表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/101

第五十八話 迷いなく、戦う

 クロス、クロウは、メリーゼ、ランと死闘を繰り広げている。

 しかし、相手は、帝国兵のリーダーと妖魔だ。

 一筋縄ではいかない。

 妖魔を一時的に、消滅させたいところではあるが、メリーゼとランの連携にほんろうされるクロスとクロウ。

 双子の彼らが、連携によって、追い詰められることはなかった。

 それほど、強敵だという事なのだろう。

 クロスとクロウは、傷を負い、荒い息を繰り返している。

 まさに、追い詰められている状態であった。


「あはは。やっぱり、無理よね。ヴァルキュリアがいないんだから」


「そうね。まぁ、そのヴァルキュリアも、変身できないようだから、大したことないみたいだけど」


 メリーゼとランは、不敵な笑みを浮かべている。

 クロスとクロウが、劣勢を強いられているのに対し、メリーゼとランは、余裕のようだ。 

 おそらく、ルチアが、ヴァルキュリアに変身できないため、勝ったも同然と思っているのだろう。

 しかも、ランは、ルチアを見下しているようだ。

 ランの発言を聞いたクロスとクロウは、怒りを露わにした。


「ルチアの事を悪く言うな」


「え?」


 クロウは、思わず、メリーゼ達に怒りをぶつける。

 これには、さすがのメリーゼとランも、驚いているようだ。

 そして、クロスも、クロウが、ここまで、怒りをぶつける事はあまりない。

 それほど、ルチアを大事に思っているのだろう。


「あいつは、宿命に抗おうとしてるんだ。今だって……」


 クロスも、ルチアの事を悪く言われ、怒りをぶつける。

 どうしても、許せなかったのだ。

 ルチアは、宿命を背負っている。

 それでも、前を向いて進もうとしているのだ。

 それは、今もであろう。


「だからこそ、俺達が、お前達を倒す」


 クロスとクロウは、メリーゼとランに剣を向ける。

 ルチアの為に、戦っているのだ。

 今、ルチアが、ヴァルキュリアに変身できないというならば、自分達が、妖魔を倒し、ルチアの負担を軽減するのみだ。

 だからこそ、クロスとクロウは、ヴィクトルに提案したのだ。

 自分達が、帝国のリーダーの元へ向かうと。


「できるもんなら、やってみなさいよ!!」


 メリーゼは、クロスとクロウが、追いつめられているというのに、まだ、戦うつもりでいる為、苛立っているようだ。

 メリーゼとランは、連携を取り、魔法を放とうとする。

 しかし、その時だ。

 ルチアが、跳躍し、メリーゼとランに向けて、蹴りを放とうとしたのは。

 メリーゼとランは、気配を察知し、魔法を中断させ、後退する。

 ルチアは、クロスとクロウの前に立った。


「ルチア!!」


 クロスとクロウは、驚愕する。

 当然であろう。

 村に残っていたはずのルチアが、目の前にいるのだ。

 しかも、まるで、吹っ切れたかのようだ。

 一体、何があったのだろう。


「へぇ、来たんだ。役立たずのヴァルキュリアが」


 メリーゼは、ルチアを見下す。

 ヴァルキュリアに変身できないルチアが、ここに来た事は、絶好のチャンスだ。

 それでも、ルチアは、顔色を変えなかった。


「なんで、ここに……」


「……皆を助けるためにだよ」


 クロスは、見当もつかない。

 なぜ、ルチアが、ここにいるのか。

 ルチアは、答えた。

 助けるためだと。

 それも、「皆」を。


「ごめんね。私、迷惑ばかりかけてた。でも、もう大丈夫。私が、助けるから!!」


 ルチアは、クロスとクロウに謝罪する。

 自分が未熟であるばかりに、二人に迷惑をかけてしまったと思っているのだろう。

 だが、ルチアは、完全に吹っ切れている。

 決意を固めたからだ。

 ルチアは、構えた。


「ふーん、助けるねぇ。やってみなさいよ」


「やってやる。クロスも、クロウも、妖魔も、皆、助ける!!」


 メリーゼは、未だ、余裕の表情を浮かべている。

 だが、ルチアは、宝石を握りしめる。

 そして、ルチアは、ヴァルキュリアに変身した。


「ルチアが、ヴァルキュリアに……」


「いつの間に……」


 クロスは、あっけにとられている。

 クロウも、見当もつかないようだ。

 いつの間に、ルチアは、ヴァルキュリアに変身できるようになったのだろうか。

 いや、自分達が、潜入している間に、ルチアの身にいったい何があったのだろうか。


「ちょ、ちょっと!!あの子、ヴァルキュリアに変身できないんじゃなかったの!?」


「そ、そのはずよ……なんで?」


 メリーゼは、戸惑いを隠せないようだ。

 ルチアは、ヴァルキュリアに変身できないという事は、部下から聞いている。

 だからこそ、余裕の表情を浮かべていたのだ。

 なのに、ルチアは、ヴァルキュリアに変身できる。

 これは、さすがのランも、見当がつかず、困惑するばかりであった。

 二人が、困惑している間にルチアは、地面を蹴り、メリーゼとランの元へと迫った。


「せいやっ!!」


 ルチアは、回し蹴りを放ちながら、魔技・ブロッサム・インパクトを発動する。

 オーラが、爆発を引き起こし、メリーゼとランは、吹き飛ばされたが、すぐさま、体勢を整えた。


