look<前編>
人差し指と親指で輪っかを作り覗く。両手の人差し指と親指で、カメラのジェスチャーをして覗く。
そうすると、未来が見える。
嘘ではないが、私がもし他人であればそれを聞いても信じはない。だから、それを人には言わない。それが真っ当な人間で、それが屈託のない人生に繋がる。私はそう思う。
授業中にこっそりと、指の輪っかを作り覗く。真っ暗な教室が見える。きっと夜なのだろう。
私がこの事を誰にも言わない理由はもう一つある。
私自身、いつの未来を見ているか分からないのだ。
未来である事は間違いない。何度も見て経験してきたから分かる。
ただ、それが数分先の事もあれば何年も先の事もある。いつか分からない未来を伝えても信憑性がない。
“いつかこういうことが起きるよ。”
そう言っても当たり前だ。いつかは起こる。時間指定がなければ未来を見たとは言い難い。
だから私は、1人でぼんやりといつか分からない未来を見ている。
運良く自分のメリットになる未来を見れる可能性もあるが、それを生かす気にはなれない。
次にあるテストの問題だとか、はたまた自分の失敗だとか、そういうのを見れた事もあるが、どうも私は小心者で、それらを生かすことが悪いことであるように思う。しかし、たまにはそれに縋ってしまう。主体性がない。
午後一の授業はどうも眠くなってしまう。これは人間として仕方のない事だ。
ここで少しでも長い瞬きをしてしまったら最後だ。そう意識を強く持つ。
1日の最後の授業に体育がある。
これは人によって感じ方が違う。
私は1日の最後くらい、座学で終わらせてほしいと思う。だけど、クラスの男子が最後が体育で良かったと言っていた。私はそれが信じられない。
曰く、1日の最後を遊んで終えれてラッキーらしい。
夕日が差す体育館でひたすらバスケのレイアップシュートを練習するのも、なんだか虚しい。
1日の体力をここで使い果たすわけにもいかず、適度に、そして真面目にこなす。
「ひかる。」
名前を呼ばれて振り返ると、景がいる。一定のリズムでボールを床についている。
「何かした?」
釣られてボールをついてみるが、景のように一定のリズムにできない。運動音痴が滲み出る。
「放課後空いてる?」
一度ボールを両手で持ち、考えてみる。特に用事はないが、部活動はある。しかし、景もそれを考慮しての発言だろう。
「部活後なら暇。18時過ぎになるかな。」
「ちょっと寄り道して帰ろうよ。」
「どこ行くの?」
そう言ってから、場所によって判断してると思われないか不安に思う。
「駅前の本屋。」
はて、それに私が付き添う意味があるかと考える。別に、私が行きたくなければ行かない訳じゃないが、景は理由なく人を誘うタイプじゃない。特に私、誘う者にも何かメリットを考えるはずだ。
「何か欲しいのあるの?」
「美術で色鉛筆使うでしょ?」
そう言われて思い出した。今日の美術で来週から色鉛筆を使うから用意するようにと連絡があった。家にはあっただろうか。
「そうだった。私家にあったかなぁ。」
必死に思い出そうとするが、普段から気にしていないものは全く思い出せそうにない。
「私は無いから今日買って帰ろうかなと思う。」
「分かった。私も帰りまでに親かお姉ちゃんに確認してみる。」
それが良い選択だろう。
「じゃあ18:30に昇降口に。」
「分かった。」
ちらりと体育教師を見るが、こちらを気にしている様子はない。しかし、今は授業中だ。あまり無駄話をし続けるのも良くない。ドリブルをして、明らかに高さの足りないレイアップシュートをする。
部活終わりに、特別教室に寄ってみる。普段ここで美術の授業を受けている。どんな色鉛筆を皆持ってくるのか、確認したかった。少なくとも今日、景と同じ物を買えば一人で浮く事はないが、日本人として周りと似たようなものが良い。1人だけ色が多いとか、色が少ないとか、そういうのが嫌だ。
