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楽園世界のヴァルキュリア―救世の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 裏切りと火の島
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第二十四話 火山の恐怖

 レージオ島を出発してから、だいぶ、時間が経った。

 もうすぐ、日付が変わる頃であろう。

 ルチア達は、それほど、遠い場所へと来ていたのだ。

 だが、ヴィクトル曰く、ルチア達が、目指している島は、もうすぐだという。


「もうそろそろ、着くんだよね」


「そうだぜ」


 甲板で、海を眺めていたルチアが、問いかけるとヴィクトルは、うなずく。

 やはり、もうすぐで、島にたどり着けるようだ。

 クロス、クロウは、視線の先にある島を見ていた。


「あの島は、火の島か?」


「そうでございます。火の島・ファイリ島です」


「火の大精霊を祭ってる島だぜ。火の大精霊の象徴とも言われてるファイリ火山があるんだっ」


 クロスが尋ねると、フォルスが、答える。

 ルチア達が、目指している島は、火の島・ファイリ島だという。

 ルゥ曰く、火の大精霊を祭っている島のようだ。

 ファイリ島には、火山があるようだ。

 そこは、ルチア達が暮らしていた島とは違う。

 火の島と言ったところであろう。


「今は、あそこに近づくことすらできないけどね。残念、残念」


「どうして?」


「……大精霊がいないからさ」


 ジェイクは、残念そうに語る。

 なんと、あのファイリ火山には近づくことすらできないようだ。

 しかし、なぜなのだろうか。

 ルチアが、尋ねると、ヴィクトルが、答えた。

 それも、悔しそうに。

 まるで、複雑な感情を抱いているかのようだ。


「もしかして、大精霊がいないから、自然災害が発生しているってこと?」


「そういう事さ」


「なるほどな」


 ヴィクトルの言葉を聞いたクロスは、察した。

 大精霊は、島の民を災厄から守る力が備わっている。

 ファイリ島では、よく、火山が噴火するが、被害が及ばないように、火の大精霊が、制御してくれていたようだ。

 だが、今は、大精霊は、封印されている。

 ゆえに、自然災害が発生してしまっているのであろう。

 クロウも、納得したようで、うなずいていた。


「あのファイリ火山は、何度も、噴火しておりましてね。被害はないようですが、一刻も、早く、島を救わなければ……」


「島が、滅ぶ……」


「その通りです」


 フォルスは、懸念しているようだ。

 大精霊が、封印されてからは、火山が、何度も、噴火している。

 まだ、被害者は出ていたないようだ。

 だが、早くしなければ、島そのものが、滅ぶ可能性があるのだろう。

 全ては、ルチア次第なのだ。


「ねぇ、大精霊を復活させるには、どうやればいいの?妖魔を倒すだけじゃ、駄目なんだよね?」


「へえ、いいところに気がつくじゃんっ。もちろん、復活には、核を奪わないといけないんだぜっ!」


「核?」


 ルチアは、ヴィクトル達に尋ねる。

 大精霊を復活させなければ、島が、滅んでしまう事は、わかった。

 だが、具体的に何をすればいいのだろうか。

 単に、妖魔を倒すだけと、いうわけではなさそうだ。

 ルゥは、感心しているようだ。

 ルゥ曰く、復活には、核が必要だという。

 しかし、核とは、いったい何のことだろうか。

 ルチアは、わからず、首を傾げた。


「大精霊の核だよ。大精霊は、封印されると、核に封じ込められるんだ。しかも、その核は、妖魔や帝国の奴らが、奪っちゃったんだ。大変、大変」


 ジェイクが、ルゥの代わりに説明し始めた。

 核とは、大精霊を封じ込めている物らしい。

 しかも、今は、妖魔や帝国の者が、所持しているようだ。

 これは、さすがに、厄介な状況と言ったところであろう。

 ジェイクも、困っているようだ。


「じゃあ、妖魔を倒して、核を奪えば、大精霊は、復活できるんだね?」


「そうだ」


 確かに、今は、大精霊の核は、帝国が所持していることになる。

 だが、奪還すれば、大精霊を復活させ、ファイリ島を救うことになるだろう。

 そんなに簡単なことではない事は、ルチアも、わかっている。

 それでも、希望は、見えてきた。

 誰もが、そう思っていた。


「だが、シャーマンは、いないんじゃないのか?」


「確かには。だが、シャーマン候補はいる。大精霊を復活させて、そいつと大精霊が、契約すれば、結界は、張れるんだぜ。ちなみに、妖魔と帝国の野郎は、あの火山にいる」


「え?」


 クロウは、懸念しているようだ。

