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第五十六話 妖魔を研究した結果

 ヴィクトル達と別れたクロスとクロウは、帝国兵から、リーダーの居場所を聞きながら、進んでいく。

 そして、帝国兵や妖魔に気付かれず、帝国兵のリーダーと妖魔にたどり着いた。

 あくまで、帝国兵として、歩み寄るクロスとクロウ。

 彼らに気付いた帝国兵のリーダーと妖魔は、ゆっくりと、振り向く。

 なんと、帝国兵のリーダーと妖魔は、女だ。

 二人は、不敵な笑みを浮かべた。


「へぇ、あんた達が、来たんだ」


「……」


「隠したって無駄よ?あたし達にはわかるんだから」


 帝国兵のリーダーは、クロス達の正体を知っているかのように問いかける。

 クロスとクロウは、黙秘するが、帝国のリーダーは、やはり、クロス達の正体を知っているようだ。

 クロス達は、ため息をつき、帝国兵の制服を脱ぎ、正体を現した。


「お前が、ここのリーダーか?」


「そうよ、あたしの名は、メリーゼ。こっちは、パートナーのランよ」


「よろしく。坊や」


 クロスは、帝国兵のリーダーに問いただす。

 彼女は、あっさりと正体を暴露した。

 しかも、自分達の名前まで。

 よほど、余裕があるのだろう。

 それもそうかもしれない。

 彼女達は、すでに、ルチアが、ヴァルキュリアに変身できない事を知っているはずなのだから。

 帝国兵のリーダーの名は、メリーゼと言い、妖魔の名は、ランと言うようだ。

 メリーゼは、小悪魔のように、ランは、妖艶な笑みを浮かべていた。


「あんた達は、これを奪いに来たんでしょ?」


「そうだが?」


「これは、渡さないわよ。あたしの物なんだから」


 メリーゼは、懐から、大精霊の核を取り出し、クロスとクロウに見せつける。

 クロウは、苛立ちながらも、答えた。

 なぜ、自分達にあっさりと、核を見せたのか、理解に苦しんだからだ。

 メリーゼは、核に口づけする。 

 核は、自分のものだと言いたいのだろう。

 クロスとクロウを挑発しているかのようだ。


「どうしてもって言うなら……」


「私達が、相手になって、あ、げ、る」


 メリーゼとランは、構える。

 クロス達を殺すつもりなのだろう。

 

