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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生春
74/125

三者会議

 色紙さんはちらりと鹿折さんを見る。

 「私が聞いた通り。」

 そう言って、机の上に置かれたソフトサラダを食べる。

 「私が小菅君から聞いたのも大体同じ。」

 カップを持ち、一口啜る。それにつられて一口いただく。

 「さて、何か言い残した事はあるかい?」

 後輩に対して、やたら先輩面をする。するとめぐにゃんが右手を上げる。

 「はい、どうぞ。」

 おずおずと手を下げ話し出す。

 「皆さん、なんの話をしてるんですか。」

 めぐにゃんは未来について何も知らないのだ。いきなり花露辺さんの話を聞いても理解出来るはずもない。そもそも、全部嘘だと思っているかもしれない。

 「さっきの話に出てきたPPが私と美夜。」

 自分と鹿折さんを順番に指差し説明する。

 「未来から来たとか、そういうのは真実。三城君は…。」

 そこで言い淀む。バッチリと目が合い、めぐにゃんも俺を見る。

 「例外。」

 やや苦しいが、そうとしか言えない。

 「もっと説明してほしいです。」

 めぐにゃんは腰を浮かし色紙さんに身を乗り出して聞く。

 「時間がない。」

 キッパリと断られる。

 「これから私と美夜、三城君で今後の打ち合わせをする。桃生さんと花露辺さんには退場してもらうけど、言いたい事は分かるよね?」

 花露辺さんは頷くが、めぐにゃんは首を傾げる。

 「細い事を説明出来るかどうかは、これから3人で話し合う。だから、その結果が出るまでこれまでのことと私達のこと、絶対に誰にも話さないで。」

 鹿折さんが丁寧に説明する。

 「分かりました。」

 めぐにゃんも素直に応じる。

 色紙さんの刺すような目線から逃げるように2人は立ち上がり、玄関に向かう。それに後ろからついて行く。色紙さんと鹿折さんは座ったまま、ソフトサラダに手を伸ばしている。

 廊下を抜け玄関に着き靴を履きながら、

 「あの人も強いですよね。」

 と言った。鹿折さんの事だろう。それが面白く笑ってしまい。また睨まれる。



 「正直、桃生さんと花露辺さんと小菅君についてどう思う?」

 鹿折さんを見るが、お先にどうぞと手を出されてしまった。一つわざとらしく咳払いをしてから話し出す。

 「めぐにゃんの話は信じて良いと思う。矛盾はないし、むしろ俺が原因で巻き込んだと思う。今回の一件で重要なのは、花露辺さんと小菅君の関係だと思う。めぐにゃんは別軸で考えた方が良い。」

 一通り聞いた内容を、自分の中でまとめた結果このような結論になった。

 「花露辺さんと小菅君の話は、俺は本当なのかなと思う。実際に色紙さんか鹿折さんがタイムスリップして現場を見れば分かる事だし、嘘をつけないしつくメリットもない。」

 そういうと鹿折さんは口を挟む。

 「2人が出会ったっていう見据の進開の講演会に行くのはやめた方が良いよね。」

 「そうだね。」

 2人が納得し合っているため、何故かと考えると直ぐに考えが回った。もし、小菅君も花露辺さんもCTTの人間で話が嘘だった場合、見据の進開の講演会場付近はCTTが待ち受ける罠の可能性がある。それに、CTTが主催する講演会にPPが近付く事自体危険だ。

 そうなると、論点は一つ。

 「俺たちの味方か、CTTの味方か。」

 今まで聞いた話は全て本当であれば、俺たちの味方だ。もし嘘であれば、PPを殺すための罠だ。

 「そうだね。小菅君から聞いた話だと、見据の進開の成員数自体はまだそれほど大きくないみたい。芽を積むなら今だと思う。」

 「そう思わせるような情報を与えてるだけかもしれない。」

 鹿折さんの言うことも分かる。

 少数だと思わせ、CTTの大勢力が待ち受けている可能性がある。

 「もし、仮に本当だとしたらどうやって対処する?」

 真偽の前に確認した方が良いと思い尋ねる。

 「全面的に信じた場合の仮の話ね…。CTTの集団を殺す時は、暗殺方式で一人一人殺すやり方もあるんだけど、今回は避けた方が良いと思う。きっと、どんどん成員が減って行くと情報漏洩がバレて小菅君の身が危なくなるし、もしかすると全滅する前に逃げられる。だから、講演会のタイミングとか、全員集まる時に一気に叩く。」

 導入がイレギュラーであるため、対処法も異なるらしい。

 「実行するなら、私達でやるしかなよ。小菅君から情報で動いたとなれば、小菅君の今後がどうなるかも分からないし、そして何より小菅君との出会いを辿れば四季とハル君との関係もバレる。」

