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ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年春
6/125

2017まで

「2つある。」

「1つ目は?」

そう言ってまたお茶を飲む。俺も話し始める前に、折角出していただいたのでお茶を飲む。

「1つ。過去を変えると未来が変わる。それが怖いから未来の人達は過去をたとえ良い事でも変えるつもりはない。この認識であってる?」

「あってる。」

「それなら、今日の色紙さんの行動が矛盾じゃないか?色紙さんが犯罪者を殺してしまったら、色紙さんのいる未来よりも未来からまた誰かがタイムスリップしてきて、その人が死ぬのを止めるんじゃ。」

「なかなか面倒な事を考えるね。」

褒められたのか貶されたのか分からない反応をされた。

「説明が足りなかったね。私のいる…、いや、私が生まれた未来の世界は常に最未来なの。」

さいみらい?また意味のわからない言葉を持ち出す。

「例えば、今、三城君がいるのは2017年でしょ?その年は私達にとっては過去、既に過ぎた時間。それで私がいた時代に未来はない。過去しかない。延々水の増えるプールみたいなもの。過去に行くなら水に潜っていけばいい。未来に行くには上にいくけれど、水面では上にはいけないでしょ?私は水面にいるアヒルって思って。この時代には潜ってやって来た。元の時代は水面でぷかぷか浮いてるだけ。もっと上にはいけない。そこが最も先の未来、最未来。」

「言葉を挟んで良い?」

「どうぞ。」

「つまり、色紙さんがいた時代は常に未来を作っている状態ってこと?」

「そうなる。だから、今私が未来の人間をどれだけ殺しても、未来ではそういう過去として認識される。ただ、2017年を生きてる人間を殺すのはご法度ね。それじゃあ連中と変わらない。」

「とてもむずかしい。」

「一回で理解出来るとは思ってないけど、説明だけしとこうと思ってね。2つ目は?」

「2221年に過去の出来事をまとめたデータベースが出来た。イメージとしては、新しいPCを買う前に古いPCのデータを全部外付けHDDに保存したって考え方であってる?」

「この時代の電子機器の仕組みがイマイチ理解しきってないけど、大体合ってると思う。」

「俺はそれが無意味に思える。2221年でデータをまとめても、例えば2017年に俺が未来人に殺されたとして、その殺されたデータが正しいデータとして2221年に登録されるんじゃないか?」

自分で言って意味が分からなくなってくる。

「2222年にタイムマシンが完成する。その前の2221年に過去をデータとしてまとめたのなら、2221年時点では完璧な揺るぎないデータになってると思う。でも2222年以降にそのデータを見ても信用できないんじゃないか?」

「言いたい事は分かる。タイムスリップして過去を改変したら、その改変された過去のまま2221年まで時が進み、2221年のデータも改変された過去で残されると言いたんでしょ?」

まさにその通りだ。未来では、今が変わるのを恐れて過去を変えないのなら、そういう事になるだろう。

「最初、私もそう思った。確かにそう。だからかなりアナログな対策というか作業をしてる。なんだと思う?」

「過去の犯人が捕まっていない犯罪を全てを洗って怪しいのが無いか調べる。」

「できない事はないけどまず出来ないね。怪しいかどうかなんて個人の感覚みたいなものは必ず人がやらなきゃいけない作業だからとんでもない時間がかかる。それにその案だと、殺人とか犯罪しか洗えない。過去に来てできる事は他にも沢山ある。」

お茶を飲み、考えてみる。過去を改変されたら2221年時点で完璧なデータも根本的に改変されてしまう。それは避けられない。それを避けるために…、いや、避けられない事を避けるのは無理だ。問題は避けられない上に気付きにくい事だ。どうすれば2221年のデータを完璧なまま比較出来る。

「ヒント、未来は最未来。そして私。」

ヒントになっているのか?最未来であるメリットや特徴はなんだ?これより先に未来がない事。それでいてできる事は…。

「過去を変えられたら気付く術はない。」

「その通り。」

「だから色紙さんが現行を食い止めるしかない。」

「正解。」

「じゃあその、2221年時点のデータは何の意味があるの?」

「たとえば、今私が三城君を殺したとする。すると最未来のデータは今の時点から三城君が死んだ事で記録され、誰も気付く術なく時が進んでいく。」

 机の上に指を指し動かし、二つの時系列を説明する。

 「ただし、三城君を私が殺した事を誰かが知ったら、何日に三城君は殺されたから改変だと訴える。すると、過去形編される前の日に戻ってデータを参照する。そうすると真実が分かる。」

 何がなんだかよく分からなくなってきた。それを顔を見て察したらしい。

 「つまり、データも改変されるのは過去改変された瞬間。この時代に過去改変をしたとしても、犯行時刻は最未来の時計に習う。だから、最未来時間の過去改変以前に戻れば、過去改変を知ることができる。」

