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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生秋
88/125

何か良いことあった?

 色紙さんに教えられた場所を目指す。スマホと目の前の道、街並みを交互に見ながら走る。地元なら地図も見ないで一直線で行けるのにもどかしい。

 夜の始め、まだまだ車も人通りも多い。観光地なだけあって、人は多いが地元民はそんなに多くないだろう。

 教えられた場所は雑居ビル。この屋上に2人いるという。確かにここなら、2人が居る川辺を監視しやすいが、相手が悪過ぎた。ここじゃ近過ぎる。

 周囲を見渡し、目的のビルより背の高いビルを探す。すぐ近くに20メートル程高いビルが有り、そこの外階段を駆け足で登っていく。

 外階段は最上階に繋がり、屋上へは続いていなかったが問題ない。手摺を踏みビルの外壁に飛び移る。そのままよじ登り屋上へ出る。

 随分と野蛮な不法侵入方法だろうと思い小さく笑う。

 屋上はしばらく手入れされていないようで、雨による腐食や汚れが目立つ。ふっ、と生温い風が吹く。

 街は煌々と光を放っている。

 屋上の縁から目的のビルを見ると、2人の人影が見える。2人ともこちらには気付かず川の方を見ている。

 そこ目掛けて飛び降りる。

 両足で2人の背後に着地する。

 「なっ!?」

 反応が早かった1人が振り向き、驚愕を浮かべ声を出す。余計に騒がれる前に顎に拳を入れ、意識を飛ばす。

 そいつが倒れるよりも早く、こちらを視認したもう1人は足払いを掛け転ばせる。顎に蹴りを入れ、脳を揺らす。

 制圧完了。

 戦闘訓練を受けていないか、受けていても大した実力ではなかったようだ。

 電話しようかとスマホを取り出すが、2人のことだ。気配で概ね察するだろう。

 川辺の方を向くが、光量が足りない上に距離もあるため良く見えない。

 辛うじてこちらを見ている2人組を確認できたため、大きく手を振って見せる。

 2人とも振り返してきた。この距離でわざわざこのビルを見るのは色紙さんと保呂羽さんしかない。この場で少し待つことにする。


 数分後に同じように隣のビルから飛び降りてきた2人は、倒れたCTT2人を一瞥してこちらに向き直る。

 「ありがとう。助かった。」

 「どういたしまして。」

 色紙さんからの謝辞に返事をする。

 「あまり情報は持ってへんやろうけど、私の方でじっくり尋問する。2人はさっさと帰ってええで。」

 「任せて良いですか?」

 「ええで。2人とも修学旅行なんやから、さっさと戻って、同じ部屋の奴らと好きな人の話でもしてこい。」

 その言葉にどきりとする。

 その変化に気付いたのか、色紙さんは顔を見るとニッコリと笑い、

 「何か良いことあった?」

 と言った。

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