7-2 泣きっ面に地震
タイトル通り地震が起こる描写があります。
大きな災害になる展開ではありませんが、地震の映像や表現を見て嫌な気分になられるようでしたら、このシーンを飛ばしてください。
「フジ? 学校は?」
「いい、調子悪い」
フジは自分のベッドの布団にこもったまま答えた。
派手に頭を打ったが後遺症などもなかったので、すぐに退院して家へと帰ることができた。
「そう……」
だが学校に行く気にはなれかった。
そんなフジの気持ちが分かったのか、母は返事だけして部屋のドアを締めた。
自分と居ると誰かを不幸にしてしまう。
そんな考えがフジの頭にあった。
だから今まで友達を作ろうとしなかったのだ。
タカミというかわいい女の子に話しかけられて、タカミと一緒にいると不幸な出来事が減り、タカミの誘ってくれた幸福部のメンバーと一緒にいると楽しい。
それを幸せと呼ぶかは分からないが、少なくとも気分はよかった。
浮かれていたのだろう。
本当にタカミと一緒にいれば幸せになれると思っていたのだろう。
タカミのことを好きになっても良かったと思っていたのだろう。
フジはそんな呑気な考えを持ったことを後悔していた。
そしていつしか眠りについていた。
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「地震だ」
そう思って目を覚ました。
直後に部屋が縦と横に揺れる。
ガタガタと音がして、プラモデルだちが倒れていく。
そして全ての音をかき消す地響きが家と鼓膜を揺らした。
「わあああああああ!?」
思わず布団をかぶった。
家が倒壊した場合、布団程度では自分の体は守れない。
分かっていてもこれで防御するしかなかった。
数秒の大きな地鳴りのあとはゆっくりと揺れが収まり始めた。
バタバタと部屋の本が落ちる音が聞こえる。
揺れが完全に収まると、恐る恐るフジは布団からでた。
部屋を見渡すと部屋にはプラモデルと本、服などが散乱していた。
だがクローゼットや本棚自体は倒れておらず、家が倒壊するほどの地震ではなかったことが分かる。
静寂の中で階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
「フジ! 大丈夫!?」
母が部屋に入ってきた。
「怪我はなさそうね。
でもせっかくタカミちゃんが模様替えしてくれたのに、これじゃ部屋はグシャグシャねぇ……」
「うん」
部屋の惨状もそうだが、タカミという名前が出てきてフジは胸が締め付けられるような気分になり、うつむく。
「余震があるかもしれないから、下に降りてらっしゃい。念のため避難の準備も」
「うん」
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「今のところ津波の心配はなし。
街の城跡のお堀が壊れたらしいが、倒壊した建物は少ないらしいぞ」
フジが財布とスマホを持ってリビングに降りると、父が熱心にテレビにかじりついていた。
ノートパソコンも持ってきて、SNSでも合わせて情報を調べていたようだ。
「よかったわぁ……。あとは余震だけが心配ね」
「よくないよ」
安心した母に当たるようにフジはつぶやいた。
「フジはお部屋の片付けが大変よねぇ。
台所よりも散らかっちゃったんじゃないかしら」
母は食器棚を開き、中を整頓し始める。
地震対策をしていたおかげで、食器棚が倒れたり中の物が散乱することはなかったようだ。
「ぼくの部屋も本が大変なことになってしまったよ……。
だが、カメラやパソコンは被害が無いし、片付ければいいだけの話だ」
「あなた、写真は撮りに行く?」
「あとで街の様子を収めに行ってくるよ。
ブログの写真はぼくが撮ってくるから、母さんは家に居てほしい」
「ええ」
「こんな時にも仕事なんだ」
家が倒れるのではないかと思うほどのことがあったのに、仕事の話をしているのが信じられなかった。
フジはふたりにうつろな目を向けながら声をかける。
「地震の話ができるのは地震があったときだけだから。
こういうときはいい機会だと思って書くの。
父さんの写真も一緒よ」
「不幸じゃないんだ」
少なくともフジはこの出来事を不幸だと思っている。
部屋は散らかり、死んでしまうんじゃないかと感じるほど怖い思いをした。
なのにどうしてそれを記録しようとするのだろうか。
仕事だとしてもフジはそんなことしたくなかった。
「ぼくたち地面の上に暮らしている以上、避けて通れない自然現象だからな。
いつ起こるかわからないから、常日頃対策を取るしかない」
「避けられないことは不幸じゃないってこと?」
「そうだなぁ。
悪いことはどうしても起こってしまうから、それを最小限にすることが大切ってことかな」
「僕にはちょっと分からないや。……大丈夫そうだから部屋に戻るね」
「余震に気をつけてね」
#
部屋に戻ってみると、改めてその惨状がよく分かる。
「はあ、限定品のメタトロンの追加装備がボロボロだ。
これじゃ通常版と一緒だなぁ」
プラモデルについては砲身は真ん中から折れており、持っていた盾も真っ二つになっていた。
買い直せるキッドだったらよかったが、これはタカミと出会う前の日にようやく見つけた限定品だった。
女装して模型屋やデパートを何件も巡りようやく見つけ、帰りに怪我をして手に入れた物だっただけに、フジのショックは大きい。
「洪水を耐えるためのノアも、地震には勝てなかったか」
劇中で大洪水に耐えるため奮戦した主人公たちの乗る戦艦『ノア』のプラモデル。
置く場所がなかったので天井から吊るしていたのだが、地震で落ちている。
これも真ん中から真っ二つに割れており、アンテナや主砲砲身は曲がって白くなっている。
「アーマードビースト舞台も過去最高のダメージだ」
プラモデルを壊してしまうことはよくある。
違うポーズに変えようとして落としたり、関節を折ってしまったりしては修理を繰り返していた。
今回の地震で壊れたのはそんな修理した箇所ばかりだった。
まるでフジが今までしてきた修理を全て無駄にするような壊れ方だと感じ、一度手にとって確認したプラモデルを再び床に置く。
「やめよう……これは修理が難しい」
フジはベッドに転がった。