「いいだろう。女でも容赦はしない」


「覚悟しろ!」


 クロウも、構える。

 たとえ、相手が、女でも、殺すつもりのようだ。

 クロスも、覚悟を決め、構えた。


「そうこなくっちゃっ!」


 メリーゼは、この状況を楽しんでいるかのようだ。

 クロスとクロウが、地面を蹴ると、メリーゼとランは、二人を待ち構えた。

 まるで、返り討ちにしようとしているかのように。



 ルチアとルゥは、要塞を駆け巡っている。 

 二人は、ある部屋に入った。

 見た目は、研究室のようだ。

 ここにあるのかもしれないと、推測したルゥは、すぐさま、ルチアと共に部屋に入り、研究レポートを探し始めた。


「見つからないなぁ」


「そうだね……」


 ルチアとルゥは、研究レポートを探すが、どこにも見当たらない。

 ここではないのだろうか。

 時間が経つばかりで、一向に、見つからず、ルチアとルゥは、焦り始める。

 早く、ここを抜け出さなければ、帝国兵や妖魔に見つかってしまう可能性があるからだ。

 だが、見つからないという事は、ここではないかもしれない。

 そう思うと、ルチアは、あきらめかけていた。

 その時であった。


「おっ、これっぽいっ!!」


「本当!?」


「おうっ!!」


 ルゥは、研究レポートらしき書類を見せたようだ。 

 ルチアは、ルゥの元へ駆け寄る。

 ルゥは、嬉しそうに、パラパラと書類をめくっていた。


「やっぱ、そうだ。オレの研究レポートで間違いないぜっ!!」


「見せてくれる?」


「おうっ!!」


 書類を目にしたルゥは、自分の研究レポートだと確信を得る。

 ルゥは、さらに、パラパラと書類をめくる。

 難しい単語が並び、ルチアには、理解できそうにない。

 それほど、ルゥは、難しい研究をしていたという事だ。


「おっ、これだこれだ」


 ルゥは、ページをめくるのを止め、ルチアに見せる。

 だが、やはり、難しい単語が並んでいる。

 このページが、妖魔に関する内容が、記載されているようだ。


「オレが人工的に作られた体に魂が囚われてるって思ったのは、これなんだよ」


「妖魔の邪悪なオーラ?」


「そうそうっ」


「ごめん、さっぱり、わからないや」


「だろうな。邪悪なオーラは、オレたちにとっては、毒だ。お前も、戦ったから、わかるだろっ?」


「た、確かに」


 ルゥが、妖魔の体が人工的に作られたと確信を得たのは、妖魔の邪悪なオーラらしい。

 だが、ルチアには、さっぱりだ。

 ルゥもそう思ったようで、ルチアに説明する。

 邪悪なオーラは、ルチア達にとっては、毒だ。

 それは、ルチアも、良く知っている。

 蹴りを入れただけで、しびれを感じたほどなのだから。

 ゆえに、妖魔を倒すことすらできないのだ。


「そんなオーラが、俺達の体に耐えられると思うか?そんなわけないねっ」


 ルゥは、邪悪なオーラを自分達の体に宿すことなどできるはずがないと考えたのだ。

 だからこそ、妖魔の体は、人工的に作られた体だと思ったのだろう。

 しかし、なぜ、魂が、とらわれていると思ったのだろうか。

 何らかの方法で、魂までも、作られた可能性もあるかもしれない。

 ルチアは、見当もつかなかった。


「それに、消滅したのに、すぐ再生できるって言うのも、おかしいんだ。だから、一度、消滅させてみたんだ」


「そうなの?」


「おうっ」


 ルゥは、妖魔の生体に違和感を覚えていたようだ。 

 なぜなら、古の剣で、消滅させた妖魔は、時間が経てば、復活する。

 なぜ、古の剣で、完全に消滅させられないのだろうか。

 なぜ、妖魔は、復活することができるのだろうか。

 それを調べる為に、ルゥは、捕らえた妖魔をわざと消滅させたようだ。


「で、どうなったと思う?」


「どうなったの?」


 ルゥは、ルチアに問いかける。

 それも、楽しそうに。

 ルチアは、見当もつかないため、ルゥに聞き返した。


「核みたいなのが、残ったんだっ」


「大精霊の核みたいな?」


「そうそう。すっげぇ、小さい核がなっ」


 ルゥ曰く、消滅した後、核のようなものだけが残ったようだ。

 しかも、豆粒ほどの大きさらしい。

 ルゥが、親指と人差し指の間で、表現してみせる。

 それほど、小さいのものならば、倒した後に核が残った事は、誰も気付かないであろう。


「で、外に放置して、観察したら、その核が、魂を吸い込んで、人の姿になって、再生しやがったんだよっ」


「どうして、魂を吸い込んだって、わかったの?」

 

 取り残された核を使って、ルゥは、核がどうなるかを実験たようだ。

 もちろん、実験室ではなく、外でだが。

 ルゥ曰く、魂を吸い込んで人の姿となったという。

 だが、そんな事、どうやって、わかったのだろうか。

 ルチアは、やはり、理解できず、ルゥに尋ねた。


「簡単なことさっ。魂を封じ込めんたんだ。これを使ってなっ」


「それって、核?」


「おうっ。まぁ、大精霊の核とは、違うけどなっ」


 ルゥは、ルチアに見せる。 

 それは、結晶のようだ。

 その中に、魂を封じ込めたというのだ。

 核のようだが、ルゥ曰く、大精霊の核とは違うらしい。

 ルゥ曰く、その核から、封じ込められた魂が、出てしまい、妖魔の核の中に吸い込まれたという。


「どうやって、吸い取れるの?」


「それは、アレクシアに頼んで、作ってもらった。まぁ、反対されたけどっ」


「なるほど」


 ルチアは、ルゥに尋ねる。

 どうやって、魂を吸い取ったというのだろうか。

 ルゥが、説明する。

 これは、特別な核のようだ。

 大精霊の核や、妖魔の核とは、違うらしい。

 しかも、アレクシアが作成してくれたようだ。

 ルゥは、アレクシアに頼みこんだのだろう。

 アレクシアなら、作ってくれると信じて。

 実験に使うと聞いたら、当然、反対されたが、ルゥが、説得したのだ。

 魂を救出するためだと。

 ヴィクトルの説得もあり、アレクシアは、最終的には、作ってくれたらしい。


「しかも、核に封じ込められた魂は、オレたちと変わりなかった。だから、おかしいなって思ったんだけどなっ」


 ルゥは、魂が、妖魔の核に吸い取られる間、魂も調べていたらしい。

 だが、邪悪なオーラは、出ていない。

 それどころか、自分達と変わりないように思えた。

 作られた気がしなかったのだ。


「で、核から吸い取られたから、推測したってわけっ。妖魔は、魂を吸い込んでるってっ」


 しばらくたって、魂が、妖魔の核に吸い取られ、ルゥは、確信したのだ。

 妖魔は、魂を吸い込んでしまうのだと。

 つまり、魂は、妖魔にとらわれているのだと。


「後は、エマが消滅した時に、思ったんだっ。帝国の奴らは、魂がとらわれてるんじゃないかって、永遠に苦しむんじゃないかってっ。だって、どいつもこいつも、やってる事、無茶苦茶だしなっ。妖魔になるってことは、元々、作られた体だと思うんだよっ」


 ルゥは、光の粒となって消滅したエマを見て、感じたらしい。

 エマの魂は、苦しんでいるのではないかと。

 さらに、帝国の者達の様子を見て、推測したらしい。

 魂が、とらわれているからこそ、支配と言う異常な行動に出たのではないかと。

 つまり、帝国の者達の体は、人工的に作られた体であり、魂は、とらわれていると推測したのだ。


「だからさ、ルチア。ルチアが、やってることは、人殺しじゃないと思うんだっ。ルチアは、魂を救ってる気がするんだよっ」


「……」


 ルゥは、ルチアを励ます。

 ルチアは、人殺しをしているのではないと。

 魂を救っているのだと。

 それは、嘘偽りない言葉だ。

 ルチアは、ルゥの言葉を受け入れ、涙ぐんだ。

 だが、その時であった。


「おいっ、こっちに、誰かいるぞ!!」


「っ!!」


 どこからか、声が聞こえる。

 帝国兵が気付いてしまったようだ。

 ルチアとルゥは、驚き、困惑した。


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