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八代さんと僕は圭の提案により、彼の父親の航さんに家の最寄りであるいかる台駅まで送ってもらった。そして、日が暮れてしまったし事件の後だったから僕は八代さんを彼女の家まで送ることになった。
「ありがと、水野君。一緒に来てくれて。」
「おう、それに事件の後だから親御さんも心配するだろうし。」
「うん、うちの親はどっちも心配性でね、今日は電話もメールもたくさん送って来て大変だった。」
「確かに、ひっきりなしに来てたな。でも、面倒見のいい親御さんなんだな。」
「――まあ、そうなのかな。」
八代さんはぼそっと独り言のようにつぶやいた。薄暗い道を行く車のヘッドライトが煌々と僕たちを照らす。
しばらく僕たちは黙々と歩いた。そして、目的地の八代さんの家の目の前まで来た。
「確か八代さんの家ってここだったよね。」
「うん。今日は家まで送ってきてくれてありがとね、水野君。」
「こちらこそ、八代さんも今日はゆっくり休んでね。」
「うん、そうする。」
「じゃあ、またな。」
「――ちょっと待って。」
「ん、どうした?」
「え、えっとね。」
急に八代さんは少しぎこちなくなる。
「その、また今度…わ、私と帰りませんか?」
僕は思わずクスリと笑ってしまった。
「な、なによ。」
「ごめんごめん、八代さんが急に敬語でしゃべりだしたからさ。」
僕がそういうと、八代さんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。普段見せない彼女の表情が新鮮に映った。
「で、どうなの?…また、一緒に帰る?」
「おう、一緒に帰ろう。」
「ほんと?」
「ほんとだよ。」
「えへへ、ありがと。」
八代さんは満足そうに顔をほころばせた。
「じゃあね、水野君。」
「おう、またな。」
僕は手を振って返した。僕の家でも姉が帰りを心配しているだろうと思い、僕は幾分足を速めて夜道を歩いた。