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ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年生秋
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お昼の前に

アルカイックスマイル10倍の笑顔を見せた後、周囲をキョロキョロと見渡し一般参加の人奥様二人組が一般棟へ歩いて行くのを見送り、俺の耳元に口を寄せ囁やく。

 「早坂さんから聞いてると思うけど、今日明日とお邪魔するよ。」

 あまりに距離に近いため、一気に心拍数が上る。

 一歩引き、思わず胸の前に両手の平を鹿折さんへ構える。

 「聞いてる。明日に起きることは。」

 鹿折さんは俺の身振りで察したのか、人気が無いためか数歩退く。

 「今日は何も無いはずだけど、念の為と情報収拾として文化祭に来てる。私は同じ学校の友達と来てるから、早坂さんと常に一緒には行動しない。そういえば、早坂さんは一人で来てた見たいだね。あれって逆に浮かないのかな?」

 確かに早坂さんは一人で来ていたようだ。

 「もっと大きな学校や有名な文化祭なら問題ないだろうけど、うちの学校だと微妙なだな。」

 鹿折さんは廊下の壁に身を預けている。

 行き交う人もたまにいるが、見知った顔は居ない。上級生や外部の人が多い。ただ、話す内容に気を遣えば問題はないはずだ。

 「まあ、早坂さんにはたまにいるちょっと変な人になってもらおう。」

 そう言うと鹿折さんはケラケラ笑う。そしてちらりと腕時計を確認する。

 「友達待たせてるから。後で映画見に行くね。」

 「期待は控えめにしてくれ。」

 手をひらひらと振る。鹿折さんも踵を返し、手の裏を一度上げた。

 何処かへ行くにも時間が微妙だと思い、ぼうっと突っ立つ。

 色紙さんと考えた作戦は何度も反芻していたが、やはり当日になると緊張する。それに、相手は人間だ。想定外の行動で作戦通りにいかないと思っていた方が良いと、色紙さんから助言を頂いていた。

 ”出来る限り最悪を想定していれば悲しまないで済む。”

 口の中で呟く。

 鹿折さんは映画を後で見に行くと言っていた。まずはその点を色紙さんへ伝えなければならない。

 「ずっとここにいたのか?」

 統次がいつの間にか現れる。もう時間になっていたようだ。

 「待ち合わせに早めに来ただけでずっといたとは限らないだろう。」

 そうは言うが、ずっといたことは事実だ。統次は俺がここにずっと居たことを知っていのか?

 「まあ、そうか。」

 歯切れの悪い言い方をする。何か隠しているのかもしれないが、聞く意味はない。鹿折さんと話していたことを聞かれていたとしても、問題はないはずだ。

 「とりあえず、バレー部のやつに行こうか。」

 首肯し、並んで廊下を進む。

 バレー部が模擬店を開いている部屋はゆっくり歩いても2分で着く。そもそも、学校内で1番遠い所への移動も5分で出来るはずだ。

 「相楽さんには会えたのか?」

 「会えた。」

 端的に答えてくれる。

 「今回も写真を撮って終わりだ。」

 「写真部もそれらしい活動が文化祭で出来てよかったな。」

 自分のことを棚に上げて嫌味を言う。

 「最初で最後の部活動だ。」

 ニヤリと笑う。

 目的の教室前には、依然として列が続いており、店側の人間として知らない人が立っており、おそらく先輩だろうと推測する。

 「すみません、整理券貰ってたんですが。」

 統次が胸ポケットから整理券を取り出し、見せながら話す。

 「お待たせしました。中へどうぞ。」

 営業スマイルで内へと案内される。

 教室内はゆとりのあるテーブル配置であり、それが行列の要因になっているのだと察する。

 席につくと、ひかるさんが小走りに向かって来た。

 「待たせてごめん。」

 机に置いてあったメニューを広げていた統次は顔を上げる。

 「大盛況だね。」

 「そう。特に大したことはしないのに、何でなのかな?」

 それは多分ひかるさん人気だろうと思うが、それは言わない。

 メニューを見るに様々な国お茶があり、さっきのテニス部の模擬店と似ているように思える。テニス部は衣装まで気合が入っていたが、バレー部は制服だ。それに、メニューの大半は見たことある名前ばかりだ。

 「テニス部と被りっぽいけど、流石に生徒会も差別化図れば第3案までは求めなかったらしい。」

 統治はそう説明するが、きっと相楽さんの受け売りだろう。

 また緑茶を飲むのも芸がないので、レモンティーを飲むことにする。統次はロイヤルミルクティーにした。

 「相楽さんに頼まれてるんだ。記事にするために写真を撮りたい。」

 注文ついでに統次がひかるさんにお願いする。

 「クラスマッチ思い出すね。」

 そう言って笑うひかるさんの笑顔は自然なように思える。


 午後になり、教室へ入ると色紙さんが一人でスマホを弄っていた。

 「暇そうだな。」

 顔を上げ、眠そうな目をこちらに向ける。

 「途中寝てた。」

 余程ヒマだったのだのだろう。

 目を覚まさせるためにも、真剣な話をする。

 「鹿折さんが後で来ると言っていた。」

 色紙さんが指を顎に当てる。

 「早坂さんに会ったけど、特に何も言ってなかった。」

 後ろのドアが開き、人の気配を感じる。恐らくクラスメイトだ。

 アイコンタクトをして頷く。

 午後の予定が固まった。


 

 

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