 たとえ、大精霊の核を奪取できたとしても、シャーマンがいなければ、また、暴走してしまう。 

 それこそ、島を滅ぼすことにはならないかと。

 もちろん、ヴィクトルも、わかっている。

 だが、心配する必要は、ないようだ。

 火の島には、シャーマン候補がいる。

 大精霊を復活させた後、そのシャーマン候補と契約をすれば、島を救うことになるだろう。

 と、言いたいところではあるが、ヴィクトル曰く、帝国の者達は、あの火山にいるよいうのだ。

 これには、さすがのルチア達も、驚きを隠せなかった。


「てことは、火山の噴火をどうにかしないと……」


「けど、どうやって……。止める事はできないんじゃないのか?」


 帝国の者が、火山にいるというのであれば、まずは、火山の噴火をどうにかしなければならない。

 だが、噴火を止める方法など、見当もつかない。

 打つ手なしと言ったところであろう。

 そう思うと、クロスは、不安に駆られていた。

 このままでは、大精霊の核すら、取り戻す事は、不可能ではないかと。


「確かにな。俺様も、火山の噴火をどうにかできないかって思ったんだ」


「じゃあ、核を取り戻そうとしたんだね」


「おうよ。けど、できなかった。噴火に巻き込まれて、部下を失った……」


 ヴィクトルも、その事は、理解している。

 それゆえに、過去に、ヴィクトル達は、何度も、火山の噴火を止めようと、火山に忍び込んだことがあったらしい。

 何とも、無謀な事であろうか。

 ヴィクトル達も、承知の上であった。

 だが、それも、ファイリ島を救うためだ。

 結果は、惨敗。

 噴火に巻き込まれて、部下を失ってしまったらしい。

 ヴィクトルは、こぶしを握りしめた。

 相当、悔やんだのだろう。

 彼は、部下想いの男だから。


「しかも、妖魔が多すぎて、行く手を阻まれましてね。全く、容赦有りませんでしたよ……」


 フォルスも、悔しそうな表情を見せる。

 彼らを苦しめたのは、自然災害だけではない。

 妖魔も、襲い掛かり、倒しても、復活してくる。

 それゆえに、核を取り戻す事は、困難を極めたのだ。


「だから、お前を待ってたんだぜっ。ルチアっ!」


「え?私?いくらヴァルキュリアの力があるって言っても、噴火を止める事は、無理だよ……」


 それでも、ヴィクトル達が、抗い続けたのには、理由がある。

 それは、ヴァルキュリアに変身できる少女を待っていたのだ。

 彼らは、ルチアを待っていたのだ。

 だが、ルチアは、難しそうな表情を浮かべる。

 ヴァルキュリアの力があれば、妖魔を倒すことはできるであろう。

 しかし、噴火を食い止める事は、不可能なのだ。

 自然災害を食い止める力は、宿っていないはずだから……。


「そんなことないよ。ヴァルキュリアなら、自然災害を乗り越えられるって言う言い伝えがあるんだ。すごい、すごい」


 ジェイクは、ルチアに語る。

 ヴァルキュリアは、自然災害をも、乗り越える力があるというのだ。

 それゆえに、彼らは、待っていた。

 ルチアの事を。

 ルチアがいれば、核を取り戻し、大精霊を復活させることができるだろうと。


「本当に、できるのかな……」

 

 ルチアは、不安に駆られ、うつむく。

 確かに、ヴァルキュリアの力は、すごい。

 しかし、それほど、簡単にできるとは、到底思えない。

 もし、失敗してしまったら?

 仲間の誰かが、命を落としたら?

 そう思うと、ルチアは、不安を取り除けなかった。

 だが、その時だ。

 クロスとクロウが、ルチアの肩に触れたのは。

 ルチアは、気付き、顔を上げた。


「今は、信じよう。自分の力を」


「お前ならできるはずだ」


「……わかった」


 クロスは、ルチアに語る。

 今は、ヴァルキュリアの力を信じて進むしかない。

 それに、ルチアなら、島を救えると、クロウは、思っているようだ。

 ルチアは、うなずいた。

 自分の力を信じて。


「なぁ、ヴィクトル」


「ん?」


「このまま進んでいいのか?気付かれたりしないのか?」


 クロスは、不安に駆られているようだ。

 海賊船・エレメンタル号で進めば、いずれ、帝国や妖魔が、気付くのではないかと。


「問題ない。闇魔法で、船を見えなくしてるからな」


「なるほど……」


 ヴィクトルは、クロスの問いに答える。

 実は、ヴィクトルの部下が、闇の魔法で、船を見えなくしているのだ。 

 これで、ルチア達は、帝国や妖魔に気付かれることなく、島に潜入できるというわけだ。

 それを聞いたクロスは、安堵していた。


「ほら、そろそろ、着くぜ」


 海賊船・エレメンタル号は、ファイリ島へと迫っていった。


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