 分かったような分からないような。黙っていることで、ギブアップの意を示す。ただ分かった事もある。

 「色紙さんみたいな人が改変の現場を押さえる役目をしているけど、改変されたままの未来も一定数ある。」

 そういうと、少し寂しそうに肩を竦めてそうと呟いた。そして、沈黙後また話し出す。

「今日の話。私のことをいやらしい目で見てたなら分かると思うけど、先週と今日と特別な行動してたんだ。」

意地悪そうな目でそう言う。語弊があるが、冗談だという事は理解している。色紙さんが街中でしていた特別なこと。

「スマートフォンを見ていた?」

「別にそれは皆するでしょ?もっと違う事、でも別にやって変な事じゃない。」

もう少し、先週と今日の色紙さんの挙動をはっきりと思い出してみる。すると直ぐに思い当たる。

「眼鏡か。」

「そう!まるでペルソナ4ね。」

やけに現代のゲームに詳しい。少し前の気もするが。

「電気を見れる特別なレンズが使われている。タイムマシンだって電子機器に分類されて、タイムスリップすると身体が電気で覆われる。簡単に言えばね。もっと簡単に言うと眼鏡を通して身体の周りがモヤモヤしてる人がいたらそれは未来人って事。はい質問。」

「その眼鏡は未来人を見つけるためにつくられたの?」

「いや。電気の可視化が目的。コンタクトタイプもあるけど、その辺はまた後で説明する。」

色紙さんはスポーツバックを漁り中から眼鏡ケースとスマートフォンをとりだす。眼鏡を開け、中の眼鏡を差し出す。

「見てみ。」

そう言われ、レンズ越しに色紙さんを見てみる。周りにぼんやりと何か靄のようなものがある。オーラのようだ。

「なるほどね。」

「見えたでしょ?」

「ペルソナ4というよりHUNTER×HUNTERだな。」

分からないかと思うがそう言ってみる。

「そっちの方がしっくりくるね。私は特質系が良いな。」

案外同意が得られた。そして特質とはなかなか色紙さんは夢がある。

「私は眼鏡を通して街を見てた。街に未来人がいないか確認する作業、お巡りさんのパトロールみたいなものね。それで旅行者みたいな人を見つけた。滞在人と大罪人は大体判別できるからね。そこも後で詳しく教える。あいつを旅行者だと勘違い…、いや、相手に旅行者だと思わされて安易に接触して反撃を食らった。連中だったのね。危うく殺される時に三城君が来て隙が生まれたって事。」

分からないことはたくさんある。特に説明を省かれた箇所、滞在人と大罪人の違い、連中に旅行者だと思わされたというとこ。でも、さらに意味の分からないかところがある。

静かに挙手する。質問しても良いですかというジェスチャーだ。

色紙さんは首肯する。

「それなら俺が偶然助けなくても、未来から応援を呼べば良いんじゃないか?それか走って逃げて過去に行って自信を助けるとか。」

色紙さんはお茶を飲み馬鹿だねあんたはという目をする。色紙さんと知り合って1時間も経っていないが、なんとなく彼女は嘘がつけない人間に思える。

「あの時、確かに逃げの一手なら逃げれたかも。未来に助けを求めることが出来たかも。それに、私の生死が不明になったら未来から助けが来るかもしれない。」

そこで一旦言葉を区切り、立ち上がった。またどこかへ行き、直ぐに戻って来た。手にはペットボトルのお茶。自分のコップに注ぐ、ちらりと俺を見てた軽くペットボトルを持ち上げ首を傾げる。

目の前で手を振る。

そこでお茶をまた一口頂く。

「タイムスリップできる場所は決まってる。デスノートの条件みたいに、例えばロンドンからタイムスリップしたら過去のロンドンにしか行けない。さらに座標もまったく同じになる。富士山頂でタイムスリップしたら過去の富士山頂にしか行けない。ここまで言ったら察しがつく?」

大体察しがついたが、語彙が足りず上手い表現が出来ない。

「リスキルみたいな事が可能なのか。」

「そういう事。」

又しても現代特有の言葉が色紙さんに通じた。彼女は本当に未来人なのか?

「タイムスリップした場所が危ないというか、タイムスリップが過去にバレるようじゃダメでしょ?過去の人にタイムスリップはバレちゃダメだからね。だから同じ場所でしかタイムスリップ出来ない。ゲームのリスポーン地点や、セーブポイントみたいなものね。」

意外と色紙さんはゲーム好きなのかもしれない。テレビ台の下を見るとずらりとゲーム機がある。俺が持っていないものまである。

「タイムスリップできる場所が決まってるって事はそこを張れば、連中としては最善なわけでしょ?」

そこまで聞いて大きな疑問が生まれる。挙手する。話を遮られ少し不満そうだが、どうぞと言ってくれる。

「そもそも、連中って奴らは色紙さんみたいな過去に来て、不法に過去に来た人を見つけて処置する人を殺したいの?」

「言ってなかったね。連中は私らを躊躇いなく殺す。だから私たちも連中を躊躇いなく殺す。連中の話をすると日が暮れるからまた今度ね。」

「それじゃあ、連中にタイムスリップ場所を張られている限り、タイムスリップした瞬間殺されて未来から誰も来れないんじゃないか?」


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