番外編6 伊達にぼっちはしてねえぜ!! ~クリスマス特番さえも精神を削るので布団に入って朝日を待ちます~
「メリークリスマスッ!!! さあ、僕にプレゼントを持ってくるがいい」
「……………時期的な物だとは理解しているけどさ。作中何月よ?」
「そもそもクリスマスという文化がないんだけどね。そういうことを言うのは野暮ってもんだよ」
「そんな言葉でごまかそうとするのが、そもそもおかしいと思うんだけどな。野暮って言葉で納得するのは江戸っ子だけだと知れ」
「あっ今、江戸っ子に喧嘩売った」
「拡大解釈して俺の人気を減らそうとするなよ」
「元からないでしょ、君に人気なんて。少ないシェアを奪い合うことほど不毛な事はないよ。まずは手に手を取り合って業界を育てていかないと」
「誰目線だよ」
「そんなことはいいとして、プレゼントを下さい」
「急に丁寧になったな。そこまでして欲しいのか? プレゼント」
「欲しいです。我々はプレゼントを要求する」
「デモ行進みたいになったな。いや、プレゼントって言ってもどんなのを渡せばいいんだ?」
「さあ? 僕もクリスマスやったことないから知らないんだけど、サトーはどうなの? 友達とかとやるでしょ?」
「………………」
「………………あっ、なんか、ごめん」
「察するなよ………。俺もクリスマスなんて家族以外でやったことないからわからないな」
「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ。家族とやったときはどんな感じだったの?」
「ケーキを食べてお終い」
「えっ? プレゼントは?」
「中学になってからは貰ってないな」
「その前は?」
「炊飯器」
「え?」
「炊飯器。その前はこたつ。それに冷蔵庫、エアコン、布団乾燥機の時もあったか」
「それって、個人用?」
「いや、家族共有。妹も同じ。『二人へ』って渡された」
「そ、そういうものなの? プレゼントって?」
「当時はそれが普通だと思ってたな。クリスマスになると家電を取り替える、生活環境がちょっと良くなる。家族みんなうれしい。それがクリスマスプレゼントだと思ってたよ」
「思ってたってことは違うって気がついたの?」
「………………まあ。元からなんか、おかしいなとは思ってたかな。テレビとかオモチャのCMやたら流れるし。学校でクラスメートが賑やかになってたからな。『あれ? なんかうちと違うな』って。 確信したのは中学になってからだったけど、その頃になるともう、それが当たり前みたいになってたし、改めてねだるってのも恥ずかしくてなぁ」
「そ、そっかぁ」
「ああ。一つだけ個人用で貰ったことがあったな。自転車。あれで通学が楽になったんだよな」
「ふ、ふぅん。ね、ねえ。もう―――――」
「ああ、でも、そういえば。船に乗ったときが確かそのぐらいの時期だったか。 宴会やってたおっさん達につまみ貰った。プレゼントって言って。
今思い返してみると、初めて他人から貰ったかも」
「………………………」
「気持ち悪くて耳に入らなかったけど、メリークリスマスって言ってたかも知れないな」
「……………もしかしてとは思うけど、一応、確認させて貰うよ。『船上のメリークリスマス』とか、言わないよね?」
「………………」
「自虐ネタが過ぎるよ!! 流石の僕も笑えないよ。失笑どころか苦笑いだよ!!!」
「これを見て浮かれ上がったクリスマス気分から冷めたヤツが一人でもいたなら。我に帰れる人がいるのなら。こんなにうれしいことはない。わかってくれるよね。エルァ」
「エルァって誰だよ!! 有名な台詞もじって、やってることはぼっちのクリスマス妨害じゃないか!!」
「クリスマスに気合い入れてたカップルは年末までに別れればいい」
「あるけどっ! クリスマスにいまいち盛り上がりきれなくて、そのまま自然消滅ってあるけどっ!」
「駅前で待ちぼうけ食らってるヤツを見ると、ほっとする。呪いのサイト教えたくなる」
「最低だよ!!」
「みんな知るべきなんだ。お前達の幸せなクリスマスは多くのぼっちの犠牲の上で成り立っているのだと。おしゃれなレストランで食事しているカップルは従業員に優しくしろ。彼らが自分の幸せを犠牲にしたからこそ、お前らがいちゃいちゃ出来るんだ。言葉の前と後ろにサンキューとつけろ。
そして、雇用者側はクリスマス出勤手当の導入を真剣に考えろ下さい。通常手当じゃきつすぎます。心が死んでしまいます」
「サンキュー。もう、何が何だかわからないよ。サンキュー…………」
「そうだ、エル。プレゼントが欲しいんだよな」
「え、くれるの?!」
「ああ、あげるとも」
「やった~~! ありがとう。なんだかんだで親切だよね、サトー。で、何くれるの?!」
「爆裂植物砲戦果って言うんだけど」
「え、な、なんか嫌な予感がする名前なんだけど―――――」
「そうだ。いいこと考えた。せっかくいっぱいあるんだからみんなにもプレゼントしよう」
「え?」
「二人でサンタの格好して街で配ろう。そうだ、それがいい。幸せなクリスマスに華やかな色を添えてあげよう。紫色の花火を上げよう。教授も森のみんなもみんな呼んで、今夜はパーティーだぁ!」
「さ、サトー? 目がなんか、ヤバいことになってるんだけど」
「みんなぁ。待っててねぇ。これからサンタさんがみんなの所にプレゼントを配りに行くよぉ。ステキなステキな贈り物を、お見舞いしてあげるよぉ。メェリィィィクリスマァァスゥゥゥ!!!!」
「み、みんな、逃げてぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
(完)
遅くなってしまって申し訳ありません。
イブに一人でいる事実に抵抗するために喫茶店で執筆してました。
意外といっぱい人がいてホッとしました。
投稿直後に読んだ人は仲間。
次回は12月27日(水) そろそろ本編行きたいです。