指でファインダーを覗くような仕草をする。何となく、未来を見てみると、運良く美術の授業風景が見えた。日付までは分からない。
しかし、そこに景の姿はない。何故だろう。休みの日だったのかもしれない。
気にはなるが、景との約束もある。昇降口に向かう。
階段をリズミカルに降りて、靴を履き替える。ローファーのつま先を地面で叩き、揃える。
戸を開けると、既に景が待っていた。
「ごめん。遅れた。」
そう言うが、景は気にしていないようだ。
「私も今来たところ。行こうか。」
2人並んで歩き出す。
駅までは普通に歩いて15分程。本屋までも同じ程度の距離だ。
教室で、未来を見てみる。景の事が気にかかるのだ。
指で円を作り覗く。
教室の時計の時間は14時2分。クラスメイトも席についている。景の席を見るが、そこに座ってはいない。
前に美術の授業中を除いた時と同じ日を見たのか。ちょうどその日に風邪か何かで休んでいるのか。
少し嫌な予感がする。
それから何度か未来を見てみた。
ある時はすっかり暗くなった教室で菅原さんと話している景を見た。それがいつの日か分からないのがもどかしい。
何度も何度も教室を見て、景を探す。そして、また空席であることが増えた。
間違いない。
景は入院か何かすることになる。それか、最悪の場合は…。
かぶりを振り、嫌なイメージを払拭する。
これについては、誰かに相談した方が良いかもしれない。
しかし、こんな突飛な話誰が信じてくれるだろうか。残念ながら、話して信じてくれるような人は思い当たらない。
もう一度、ぼんやりと未来を見てみる。数学の授業中のようだ。斜め前の席の南君が先生に当てられる。かなり戸惑っている。手元の教科書を見ると、現在私が受けている授業とほぼ同じページのようだ。もしかすると、これは今日の未来かもしれない。教室の時計は15時を指し、今日の時間割とも合致する。
ずっと見てみる。
一度作った輪を外さなければずっと未来を見ていられる。
それを利用し、しばらく先も見てみる。
未来の授業が終わり、休み時間になる。
途端、校内放送が鳴り、生徒の呼び出しがかかる。声を聞くに担任の丹波山先生が、このクラスの千種 初さんが読んでいる。
教室の風景や人を見るに、今見ている未来が今日である事は分かった。遠くの席の石垣君の寝癖が物語っているし、細かいところが今日と変わらない。
ここで輪を外す。
この事を誰かに話そう。そうすれば、信用に値するはずだ。
「南君。」
1番近くにいる南君に声をかける。
「ん。」
何だと言う顔をしてくる。手短に要件を告げよう。
「次の数学の時間、石垣君の次に南君が当てられるよ。」
そう言うと、明らかに訝しんでいる。当たり前だ。次の数学教師はその日の日付で回答者を当てる。その日が4月1日ならば、出席番号1番11番21番31番と巡り、足りなければ2番12番…と巡る。
「今日、俺じゃないと思うけど。」
そう、今日の日付からして、南君は全く関係ない。だからこそ、その通りになれば証左となる。
「今にわかる。」
そう言い残し、席を立つ。
景にも伝えれば良いかと思うが、景がどうなるか確証がない。それを伝えて戸惑わせるわけにも行かない。
しかし、クラス全体に伝える訳にも行くまい。
千種さんの席に行き、隣でしゃがむ。
「千種さん。今日の数学の後に丹波山先生から呼び出しくらうよ。」
そう言うが、やっぱり訝しまれる。
「なんで分かるの?」
やっぱりそうなる。
「後で教えてあげるよ。」
これで2人は仲間にできるはずだ。素直に信じてくれればだが…。
数学の授業の後、南君に声をかけられる。
「どうして分かった。」
単刀直入に聞かれる。しかし、今は人の目が多過ぎる。
「後で教えるよ。」
そう言うが、南君は一切納得していない様子だ。
「今日先生は日付を勘違いしていたようだ。それが何故分かったかが問題だ。考えておく。」
そう言い残して前に向き直った。
