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第三十七話 行く手を阻むもの

 ルチアは、大海原を進む。

 ファイリ島を出てから、一日が経った。

 ルチア達は、甲板に出て、海を眺めていた。


「よし、そろそろ、着くぞ」


「ねぇ、ヴィクトルさん、今度は、どの島に行くの?」


「水の島・ウォーティス島だ」


 ヴィクトル曰く、次の島に着くらしい。

 意外に早かったようだ。

 だが、どの島に行くのかは、まだ、知らされていない。

 ルチアは、ヴィクトルに尋ねると、ヴィクトルは、答えた。

 今度は、水の島らしい。


「水の島ってことは、今度は、水の大精霊・ウンディーネを復活させるんだな」


「その通りでございます」


 クロウは、気付いているようだ。

 次は、水の大精霊を復活させるのだと。

 フォルスは、うなずく。 

 クロウの読みは、当たっていたらしい。


「で、どんな島なんだ?」


「やっぱり、知らないのかよっ。水に浮かぶ村って言われてるんだぜ」


「すごくいい村だよ。きれい、きれい」


「へぇ」


 クロスは、恐る恐る尋ねる。

 ルゥは、また、生意気そうに答えた。

 ルチア達が、ウォーティス島について、何も知らなかったのは、予想していたが。

 ルゥ曰く、水の都と言われてるようだ。

 水に浮かぶ村と言われているらしい。

 島の中心に、湖があり、その湖の上に村があるとか。

 何とも、幻想的だろうか。

 ジェイクも、綺麗な村だと思っているようだ。

 と言っても、今は、帝国に支配されている。

 その美しさも、奪われたと言っても、過言ではないだろう。 


「だが、気をつけろよ」


「なんで?」


「自然災害さ」


「あ」


 ヴィクトルは、ルチア達に忠告する。

 自然災害が、ルチア達を待ち受けているからだ。

 ルチアも、その事に気付く。

 だが、今度は、どのような自然災害が、待ち受けているのだろうか。

 ルチアは、思考を巡らせた。


「その、自然災害って、まさか……」


「だろうな」


 クロスは、どのような自然災害か、気付いたらしく、顔を引きつらせる。

 クロウは、冷静さを保ちながら、構えた。

 ルチアは、あたりを見回す。

 まだ、気付いていないらしく、警戒しているようだ。

 クロウは、ルチアの手をつかみ、中へ入ろうとした。

 だが、その時だ。

 波が荒れ始めたのは。


「うわっ!!」


 波によって、大きく船が揺れる。

 ルチアは、バランスを崩しそうになるが、クロスとクロウが、ルチアを支える。

 だが、それでも、波は、荒れ続けている。

 一体、突然、どうしたというのだろうか。


「ちっ。来やがったか!!」


「来ましたね」


 ヴィクトルは、舌打ちをしながら、舵を握りしめる。

 フォルスも、冷静さを保ちながら、走り始めた。

 揺れ動いているというのに、バランスを崩さず進んでいる。

 さすが、海賊と言ったところであろう。


「全員、総動員です!!荒波を乗り越えますよ!!」


 フォルスは、命じる。

 部下達は、すぐさま、動き始めた。

 荒波を乗り越える方法は、熟知しているらしい。

 誰もが、冷静さを保ち、素早く、動き始めていた。

 ヴィクトルは、歯を食いしばりながら、舵を取る。

 荒波に飲みこまれないようにだ。


「もしかして、もう?」


「そうですよ。ウンディーネの力を使っているのでしょう」


 ルチアは、動揺を隠せないようだ。

 いきなり、自然災害が発生するとは、思いもよらなかったのだろう。

 帝国は、ルチア達を島に近づけさせたくないようだ。

 船は、大きく揺れ動く。

 ルチア達は、バランスを崩し、倒れた。


「さあ、皆さんは、中に入ってください。ここは、危険です。海に放り出されますからね」


「だ、だからって……」


 フォルスは、ルチア達を、中に入るよう促す。

 さすがに、このままでは、海に放り出されてしまうと考えたのだろう。

 クロスやクロウも、バランスを崩してしまうほどだ。

 フォルスも、ギリギリのところで、バランスを保っているのだろう。

 ルチアは、起き上がろうとする。

 躊躇しているのだ。

 もし、自分が、中に入ってしまったら、この荒波を止めることはできないだろう。

 しかし、荒波は続いた。


「わあっ!!」


「ルチア!!」


 ルチアは、再び、バランスを崩してしまい、クロスが、支える。

 波が、ルチア達に襲ってきた。

 このままでは、本当に、海に放り出されてしまうだろう。


「ほら、早く。急ぎなさい」


 フォルスが、焦燥に駆られ始める。

 それほど、揺れが激しく、ルチア達に、危険が迫っているという事なのだろう。


「待って!!」


 ルチアは、立ち止まり、ヴァルキュリアに変身しようとする。

 ヴァルキュリアの力で、止めようとしているようだ。

 しかし、ルチアが、ヴァルキュリアに変身する前に、船が大きく揺れ動く。

 ルチアは、再び、バランスを崩した。


「わあっ!!」

 

