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ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年生秋
53/125

脱出路

昇降口の様子を見て、なるほどこれはと察する。タッチされた人達が続々と昇降口から校舎の外に出ている。その際に、門番のようにドアの側に鬼の面を被った人が声がけをしている。聞き耳を立てると、タッチされたかどうかの確認を行なっているようだ。

「昇降口に鬼がいる限りそこから出られないのかな。」

「多分そうだろうな。今はタッチされた人が多くてあんな状態だけど、基本は鍵をかけて前に立ってる感じだろうな。」

「鬼をどうにかしないとここからは出れないけど。」

増田さんは次の言葉を選んでいるが、何を言おうとしているか大体は分かった。何か方法があるのだろうか。」

昇降口の様子を見ると、ちょうどタッチされ外に出て行く人達が途絶えたようで、鬼は鍵をかけてドアの前に仁王立ちをしている。

「ちょっと試そうか。」

増田さんに手のひらを見せ制し、鬼の視界に入ってみる。鬼と目が合うが、こちらに来る様子はなく、ただ昇降口の前に立っている。

「ちょっと!なにしてるんですか!?」

増田さんに腕を掴み引っ張られる。そのまま渡り廊下を走る。

「追ってきますよ!逃げましょう!」

「いや、大丈夫だから一旦止まろう。」

そう言ってやや増田さんの腕を掴み返し、やや強引に引っ張る。細い腕にやや強めに力を込めてしまったようで、増田さんがバランスを崩し、こちらに倒れてくる。それを受け止め、誰もが色紙さんのようなパワーを持ってるとは思わない方がいいな考えを改める。

