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楽園世界のヴァルキュリア―救世の少女―  作者: 愛崎 四葉
第一章 再誕、華のヴァルキュリア
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第十一話 彼女を守るためには

「でも、なぜ、一人で、向かわれたんですか?」


「……アストラルとニーチェは、お前の事は知らんかったしな」


 ルチアは、フォウが、遺跡へ向かった理由は、理解したが、なぜ、その時に、パートナーでもあるアストラルとニーチェを連れていかなかったのかまでは、理解できなかった。

 フォウ曰く、アストラルとニーチェは、ルチアが、ヴァルキュリアであることは知らない。

 急いで、ルチアをヴァルキュリアに変身できるように準備をしたかったようで、説明する暇もなく、一人で向かわれたようだ。


「私も、ついていくつもりだったんだけど、武器の修理をしていたからね」


「仕方がない。島の民は、アレクシアを頼りにしておる。わしも、すぐ、戻るつもりじゃったからの」


 本当であれば、アレクシアも、ついていく予定だったようだ。

 だが、アレクシアは、武器の修理を頼まれてしまった。

 武器を開発するものは、アレクシア以外にもいる。

 だが、アレクシアは、優秀だ。

 だからこそ、頼まれたのだろう。

 アレクシアも、断れず、武器の修理ができてから、すぐに、向かうつもりであった。

 ゆえに、島の民は、フォウが、一人で遺跡に向かわれてしまったと思ったのだろう。

 アレクシアが、外に出た事も気付かなかったようだ。

 アレクシアは、いつの間にか、遺跡に向かう事がたびたびあったため、気付かなかったのかもしれない。

 フォウも、すぐに、村に戻る予定だったのだ。

 だが、まさか、ルチアが遺跡を訪れ、妖魔が、現れるとは思わなかったのだろう。


「じゃが、結果的に、皆を巻き込んでしまった。すまんかった」


 フォウは、頭を下げた。

 悔いているのだ。

 自分の身勝手な行いで、ルチア、クロス、クロウ、そして、アレクシアが、傷ついたのだから。

 責任を感じているのだろう。


「頭を上げてください、フォウ様。私は、うれしいんです」


「え?」


 ルチアは、フォウに頭を上げるように懇願する。

 フォウは、驚き、顔を上げた。

 ルチアは、穏やかな表情を浮かべている。

 フォウを咎めているわけではなさそうだ。


「私は、ヴァルキュリアに憧れてました。ヴァルキュリアに変身できたら、皆を守れるのにって。だから、うれしいんです。みなさんのおかげで、私は、ヴァルキュリアに変身できたんですから」


