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とうをつくるおしごと  作者: こうせきラジオ
5/55

FFもドラクエもⅤが至高。異論は認める~しかし少女には説明の才能がなかった~

前話(四作目まで来ると迷走しだすが、それは作者もわかってる~少女は説明責任を果たそうとする~)とセットです。






「それにさ。これが現実かどうかは置いといて、ならここには来るのはどうやって来たのさ?」


 ………そうだった。おれは既に不思議体験をしていた。水鏡(みかがみ)(なにがし)を歩いてきていた。


「それは………青く光るトンネルを通って………」


「それは自分の意思で来ようと思ったの?」


「いや………覚えてない。いつの間にか、気がついたら歩いてた」


「覚えてないの?ふーん。その前の記憶は?」


「………思い出せない」


「そういうことってよくあるの?ニホンってとこでは」


「ない…………な。少なくとも俺は聞いたことない。あえて言うなら怪談とか都市伝説とか?…………」


「伝説って事はあまり起きないことじゃないの?」


「まあ」


「なら否定できないんじゃない?」


「むう」


 正直な所、否定しようと思えば否定は出来る。今まで、俺の身にあった事を現代の技術で再現可能かどうか考えてみればいい。

 たとえばさっきの水のトンネル。どうすれば、アレを再現できるか、それを考えてみよう。

 詳しい技術的な事はわからないから大雑把に方向だけで考えると、まず、薄暗い円筒を横にしたような場所を用意して、気づかない場所に設置したスピーカーで水音を流す。足音は足の動きに合わせて効果音を入れる。もちろん暗闇にして。

 視覚や聴覚に限らず、感覚というものはやろうと思えば結構簡単にだますことが出来ると聞いたことがある。ケチャップとバナナがぱっと見、血のついたナイフに見えてしまうのは有名な話だ。実際に水がなくても、その気になったときソコには水がある。あると認識してしまう。

 薄暗い場所。静寂の中の一定の音。光の明滅などは催眠術に利用されたりもするから、催眠的な効果も期待できるかもしてない。

 状況に慣れて冷静な思考になる前に次の状況に移る。人間というのは例えおかしな状況でも、慣れてしまえば結構冷静になれるが、二つ三つと立て続けにあると処理できなくなる。疑って冷静に考える余裕がなくなって、状況に対応するために、素早い展開についていこうとして無条件に信じやすくなる。

 強い光を照らして目が眩んでいるうちに筒を撤去、エルの無駄に長いおしゃべりと周囲を動き回る足音は俺の集中を掻き乱し他の音にかき消すためのフェイク。

 目が見えなくて余裕も思考能力も低下しているから、あとはたたみかければいい。ワイヤーでも使って空でも飛べばさらによし。信じるやつはいるだろう。

 次々と状況を動かしてついて行けなくさせるってのはドッキリの常套手段だからな。画面で見てる分にはあり得ないけど、実際当事者側にたつと不思議と信じてしまうものだ。場に呑まれると言うか。

 昔、先輩が他の先輩にそうやってドッキリ仕掛けて絶縁状態になった。就活の時期の、面接ドッキリだった。そりゃ、怒るよ。

 うん。出来なくはない。大規模なドッキリ説。むしろ、その方が真実味がありそうではないか。


 ただ、反論もある。実行出来なくはないが………かなり大規模になる。膨大な予算と人手と時間が必要だ。

 ドッキリをしかけた結果、『楽しかった』っで終わる規模ではない。なにか、リターンがなければ出来ない。

 しかけるだけの価値も俺にはない。俺は別に芸能人でも有名人でも富豪の一人息子でもない。

 ドッキリをしかけた結果、何も生み出さない。出るのは文句と反吐くらいだ。意味が無い。膨大な予算を素人に使うとも思えない。

 そう思うと大規模なドッキリの可能性も捨てきれないが現実性がない。

 真実味が増したことで現実味が減った。


 というか、もしドッキリだった場合、俺は訴える。テレビ局か大学の研究室かどこぞの富豪か、知り合いか知らないが法の裁きを受けさせる。莫大な賠償金を要求する。示談でも高額の示談だ。地団駄を踏んで要求する。そしてその金で俺はアパートを買う。大学の近くに一棟丸ごと。俺は家賃収入で悠々自適な左うちわ生活を始めるのだ。

 さあ、こちらの覚悟は出来た。早く大成功のプラカードを持ってこい。訴えてやる。


 ………これも逃避だな。


 今までの考察も否定も何もかも、理解を促すための否定ではなく否定するための否定。こじつけだからな。


 今のこの状況とトンネルの存在が異世界の証明にはならないって結論はさっきの考察で出たけども、だからといって異世界じゃない事の証明にもならない。

 認めたくない。認めたくはないが否定も肯定もする材料がない。わからないことが多すぎて、何も結論を出すことが出来ないと言うのが現状だな。証拠不十分、審議不能。

 結論は出ていないが、話を進めるためにもどちらかであると仮定して話をしなければならない。無罪の推定というやつだな。

 否定してもエルがうるさい。とりあえずそうかもしれないという立場で話を進めるか。

 それにしても、わけのわからない事に巻き込まれてしまったことはだけは数少ない確定した事実なわけで、誠に遺憾ではあるが、如何ともし難い。………シャレを言うつもりはなかったが、結果的にそうなってしまった。