 いつの間にか鹿折さんに名前で呼ばれる。別に構わないが、唐突過ぎるためどきりとする。

 「そう。だから、見据の進開の情報を独自調査で知ったことにして、3人でやるしかない。」

 そこで一つ疑問が浮かぶ。

 「ちょっと待って。やりたくないわけじゃないけど、俺が出ても大丈夫か?」

 一掃作戦の際に、俺も共闘した場合、不都合や痕跡が残るのではないだろうか。

 「大丈夫。未来の人たちは、作戦が成功したらその時に戻って何かすることはない。そのせいで作戦は失敗する可能性があるからね。」

 それであれば問題無い。それじゃあ逆に、

 「もし嘘だとするとどう対応する?」

 「小菅君を殺す。花露辺さんは監視下に置くことしかできないかな。でも、美夜には見据の進開が存在することと、講演会をしている事は確認して貰ってる。だから、見据の進開をいずれ潰さなきゃいけないかな。」

 話を聞いていて、また聞きたいことが生まれる。

 「そう言えば、また別の話だけど教えてほしい。CTTと見据の進開の関係性というか、どういう立ち位置なんだ?」

 「たぶん、CTTの中でも行動的な一派だと思う。CTTの頭、UについてはPPが掴めていないように、CTT内部でも情報を絞ってるから知ってる人があまりいない。かなり上層部しかUと直接やり取りできないみたい。UからはCTT全員に指示が行き渡るようだけど、上層部から下は具体的な縦の役割がほとんどない。同じ思想を持ってはいるけど、それをどう体現するかはまちまちみたい。だから、たまにこういうUの指示外の行動する人や派閥が生まれる。」

 Uの指示する改変の他に、日常的な行動は各個CTTの自由意志によるらしい。その中で今回のような大胆な行動をするCTTもいるらしい。

 「CTTから派生した組織の対処は基本的に普通のCTTと同様に現地PPで対処することになってる。ただ、組織の規模によっては去年の夏みたいに対策部隊を組んでして対処することもある。」

 それであれば、俺たちで対処しても不自然ではない。

 「小菅君から聞いた話では、規模的に私達で組んで対応できるレベルだと思う。対PPに備えていくらか戦闘員もいるけど、私達3人なら大丈夫。」

 ここまでの話を聞いて、ベターだと思う選択肢を提案する。

 「小菅君と花露辺さんを作戦に同行させるのはどう?」

 2人の話が本当であれば、見据の進開を解体する事に抵抗はないはずだ。もし、嘘で解体に少しでも抵抗すれば見据の進開と一緒に小菅君は殺してしまい、花露辺さんは拘束すれば良い。踏み絵のような手法だ。結構良いかと思ったが、2人は同時にうーんと唸る。

 「それが出来れば良いんだけどさぁ。」

 「2人が本当のことを言ってるとして、小菅君も花露辺さんも正直邪魔じゃん?まともに戦えないだろうし。嘘だった場合は直ぐ殺せば良いからそれで良いんだけどさ、もし本当だったら面倒見切れないよ。」

 「なるほどねぇ。」

 三人寄ればなんとやらで、意見を出せばそれを精査してもらえる。それなら適当に案を出そう。

 「早坂さんにも協力してもらうのは?」

 「それはありだ。」

 ビシッと指をさして色紙さんは言う。

 「ただ、やってくれるかは分からない。あの人が面白いと思えば手伝ってくれるけど。」

 「状況伝えて相談するだけでも良いかもしれない。先輩としてアドバイスもらえるかもしれない。」

 忘れていたが、あの人は先輩だ。戦力面でも作戦面でも力になる。

 「もし早坂さんが参加しても、多少不安は残る。あの人がカバーしてくれるかわかんないし、足手纏い2人を気にしながら作戦を進めるなら、後1人は戦力がほしい。」

 色紙さんや鹿折さんの友達でも呼べれば良いが、俺がいる以上難しいだろう。早坂さんの知り合いも同じ事が言える。

 そういえば、ちょうど良いのは居るじゃないか。

 「めぐにゃんがいるじゃん。」

 「え、めぐにゃん?」

 「ああ、めぐにゃんね。」

 ダブルスタンダードだ。鹿折さんのためにも説明する。

 「さっき話した通り、めぐにゃんは強い。剣道限定だけど、狂態化を自然にやってきたみたいで、試合では狂態化した俺と互角。」

 「彼女良いね。誘おう。」

 指をパチリと鳴らして鹿折さんは即決する。色紙さんは眉を寄せ悩んでいるようだ。

 「詳しい話を聞きたがってたし、狂態化についても説明出来る良い機会じゃない。このままだとめぐにゃんいつか身体の許容限界を越えてぶっ壊れるよ。」

 色紙さんはテーブルの上のパイの身を一つ取り頬張る。食べながらも何度か唸りながら思考をしている。

 カップの珈琲を啜りやがて、

 「その方向性が良いかもね。」

 と言った。

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