「優しいのぅ。お前は」


 ルチアは、感謝しているのだ。

 フォウが、自分の為に、神石のカケラを取りに行ってくれたことを。

 そして、アレクシアにも感謝している。

 なぜなら、憧れのヴァルキュリアになれたのだ。

 ルチアは、ずっと、ヴァルキュリアになりたかった。

 クロス、クロウ、そして、島の皆を守る力が、欲しかったのだ。

 だからこそ、感謝していた。

 そんなルチアの言葉を聞いたフォウは、微笑む。

 本当に、ルチアは、心優しい娘だと。


「でも、なぜ、妖魔は、侵入したんでしょうか?」


「確かにな。気になる」


 クロスには、気がかりな事があった。

 それは、妖魔のことだ。

 妖魔は、どうやって、結界をすり抜けたというのであろうか。

 クロウも、気になっていたようで、呟く。

 今まで、妖魔が、結界をすり抜けて、島に侵入した事は一度もない。

 異例中の異例と言っても、過言ではないだろう。


「ここの人達が、調べたみたいだけど、精霊石には、異常はなかった。もちろん、神石にもね」


 アレクシアは、語る。

 妖魔が、侵入したという報告を聞いて、島の民が、精霊石を調べてくれたようだ。

 だが、精霊石に異常はない。

 アレクシアも、村に戻る前に、神石を調べたが、異常はない。

 一体、どうしたというのだろうか。


「結界のほころびが生じたのじゃろうが、このままでは、妖魔が、侵入してしまうの……」


 フォウは、結界のほころびが生じたがゆえに、妖魔が、侵入したのだろうと語る。

 と言っても、結界のほころびは、何度も、生じた事があった。

 この時期は、特にだ。

 そのため、祭を行い、結界を強化した。

 ほころびが、生じても、妖魔が現れることはなかった。

 妖獣が、頻繁に出現する事も。

 だが、精霊石にも、神石にも、異常はない。

 フォウが、ルチアをヴァルキュリアに変身させるために、神石の一部を砕いたが、それでも、微々たるものだ。

 それだけで、異変が起こるとは、到底思えない。

 妖魔が、侵入できるほどではない。

 何が、原因で、結界のほころびが生じ、妖魔が、侵入したのかは、アレクシアでさえも、見当がつかないようだ。

 不安に駆られるフォウ。

 島の平和が、壊されてしまうのではないかと、考えているのではないだろうか。 

 ルチアは、そう、推測しており、決意を固めたかのように、ペンダントを握りしめた。


「安心してください!私が、皆さんを守りますから!!」


「ルチア……」


 ルチアは、宣言する。

 島のみんなを守ると。

 アレクシアとフォウは、複雑な感情を抱いていた。

 ルチアに託したのは、自分達だが、ルチアは、これから、怪我を負い、苦しみ、葛藤することになるだろう。

 そう思うと、やるせなく、申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

 自分達にも、力があればと、悔やんで……。


「けれど、ルチアだけに、背負わせたくはないな」


「俺もだ。ルチアを危険に晒すつもりはない」


「クロス、クロウ……」


 クロスとクロウも、アレクシア達と同じ感情を抱いている。

 ルチアだけに、背負わせたくないと。

 確かに、ルチアが、ヴァルキュリアになれば、死者が出る可能性も、少なくなる。

 だが、ルチアを誰が守れるというのだろうか。

 いや、守らなければならないのだ。

 クロスとクロウは、そう、思っていた。

 だが、妖魔を倒すことは二人にはできない。

 遺跡で戦った妖魔でさえも、二人は、圧倒的に追い詰められ、命を奪われそうになったのだから。


「アレクシア、何か、方法はないか?俺達も、妖魔を倒せる力が欲しい」


「ううむ……」


 クロウは、アレクシアに懇願する。

 ルチアを守れる力が欲しいと。

 すると、なぜか、フォウが、困った表情を見せる。

 まるで、方法があるのに、話すのをためらっているみたいに、ルチア達は、思えてならなかった。


「フォウ様、もう、お話したほうがいいんじゃないですか?ルチアの為でもあり、彼らの為にもなるはずですよ」


「……そうじゃの」


 アレクシアが、観念したかのように、フォウに語りかける。

 もう、隠す事は、無理だと、判断したようだ。

 フォウも、ため息をつき、意を決した。

 クロスとクロウに、ルチアを守るための力を手にする方法を教える事を。


「どうしたの?何か、知ってるの?」


「騎士の話は、聞いたことあるか?」


「はい、あります。ヴァルキュリアを守った英雄ですよね?」


 ルチアが、アレクシアとフォウに尋ねる。

 ルチアも、察したのだろう。

 二人が、何か、知っていると。

 すると、アレクシアは、突然、騎士の話を知っているかと尋ねた。

 騎士とは、ヴァルキュリアを守った英雄だ。

 ヴァルキュリアの為に、命をささげたとも言われている。

 島中の誰もが、知っている話だ。


「そうじゃ。お前達も知っていると思うが、妖魔と戦ったのは、ヴァルキュリアだけではない」


 妖魔と戦いを繰り広げたのは、ヴァルキュリアだけでなく、騎士もだ。

 騎士は、ヴァルキュリアを守って、戦い抜いたという言い伝えがある。

 妖魔を倒すことは、できなくとも、妖魔と、互角に戦えたらしい。


「なぜ、騎士の話をするんだ?」


「それがの……」


「フォウ様、私から、お話しましょう」


 クロウは、フォウに尋ねる。

 なぜ、騎士の話が、出てきたのか、見当もつかないようだ。

 フォウは、言いにくそうに、口ごもってしまう。

 それほど、伝えにくい話なのだろうか。

 フォウの様子を見ていたアレクシアが、フォウを気遣い、自分が、話すと告げた。


「クロス、クロウ。お前達は、かつて、騎士だったからだ」


「え!?」


 ルチア達に衝撃が走った。

 なんと、クロスとクロウも、かつては、騎士だったというのだ。

 これには、さすがのクロスとクロウも、驚きを隠せなかった。


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