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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生秋
98/125

夜遅くに真実を

 神社から離れ、人通りの少ない橋の上にやってきた。趣のある歩行者用の橋で、流れる川のせせらぎが耳に優しい。街の音も届くが、うるさいほどじゃない。

 色紙さんは、自身の事や俺との関係を細かく説明した。その最中、2人は黙って聞いていた。

 話終わると、色紙さんは大きく深呼吸をした。

 「質問は?」

 「本当なら信じられない話だけど。」

 相楽さんはそこまで言って統次を見る。

 「さっきの見たらな。」

 「そう。」

 色紙さんは信じてもらえるかどうかも興味がない、もしくはさっきの改変阻止失敗に落ち込んでいるのか暗いトーンで返事をする。

 「大体は分かった。分かったけど、個人的に腑に落ちないのが…。」

 相楽さんはあくまで個人的だけどと予防線を張って話し出す。

 「久永さんが死んだ事によって、未来の殺人が起きなくなった。それって悪いことなの?私はこの時代の人間だから、それって良い事なんじゃないかと思う。」

 色紙さんは相楽さんに向き合って答える。

 「その考えを私は否定しない。だけど、PPとしては認めない。過去の過ちも、発展の遅れも、人の死も、その時点でマイナスな事象であったとしても、それらを含めて全ての積み重ねのおかげで未来がある。その土台を崩す訳にはいけない。それが、PPの、世界の方針だから。」

 相楽さんは口を開きかけるが、閉ざして思案する顔になる。

 代わりに、統次が声を出す。

 「俺は色紙さん達未来の事情も何となく分かる。今まで積み上げてきた過去を簡単に変えようと、組織で結論を出せるとは思えない。」

 色紙さんは小さく頷いた。

 「ただ、この時代。過去の人間達はそうは思わないだろう。」

 「分かってる。だから、秘密裏にやってること。」

 「だったら、ハルを巻き込むのはどうなんだ?」

 色紙さんは目線を外して思案する。

 「そうだね。正直、こんな事態にまで巻き込むとは思わなかったし、もしもがあっても私が守り抜くつもりだった。」

 想定外が重なった結果だとは理解しているが、色紙さんは自分の不甲斐なさを呪っているのだろう。

 「確かに、毎回こんな感じじゃないんでしょ?」

 相楽さんが鼻を啜りながら聞く。

 「うん。今日の相手は私が知ってる中で1番強い人。」

 「ハルはどう思ってるんだ?」

 話を振られて、黙り込むのも悪いと思い考えながら話す。

 「統次が心配するような事を俺は感じてないと思う。投げ出すつもりはない」

 「いつまで続けるんだ?」

 色紙さんと俺に投げかけられた質問に、俺は閉口する。

 「私がこの時代から居なくなるまでとは思ってた。組織の人事だからはっきりとは分からないけど来年いっぱいとかかな。」

 統次は色紙さんを真っ直ぐ見つめて言う。

 「色紙さん達のことを公言するつもりはない。…ハルも今のままで良いなら強制的に辞めさせたりしない。」

 「私も黙ってるよ。でもお手伝いはしない。…出来ない。」

 統次も首肯する。

 「勿論、2人は手伝ってもらわなくて良い。」

 「ハルもまたこんなことがあったら考え直して方が良い。」

 声は出さずに頷くことしか出来なかった。

 しばらく沈黙があり、ぼんやりと辺りを眺めていたが、統次が口を開く。

 「先に帰る。」

 相楽さんはこちらをチラチラと見ながら、統次の後を着いて行った。

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