疲れたのに寝れない日
「結局、何がどうなったのよく分かんなかった。」
管理棟にある昇降口と特別棟を結ぶ、渡り廊下一階で話をする。横に吹き抜けになっており、すっかり暗くなった学校には、まだまだ人が残っているようで何処からか声が聞こえる。
「あのゲーム自体そうだろうな。来年のリハーサルだと割り切るしか無い。」
来年の生徒会にやる気があればの話だが。何となく、今の生徒会長だから実現まで至った気がする。
「それもあるけど、最後。2人がスパイだったの?三城君は気付いてたの?」
眉を寄せて質問される。
「最初は気付かなかった。体育館に向かっている途中で、そういえば一番最初に2人に会った時に、鬼はかなり側に居たはずなのに何で大丈夫だったんだろうと思ったんだ。」
増田さんは腕組みをして唸っている。
「たしかにあの時間差だと、鬼に会わない方が不自然か。」
きっと、生徒会長が相楽さん頼んだのだろう。それに、あの2人のペアというか自然さが、今思えば逆に怪しい。
「誰もクリアできなかったんでしょ?ちょっとやり過ぎだったね。」
やけに眩しい自販機光を睨み、そこで買った缶を傾け、一口飲む。
「本格的過ぎた。もう少し事前にルール説明したり、後は鬼の数調節する必要があった。」
「噂だけど、またやるかもらしいよ。」
「タイミングないだろう。」
缶の中身が少なってきた。一気に飲み干してしまう。
「確かにそうだね。また来年かな。」
「多分、正式情報じゃなくて希望が噂になったんだな。」
「元春君はもう帰る?」
「そろそろ帰る。」
空き缶を自動販売機の側にあるゴミ箱に入れる。その音が想像よりもうるさい。
増田さんはリュックを背負い直す。
「じゃあ私も帰ろうかな。電車?駅どこ?」
スマートフォンで時間を見る。今から歩けば丁度良い時間だ。
「堀井駅。」
「どこそれ?」
俺の最寄駅を知らないのであれば、恐らく増田さんとは逆方向なのだろう。
「駅まで行こうか。」
一歩踏み出し、すっかり暗くなったら辺りを眺める。人の声はするし、校舎の何処かから楽しそうな声が聞こえる。しかし、なんとも取り残されてしまった感がある。
「結構遅くなっちゃったね。」
「本当。悪いね。」
そう言うと、増田さんは薄っすらとはにかんだ。
増田さんの背中が見えなくなる。そのタイミングで手を下ろす。
時刻を確認しようとスマートフォンを見ると、色紙さんから電話が来ていた。辺りを見渡し、折り返しをタップする。
3コールで応答がある。待たせていたようで、申し訳なく思う。
「脱出出来た?」
一瞬、何の話だと思うが、中夜祭の生徒会主催のゲームの話だろう。
「不達成。」
「そう。」
あまり興味はないようだ。
「明日は頑張ろう。作戦は打ち合わせ通りで変更無し。」
「基本はAで、場合によってはBかC。」
「それで良い。あれは忘れないでね。」
「わかった。」
駅の構内はごった返し、制服姿はほとんどいない。土曜日という事もあり、スーツ姿もいつもより少ない。
色紙さんからの電話は既に切れていた。
「明日か。」
そう呟くと同時に、スマートフォンの画面に早坂さんの名前が映る。
「もしもし。」
「お疲れ様、今日は凄かったね。」
「鹿折さんに圧倒されましたよ。」
「彼女はね。ああいうスタンスなんだ。」
目立っておけば、そういう人だと認識されると言ってたあれだろう。性格も相まって悪くないと思わされた。なんとなく、早坂さんはバツが悪そうな言い方をする。
「明日だね。何かあったら連絡するよ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
通話終了の画面を見つめて、ため息をを吐く。