考えても無駄なのに申し訳ない。
直ぐに千種さんが私の横に席に着く。隣の席の武藤君は今いないようだ。
「さっき放送あって丹波山先生に呼ばれた。仲神さん、丹波山先生に何か言われてたの?」
普通はそう考える。丹波山先生に千種さんに用があるとか言われていれば可能性がある。しかし、それでも校内放送をするとは限らない。
「今時間ある?」
帰りのホームルームまで10分ほどある。
「良いけど。」
どこが良いかなと思い、誰もいないベランダを指定する。
ベランダに出て、左右のクラスどちらも人がいない事を確認する。こんな中途半端な時間にベランダに出る人もいないだろう。
「何で分かったかだけど、私。」
そこまで言って躊躇が生まれる。しかし、今更だ。
「未来が見える。」
千種さんの顔を伺う。心は読めない。
「それじゃあ。」
迷ったように言葉を紡ぐ。
「今日この後何が起こるとか分かるの?」
言わんとする事はわかる。証明してほしいのだ。
しかし無理だ。
「運が良ければ分かる。」
そうとしか言えない。逆に質問してみる。
「丹波山先生の要件はなんだったの?」
「家の話。おばあちゃんが入院したってさっきの授業中に電話があったらしい。」
「大丈夫なの?」
「持病があるから。話を聞いた限り、1週間検査入院してから判断らしい。先生はどうせホームルームだけだから今から帰って良いって言ってたけど、逆にホームルームだけだからね。」
そう言って笑ってみせる。
「心配だね。」
「前にもあったし、親も学校じゃなくスマホに連絡すれば良かったのに。」
若干不満そうに、校庭の方を見る。そしてハッとした顔でこちらを向く。
「それなら、何で仲神さんは。」
そこまで言って目線を足元に向ける。考え込んでいるようだ。
丹波山先生ですら、さっきの数学の授業中に知った事を、私が数学の授業前に伝える事が出来た理由。それは明白だろう。
教室の中から戸が開く音が聞こえる。振り返ると丹波山先生が入ってきている。
そそくさと教室に戻る。
椅子を引き、席に着く。騒めきが小さくなり、丹波山先生が連絡事項は特にないと告げる。
いつもと変わりのないそれが終わると、千種さんがやってくる。
「私、病院寄って帰る。明日、また話せる?」
「分かった。」
考えを整理する時間も必要だろう。
踵を返す千種さんの背中を見ていると、後ろから声を掛けられる。振り返ると南君が立っている。
「考えてみたが分からん。」
素直に言う。
「教えたいけど。」
そう言って周りを見る。部活に行く前の人、帰る前の人が多い。タイミングが悪い。ベランダにも人はいる。
「人目を避けたいのか?」
目線で全てを察したようだ。頷いて返事とする。
「じゃあ部活後にここで会おうか。」
「それでも良い?」
「良いよ。」
じゃあと言って南君は教室を出て行った。
「なるほど。」
南君は話を聞くと、黙り込んで腕を組み真っ直ぐ黒板を見ている。
教室へ向かっている時は夕日だったのに、今はさっきより暗くなっている。時間としては数分なのに著しい。
この時間に教室に残る人は少なく、あまり声が聞こえない。
向かいの管理棟は、職員室にのみ電気が点いている。
「聞きたいことはたくさんある。」
当たり前だ。私が南君の立場であれば素直に信じられない。
「今日はもう暗くなるし帰ろう。」
そう言って鞄を掴む。
顔を覗くが、信じてくれたのか分からない。
翌日、皆部活をサボって無人の教室にいる。
南君と千種さんと私で、椅子に座って話をしている。
「一日考えたけど、信じるのが合理的かもしれないという結論になった。」
「私も、ネタというかトリックが分からない以上、信じる。」
信じたくはないが、実際に幽霊を見たい以上信じるしかないというのと似ている気がする。
「ありがとう。私は、こうやって指で輪を作ると未来が見える。」
改めて、自己紹介をする。
「指だけか?例えば、腕で輪を作るとか、身体の他のパーツだとどう?」
