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その後は何事もなかったかのようにふたりで高校まで歩いた。いつも通り昇降口で靴を履き替え教室に向かった。その間、互いに黙ったままでいることが多い。今日もそうだった。気まずいというわけでもなく、良い距離感の親友だと思っている。
「ユウ、…じゃあ、またあとでな。」
圭が彼のホームルームである5組の前で言った。ちなみに、僕の教室はさらに奥の2組だ。僕は「ああ、じゃあ、また。」と手を小さく振って返した。まもなく、「おはよう、圭。」というクラスメイトの声がした。圭は少し微笑んで僕を見つつ、教室に入っていった。そっと、5組を覗くと圭はほかの生徒たちと楽しそうに話をしていた。いつも通りの圭がいた。それを見て僕はひとりでに頷きながら自分の教室へ向かった。
教室に入ると僕は自分の席である窓側後ろから二番目の席に座った。すると、待ち構えていたかのようにクラスメイトの八代さんが隣の席から「おはよう。」と話しかけてきた。僕はおはよう、と彼女を見て答えた。彼女はいつも楽しそうに笑っている。
「今日も浜坂君も一緒に来たの?」
「ああ、圭と来たよ、途中からだけど。」
「それで、かっこよかった?」
八代さんが圭に好意を抱いていることを僕は知っている。
「えっと、いつも通りの圭だったけど。」
「ってことは、かっこよかったってことか」
八代さんはひとりで納得し頷く。そして、少しニヤニヤして僕を見つめながら「もしかして、私が浜坂君のことカッコイイって言って嫉妬した?」と言った。
「別に圭には嫉妬はしないよ。」
「ほんと?」
「本当。」
「まあ、それもそうか。水野君も結構かっこいいからね。…お世辞ではないからね。」
「そりゃ、どうも。」
そうこうしているうちに、チャイムが鳴りみんながぞろぞろと席に座り始める。今日もいつも通りの時間が過ぎていくのだろう。