 倒れそうになるルチアをクロスが、支える。

 だが、クロス達も、バランスを崩し、倒れてしまった。


「だ、大丈夫?」


「大丈夫だ」


「ごめんね」


 ルチアは、謝罪する。

 自分のせいで、二人を巻き込んでしまった事を申し訳なく思っているのだろう。

 ルチア達は、もう一度、歯を食いしばって立ち上がった。


「今は、中に入るぞ。俺たちでは、どうすることもできない」


「う、うん」


 クロウが、ルチアを説得し、ルチアは、うなずく。 

 今の状態では、ヴァルキュリアに変身することすらできないと判断したからだ。

 悔しいところではあるが、ここは、ヴィクトル達に任せるしかない。

 ルチア達は、走りだす。

 船が何度も揺れ動くが、それでも、歯を食いしばって、走った。


「さあ、急いで!!」


 フォルスが、ルチア達に早く中に入るよう促す。

 あともう少しで、中に入れる。

 ルチア達は、懸命に走ったが、また、船が揺れ動き、バランスを崩し、倒れてしまった。

 どうやら、波が激しくなっているようだ。


「船長、まずいぜっ!!」


「ちっ!!」


 ルゥが、焦り始める。

 ここまで、激しいのは、初めてのようだ。

 ヴィクトルも、舌打ちをしている。  

 今までは、荒波を避けて進もうとしていたが、回避できないほどなのだろう。


「まずいよ、まずいよ……」


「これは、さすがに……」


 ジェイクも、焦燥に駆られている。

 フォルスも、参っているようだ。

 フォルス、ルゥ、ジェイクは、ヴィクトルへと視線を向ける。

 ヴィクトルの判断を待っているようだ。

 ヴィクトルは、歯噛みをし、決意を固めた。


「強引に進むぞ!!」


「了解しました!」


 ヴィクトルは、このまま、荒波の中を突き進むようだ。

 避けようとしても、波は追ってくるように、激しさを増している。

 ルチア達は、起き上がり、再び、走った。

 しかし、波が、船へと侵入した。


「わああっ!!」


「「ルチア!!」」


 ルチアは、波にさらわれ、そのまま、海へと放り出されてしまった。

 クロスとクロウは、ルチアを助ける為に、海へと飛びこんだ。

 ルチアは、波のせいで、泳ぐことができない。

 もがこうとするればするほど、波は、ルチアを捕らえた。


――い、息が……。できない……。


 ルチアは、息ができず、意識が遠のいていく。

 だが、このまま死ぬわけにはいかない。

 ルチアは、無意識のうちに、宝石を握っていた。

 すると、宝石は、光り始める。

 だが、ルチアは、そのまま、意識を手放してしまった。



 ルチアは、海の底へと沈んでいく。

 しかし……。


「ルチア、ルチア」


「ん?」


 ルチアの名を呼ぶ声が聞こえる。

 とても、暖かくて、優しい声。

 どうやら、少女のようだ。

 その声を聞いたルチアは、ゆっくりと、目を開ける。

 海の中ではないようだ。

 息もできる。

 自分の目の前に、誰かがいるのは、わかっているが、視界がぼんやりとしており、誰なのかは、不明だった。


「誰?」


「なんだ?私の事を忘れたのか?」


「え?」


 ルチアは、問いかけると、声の主は、苦笑しながら、問いかける。

 彼女は、ルチアの事を知っているらしい。

 一体、誰なのだろうか。


「私は、お前の……」


 声の主は、自分が、何者なのかを答えようとする。

 だが、再び、意識が、朦朧としていた。



 直後、ルチアは、再び、意識を取り戻し、ゆっくりと、目を開けた。


「ん?」


 視界がまだ、ぼやけている。

 自分が、どこにいるのかは、わからないようだ。

 だが、息はできる。

 どうやら、海の中ではないらしい。

 あの状況の中で、自分は、助かったというのだろうか。

 ルチアは、瞬きさせると、視界が、はっきりとなる。

 タンスや机が置かれてある。

 ルチアは、ベッドの上で眠っていた。

 家の中にいるようだ。

 だが、どこなのかは、不明。

 ルチアは、ゆっくりと、起き上がった。

 すると、ドアが開き、一人の少女が、入ってきた。

 水色の髪の少女が。


「あ、気付いたみたいね」


 少女は、安堵した様子で、ルチアの元へと歩み寄った。


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