南君に質問されるが、それは過去に試した。
「それは無理。指だけ。」
「どういう風に見えるの?」
今度は千種さんから質問される。
「なんて言ったら良いかな。輪っかの中だけ未来になる感じ。音も聞こえるけど、現在の音も聞こえる。」
「だから昨日の私の呼び出しも聞こえた訳か。」
「そういう事。1番重要なのが、未来は見れるけど、どのくらい先の事か分からない事。」
「そっか。だから昨日のベランダで運が良かったらって言ってたのか。」
察しが良い。
「そうか。じゃあ未来が見える証明も運が良くないと出来ないから、周りにも言ってないのか。」
南君も察しが良い。この2人に話して良かったかもしれない。話しやすい。
「そう。これは今のところ私たちしか知らない。」
「それで、その話をどうして私たちにしたの?」
そう、それが本題だ。
「助けてほしいってのが本音かもしれない。最近、未来を見ると、たまに景の姿がないの。」
2人は自然と景の机の方を見る。そして私を見る。同じクラスの小清水 景で間違っていないかという確認だろう。首肯する。
「それがいつからか分からないし、何故かも分からない。」
南君の言葉に頷く。
「たまたま休みの日の未来を見たんじゃないの?」
たしかに、千種さんの言う通りなら1番良いが。
「何回も見たけど、そうじゃないっぽい。何日も居ないし。」
「入院、転校、最悪の場合もあるな。」
「そう、その最悪が怖い。」
こういう流れを想像していなかったのだろう。2人とも、言葉が続かない。それともやはりまだ信じきれていないのかもしれない。
遠くから笑い声が聞こえる。どこかのクラスでまだ誰かが残っているのだろうか。
「何個か質問がある。」
南君は真っ直ぐこちらを見る。
どうぞと手で示す。
「まず一つ。いつから未来を見れるようになったのか。」
少し考えてみる。そして話しながら整理するようにゆっくり喋る。
「具体的にいつからかは覚えてないけど、小さい頃からだと思う。それが当たり前だと思ってて誰にも言わなかった。物心付いて普通じゃないと気付いてからは、変な人だと思われないようにずっと黙ってた。」
「それじゃあ、小清水さんが居なくなる事が入学当初から分かってたんじゃないか?何で今、一年秋のタイミングでそれを俺たちに話したのかが分からない。」
そう言われて、確かにと思う。
「いつの未来を見てるか分からないから、入学当初から景が居なくなる未来も見えていただろうってことね。」
南君は頷き、千種さんはあそっかと合点する。
「普段から未来を見てるわけじゃないから、気付かなかったって言うのが一つ。もう一つが、具体的に誰がいるいないと意識して見たことがないってのが一つ。」
今回はたまたま、美術の授業で景がいない事に気付いた。
「成る程。人がいるなぁくらいにしか見ていないのか。」
なんとも悪の親玉みたいな言い方だが、間違ってはいない。
「未来を見て得しようみたいなことしないの。」
そう言われて苦笑いするしかない。
「なんだか、悪い事してるみたいで。」
「そんなもんか。」
「そんなもんだよ。」
また遠くから声が聞こえる。やたら大きな話し声だ。盛り上がっているのだろう。
「本当にいつの未来か分からないのか?」
「分からない。」
「検証してみたのか?」
かぶりを振る。
「ランダムじゃなくて、法則性があるかもしれない。」
顎に指を当て、考えてみる。気にしたことはないが、可能性はある。
「1日に見れる回数制限は?」
「無い。輪っかを作っている間はずっとその未来が見えて、外せば消えるもう一回作ればまた未来が見えるけど、さっきとはまた別の未来になる。」
「じゃあちょっと試そう。」
そう言って南君はノートとペンを取り出す。席を立ち、教室の隅に置かれたカレンダーの前に立つ。
「法則性、規則性を確認する。」
そう言ってカレンダーの過日にバツ印を付けていく。
