしばらく考えて、結局持っていくことにした。そのままにしておく訳にもいかないし、まずはこの森を抜けることが先決だ。この小さい少女のことは後で考えればいい。そう結論付けて歩き始めれば、森を出られたのはほんの数分後のことだった。そして僕の……いや、僕たちの前に現れたのは、一つの神社だった……。

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