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夕凪に想う  作者: tori-tori
1章 
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この物語はフィクションであり実在する個人、組織、団体等とは一切関係ありません。

 ――人外どもから()()()()()を剥奪せよ

 ――我々()()の尊厳を取り戻せ


 …またか、と僕は短く咳をしながら心の中で呟いた。しかし、今は先を急ぐ通学者にすぎない。


 近頃、世界における()()の在り方はおおきく変化した。昔の人々は彼ら自身を中心において生きていた節があったが、いまでは構成員にすぎない。世間にAIやクローンという言葉が広まり始めた1世紀前では考えられなっかたことだろう。


 「おはよう、ユウ。」

 歩いている後ろから誰かが背中をつついた。振り返ると圭がいた。僕はおはよう、と短く返事をした。彼(浜坂圭)は同じ湊瑛高校に通っており、親友でもある。「一緒に行こうぜ。」と圭が言った。僕はおう、と答えた。高校は駅からそう遠くはない。


 「最近、なんだか生きずらいな。」

 しばらく黙って並んで歩いていると圭が唐突に言った。

 「どうしたんだ、急に。」

 「いや、さっきあいつら、“偽りの人権を剥奪せよ”って叫んでただろ。」

 「ああ」

僕は頷いた。

 「その、俺もユウの知ってる通り()()ではないからさ。」

 「…」


 ちょうど目の前の信号機が赤になった。僕らの前を車が行き交う。


 …実は彼の言う通り、圭は純粋な()()ではない。サイボーグなのだ。おそらく、このことを学校で知っているやつはそう多くない。


 「…」

 「…」

 僕は信号機のなかの人の青いシルエットをただ見ていた。…彼は()()の僕のことをどう思ってるんだろう。


 前を行き交っていた車が静止した。


 「なんかごめんな。突然変なこと言って。」

 「…そんなことないよ。圭は悪くない、絶対。」

僕はそう言った。


 信号が青に変わる。


 横断歩道を渡り終えた後、彼は少し安堵して呟くように「ありがとな」と言った。

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