「この子、強い!!」


「あいつ、前より、強くなってる!?」


 ルチアに吹き飛ばされたメリーゼは、思わず、下を巻く。

 ルチアの強さを思い知らされたからだ。

 クロウも、驚きを隠せない。

 ルチアが、前よりも、強くなっている事に気付いたからだ。

 体も、心も。


「なめんじゃないわよ!!」


「あたし達のコンビネーション、見せてあげる!!」


 メリーゼとランは、怒りを露わにし、ルチアに襲い掛かる。

 メリーゼは、魔法・ストーム・ショットを発動するが、ルチアは、魔技・ブロッサム・アローを発動し、メリーゼの魔法を打ち消す。

 しかし、その間に、ランが、魔技・ディザスター・ストームを発動し、ルチアは、回避する間もなく、風のオーラの刃に切り刻まれた。


「かはっ!!」


「隙あり!!」


 ルチアは、血を吐き、膝をつく。

 メリーゼとランは、その隙を逃すはずもなく、ルチアに魔技を同時に放つ。

 だが、その時だ。

 クロスとクロウが、魔技を発動し、ルチアを守りきったのは。


「クロス!!クロウ!!」


「ルチア、いけ!!」


「俺達が、援護する!!」


「うん!!」


 クロスとクロウは、ルチアを援護するつもりだ。

 三人の連携は、伊達じゃない。

 いや、クロスとクロウが、いてくれるからこそ、支えてくれるからこそ、ルチアは、前を向けるのだ。

 メリーゼとランは、魔技を発動するが、クロスとクロウが、魔法を発動する。

 二つのオーラは、ぶつかり合い、爆発を引き起こした。

 メリーゼとランは、バランスを崩す。

 ルチアは、その隙を突いて、跳躍した。


「やああああっ!!!」


「きゃあああああっ!!!」


 ルチアは、固有技・インカローズ・ブルームを発動する。

 ランは、固有技を受け、絶叫を上げながら、消滅した。


「う、うそ……」


 メリーゼは、愕然とする。

 予想もしていなかったのだろう。

 まさか、ランが、消滅するなど。

 ルチアは、知っているはずだ。

 ランが、元帝国兵であるという事は。

 それなのに、彼女は、容赦なく、ランを殺した。

 ルチアは、冷静さを保ったまま、メリーゼに迫った。


「こ、来ないで……」


 メリーゼは、怯えながら、後退する。

 それでも、ルチアは、迫ろうとしていた。

 メリーゼを殺すつもりはない。

 だが、捕らえなければならない。

 いつ、妖魔に転じても、おかしくないのだから。

 だが、その時であった。


「あがっ!!」


「こ、これって、まさか、妖魔に!!」


 突如、メリーゼが苦しみ始める。

 ルチアは、メリーゼの身に何が起こったのか、察してしまった。

 妖魔に転じようとしているのだ。

 メリーゼは、すぐに、妖魔に転じてしまった。

 ルチア達に襲い掛かるメリーゼ。

 だが、ルチアは、ためらうことなく、固有技・インカローズ・ブルームを発動する。

 メリーゼは、固有技を受け、光の粒となって消滅しかけていた。


「な、なんで……」


「もう、決めたから……」


 ルチアは、地面に転がっている核を手にする。

 そんな彼女に対して、メリーゼは、ルチアに問いかけた。

 なぜ、ためらいもなく、自分を殺そうとしたのか。

 ルチアは、決意したのだ。

 妖魔を、帝国の者達を殺すことになっても、魂を救うと。

 ルチアの決意は、揺らぐことはなかった。

 彼女の様子をうかがっていたクロスとクロウは、ルチアを心配する。

 無理をしていないかと。

 だが、その時であった。

 足音が、聞こえてきたのは。


「いたぞ!!」


 大勢の妖魔達が、ルチア達の前に現れる。

 メリーゼとランの異変を察知して、ここに来てしまったのだろう。


「妖魔達か……」


「ちっ……」


 クロスは、歯噛みをし、クロウは、舌打ちをする。

 やっと、メリーゼとランを倒したというのに新手が来たのだ。

 無理もないだろう。


「さあ、観念しろ!!ヴァルキュリア!!」


 妖魔達は、ルチアに迫ろうとする。

 クロスとクロウは、ルチアを守るために、ルチアの前に出た。

 その時であった。

 

「ルチア、その核を俺様に!!」


 ヴィクトル達の声が聞こえてくる。

 ルチア達は、一斉に、視線を奥へと向けるとヴィクトル達が、駆け付けに来たのだ。

 しかも、ルゥ、ターニャ、マシェルも連れて。

 ルゥは、ヴィクトル達と合流することができたのだろう。

 妖魔達は、そうはさせまいとルチアに襲い掛かろうとするが、ヴィクトル達が、後ろから斬りかかり、乱戦となる。

 その隙に、ルチアは、ヴィクトルに核を投げ、ヴィクトルは、見事キャッチした。


「ありがとな。ほれ」


「は、はい」


 核を手に入れたヴィクトルは、さっそく、ターニャに渡す。

 ターニャは、戸惑いながらも、核を受け取った。


「いくわよ!!」

 

 マシェルが、オーラを注ぐと、ターニャが、集中し始めた。


「シルフよ。我が、声を聞き給え。我は、ターニャ。風のシャーマンなり。契約せよ、シルフ!!」


 ターニャが、呪文を唱えると、核が、光り輝き始め、核が割れ、緑の髪の少女が、ターニャの前に立った。

 風の大精霊・シルフが、復活した瞬間であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