「ごめん。」

「大丈夫です!」

そう言って一歩退く。悪いことをした。

すれ違う他の参加者達に、変な目で見られる。それもそうだ。一体何をしているんだと自問し、冷静になる。

「さっきの鬼はドアの前から動かない。ドアから動いたら、その隙に他の人が出れるかもしれないからな。」

「なるほど、意外と凝ってますね、このゲーム。」

渡り廊下に差す日はもうなく、気付かない内に夜になっていた。昼間は何も思わなかった蛍光灯の光が、凄く頼もしく感じる。

「そうだな。」

来た道を戻り、再度昇降口を確認するが、やはり鬼は動こないようで、たまに来るタッチされた人達を外に出している。

階段の方を指差し、そちらに向かう。その途中、階段の目の前にある保健室には立ち入り禁止の張り紙が貼ってある。廊下の奥、校長室にも立ち入り禁止の張り紙がある。

階段を慎重に登り、周囲に誰もいない事を確認する。

「当たり前だけど、職員室は入れないね。」

こちらにも張り紙がある。隣の放送室にも立ち入り禁止の文字がある。

「あっちはいけるっぽい。」

増田さんの指差す方、職員室から西の方には、滅多に入ったことのない会議室がある。ドアは閉めてあるが、張り紙はない。

中へ入るが、長テーブルと椅子が数脚ありパッとみ何もない。

「何かないか探そう。」

分かっているだろうが合図を声に出し、あたりを探索する。テーブルの下や、棚の中や上を見るが、何も見つからない。そもそも、入ったことがない部屋で探し物は少し酷だ。

少しの雑音の後、放送が響く。

「残り生存者10人です。」

「はっや。」

早い。早過ぎる。この企画はリハーサル出来ないのが難点のようだ。マリオパーティみたいに、デモプレイがないと厳しい。

「あった!」

反射的に増田さんの方を見ると、メモを一枚持っている。

「どこにあった?」

「ホワイトボードの裏に貼ってあったよ。」

増田さんがそれを机の上に置いて、隣に並んで見る。


脱出経路を1つ見つけた。

体育館から格技場へと抜ける通路を通れば、外に出られる。ただ、体育館にはいつも鬼がいる。何とかそいつから注意を引ければ良いが、何か策を考えなければならない。


「経路は分かった。後は手段だな。」

「鬼の注意を引くための何かがあれば。」

ポケットのスマートフォンが震える。画面には南 統次の文字。


「どうした?」

「メモをいくつか見つけた。要約すると、鬼は音には鈍いらしい。視覚に頼っているらしい。そっちは?」

「体育館の後ろの通路、トイレの方から外に出れるらしい。ただ、体育館には鬼が駐在しているからしい。」

「何か気を引ければ良いのかも。」

「後で落ち合おう。教室で良い?」

「おっけい。」


増田さんが何か言いたそうな顔をしているので、統次から聞いた事を全て伝える。

「じゃあ教室に向かおっか。」

首肯し、ドアを開けると、放送室の前あたりに鬼がいた。般若の面を被っている。

「どうしましょう!」

増田さんはテンパると敬語になるみたいだ。

「大丈夫、統次の話が本当であれば、視界に入らない限りは大丈夫。」

「そ、そうでした。」

鬼は渡り廊下に進んだようだ。

当時にショートメッセージで鬼が入ったぞと送る。即座に分かったと返事が来る。

窓から鬼に見られないように、しゃがみながら移動する。

「めちゃくちゃ本格的だな。」

思わず声が出る。

「映画みたい。」

後ろから増田さんが声を出す。

渡り廊下の奥に目をやるが、鬼の姿はない、今は一般棟を徘徊しているのだろう。教室に行くには少し待ったほ方が良さそうだ。

生徒会のドアを見るが、立ち入り禁止ではないようだ。中へ入り、メモを探す。相楽さん、統次、色紙さんとお邪魔した以来の生徒会は、やはりどうも居心地が悪い。

探索すると堂々とテーブルの真ん中に置いてあった。


内通者達に伝えるべきこと。

・固定鬼の位置

・鬼の探索ルート

基本的に内通者を捕まえる事はないが、他に物に不信感を与えないように極力鬼との接触は避けること。


「スパイはいるってこと?」

「みたいだな。」

なかなかに面倒な設定だ。これでは参加者全員を信頼できない。

「結構私達メモ見つけられてるね。」

「もしかすると、他の人たちはメモを持っていって良いと思ってないのかも。」

「なるほどね。」

また携帯が震える。統次からのメッセージで、4組にいるとの事だ。

もう大丈夫だろうと、4組へ向かう。


「様子見だけしようか。」

作戦会議の結果、体育館を様子見する事になった。

廊下を慎重に歩きながら、4人で話をする。

「そういえば、随分参加者減ったね。」

相楽さんの言葉を聞いて、確かにと思う。

「初見殺しすぎたな。」

「そうだね。」

やはり皆同じ事を思っていたようだ。

「内通者は誰なんだろう。」

相楽さんが誰でもなく、恐らく全員に向けて言う。

「多分、3年生じゃないか。生徒会長の考えた企画なら、生徒会長の知り合いにそういうの頼んでるんじゃないか。」

「多分そうだろうな。」

「私は検討つかない。」

今残っている10人、さらに減っているかもしれないが、その中にいる可能性が高い。

「内通者達って事はペア1組で達なのか、ペア2組以上で達なのか。」

「後者なら俺達以外殆ど内通者だな。」

体育館には特別棟を通って向かう必要があるが、渡り廊下の一階は外と通じているため、通行止めとなっている。そのため、わざわざ2階を周り、特別棟に入ってから一階へ降り、体育館へ向かう。

こっそりと鉄扉を開け、中の様子を見る。

鬼の姿は見えない。中へ一歩入り、辺りを見ると、突然入ってきた扉が閉まる。

「え、合ちゃん?」

「増田さん、やられたよ。」

何を言ってるんだという顔をする。

「2人が内通者だったんだ。」

体育館の奥、格技場へと続くドアの方から、鬼がやってくる。この広い体育館で逃げ回っても良いが、悪足掻きでしか無い。

素直に負けを認めよう。

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