 しかし………こんなことが稀によくあるとは………。日本とはなんと業の深い国なのだ。


「百歩譲って、異世界召喚だと仮定しよう。その上で話がある」


「百歩譲って頂いてありがとうございますと、上から目線を広い心で許容しましょう。うん。それで?」


「迷惑です。家に帰してください」


「無理です。家には帰れません」


 即断。ばっさり。とりつく島もない。


「とりつく島もないって、暇もないと勘違いしている人多いみたいだよ」


ニコニコと笑顔を浮かべながらも無駄知識を披露するエル。人の心を読むな。


「そうなのかも知れないが話を変えないで欲しい」


「全く、取り合うひまもないね」


「そう、暇じゃないんだ。家に帰してください」


「帰れません」


「帰して―――」


「出来ません」


「帰し―――」


「無理」


「か―――」


「無」


「………」


「………」


 このやろう………。下手に出ればエラそうに。いいだろう。徹底抗戦してやろうじゃないか。よろしい。ならば戦争だ。


「おいおい、こりゃあ、拉致だよ。誘拐だよぉ!、これは!」


「!」


「なんだい、ニコニコと人の良さそうな顔をして。やってることは犯罪じゃないか。え?訴えるよぉ。相手取るよぉ。法の下ではっきりさせようじゃないかぁ」


 引くな。ここは押すべき所だ。相手が驚いてる内に徹底的に押せ。倍プッシュだ!


「だいたい、話聞いてりゃ召喚しただって?勝手に人様呼び出して『塔を作ってもらいます。ジャジャーン。あとよろしく』じゃないんだよ。ジャジャーンってなんだ。よろしくするかよ。バカ言ってんじゃないよ。冗談じゃないんだよぉ。こちとら、目つぶしやられてんだっ」


「ちょっ、言いがかりはよして欲しいな。結果として目を眩まされただけでしょ、ちょっと『まぶしいな』ってだけでなにを大げさな。だいたい僕のせいじゃないよ。事故でしょ事故。ちなみに僕は女だから『やろう』じゃありませ~ん。あと、ジャジャーンの事は言うな!」


「事故?言うに事欠いておまえ、事故?あれを事故で済ませようって言うのか。きっちり実害出てんだぞ!」


「それを言うなら君だって僕のパンツ見たじゃないか。恥漢!」


「それこそ、事故だろっ!論点をすり替えるなよ。ちょっと視界の隅に見えちゃっただけだろ」


「ちょっとじゃありませ~ん。あれはガン見でした~。見えにくい視界でなんとか見ようとする必死さが顔からにじみ出てました~」


「そ、そそ、そんなことねーし」


「だいたい『見えちゃった』だけで、色は言わないでしょ。口に出してる時点で十分悪質だよ。この変態紳士」


「変態紳士って言うな。色なんて十分『見えちゃった』の範疇だろうが!」


「ならワンポイントは?」


「海賊王」


「海賊王?!」


「海賊の証であるドクロマークをかっこよく表現した小粋なジョークさっ」


「悪質だ・語るに落ちたり・サトシサトー。『見えちゃった』でそこまで見えるはずがないじゃんかっ」


「ゆ、誘導尋問だ。裁判長!質問に悪質な意図が見えます!」


 あと、五七五にするな。イラッとする。


「罪の重さを考えなよ。目くらまし?それに僕の関与を実証できるの?証拠を出しなよ証拠を。出来たとしても部屋が薄暗かったから光を強めただけ。事件性は皆無だよ」


「俺ののぞきだって偶発的な事故だろっ!」


「今、俺ののぞきって言ったっ!自白したっ」


「言葉のあやだろ。揚げ足を取るな!」


「どんな言葉のあやで『俺の~』なんて言うんだよ。そんな台詞、フレンチでしか聞いたことないよ!」


「『俺の~』をバカにするな!他にもいろいろあるわ!」


「俺ののぞきもあるって言うんだね!」


「あるか!」


「もうっ。死刑!死刑だよ。裁判長!ここは死刑でどうすか」


「おまっ。それは私刑だろ!」


「知らないよ。この世界で君の国の法律が通用すると思わない方がいいよ」


「ま、まあ待て。よし。わかった、いいだろう。妥協してやる。目つぶしとのぞき。一対一で相殺(そうさい)だ。それはチャラにしてやるよ」


「なんでこっちが妥協されてるの?!」


「けどな。こっちはも一つ被害受けてんだ。いや、必死に論点をずらそうとしてたみたいだが、むしろこっちが本題だろ」


「な、なんの話だい??そんなんあったかな?」


「拉致だよ。拉致!」


「拉致?なんだいそれ?何を言ってるんだい。らちがあかないな」


「とぼけんなよ!召喚だよ召喚」


「あっ。忘れてた。もうちゃんと召喚って言って欲しいな。言葉は正確に使おうよ」


「本当に忘れてた!?人を拉致しといて忘れんなよ。そして言葉は拉致で問題は無い」


「君に問題が無くても世間にはあるんだよ。拉致って言葉が時勢的にそぐわないってだけでタイトル変更された作品があるのを知らないの?」


「知らん!!そんな話はしていない。帰してくれよ。俺を日本に帰してくれよ」


「ああ~もうっ!わかった。わかったよ!戻すよ。戻せば良いんでしょ!」


「そうだ!帰してくれよ!!!………って出来んの?」


「知らないよ!!自分で選んだんだから、僕は関知しないからね。何があってもこっちに責任求めないでよ!!!」


「求めるか!」


「きっと後悔するよ。あのとき美しくも崇高なるエル様の言うことを聞いておけば良かった。愚かで矮小な鈴虫以下のこのわたくしをお許しくださいってね。そん時にはもう手遅れ、謝ったって遅いんだからね!!!」


「するか!」


「じゃあね!」


エルが叫んだその瞬間、俺は再び光に包まれた。




(続)

結局何もわからずじまい。話の展開も進まずじまい。次話は明日投稿予定です。

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