「これから、1日の終わりにばつ印を書くことにする。未来を見てくれ。」
成る程、こう言う手段があったか。
覗いてみると、20日後だと分かる。
「10月25日みたい。」
「そのまま時計を見てくれ。」
教室の時計を見る。
「11時30分、授業中みたい。」
南君がそれをノートに書く。
「私何してる?」
千種さんを見る。
「シャーペンに芯を入れるのに手こずってる。」
「それを何回か繰り返して、それと小清水さんがいるかを確認してほしい。」
何度か同じことを繰り返してたが、私は規則性を見つける事ができなかった。
それは千種さんも同じようで、少し前から諦めてスマホをいじってる。
発案者の南君は、ずっとノートを睨みつけて、別のノートに何かを書いてはバツを書いている。
高校生でもわかるような規則性はなさそうだ。数学者とかが見れば分かるのかもしれないが…。
「俺には無理だ。」
そう言って大きな伸びをする。
小一時間は悩んでいた。確実ではないが、ランダムであるようだ。
「念のため、仲神さんみたいな能力?ないか調べてみたけど、やっぱりないね。」
「あったらトップニュースになるだろうな。」
「掲示板とか、信憑性がかなりないような場所も見てたけど、ないね。」
表に無いようなところを見ていたようだ。
「ただし、収穫はあった。」
南君はノートをこちらに向ける。何個かメモがあるページを開く。
「まず、いつ起こった事か分かるようになった。」
確かにそうだ。今まで、私の能力を真面目に検証しなかったため気付かなかったが、教室内に限りいつの未来か分かるようになった。
教室に限らず、絶えず日付が分かる場所であれば良い。
「ついでに検証の続きだけど。」
そう言って、カレンダーを見る。
「今日からあのカレンダーにはバツをつけない。」
突然宣言をした。
「未来を見てくれ。」
言われるがまま、輪っかを作る。
「カレンダーはどうだ?」
「あれ?」
「何かしたの?」
千種さんに聞かれる。
「バツ印が更新されていない。」
成る程、そう言う事か。
「未来には、何かをしようという意思まで反映される。バツ印を付け続ける意思があれば、それが反映されて、さっきみたいにもうこれっきりだと思えば更新されない。」
出来ない事以外は、やる気さえあれば反映されるという事か。
「そして二つ目。圧倒的に半年以内の未来が多い。」
それは私も気付いていた。
「今日だけで100回見てもらったけど、90回は半年以内、と言うか5ヶ月か。このクラスのままでいる期間内だ。10回は来年度のクラスになっていた。」
「その10回も、中には一年以上先の場合もあるよ。再来年度とか。」
それもある。クラスメイトや教室の様子が違いだけで、5ヶ月以上先と判断しているだけで、どのくらい先か分からない。
「後は時間だけど、これは何時が多いということはない。」
これもランダムだった。
「もう一つの検証では小清水さんが居なくなった時期も分かった。文化祭だ。」
文化祭が終わった後、景は学校に姿を見せなくなった。正確には、文化祭数日前から数日後の間に何かがあったようだ。
「あと1週間も無いね。」
千種さんはカレンダーを見て、指折り数えて言う。
あまり時間がない。
「今度出来る検証は少ない。教室のカレンダーを利用して、小清水さんが消えたであろう日ずっと見てみる。
それか、小清水さんに直接事情を話して、何か心当たりがあるか聞く。何かがあるかもしれない小清水さんの家にお邪魔する。」
それくらいしかできない。
「明日は土曜日だけど、教室には入れるっけ?」
部活で体育館まで入れるし、前に一度教室まで言った事がある。
「確か入れる。入れなければ、先生から用務員さんにお願いしよう。生徒なら大丈夫だと思う。」
「今日はもう遅い、明日検証の続きをしようか。」
時計を見ると18時に近い。結構な時間が経ってしまっていた。申し訳ない。
「面倒な話持ち込んでごめん。それに、信じてくれてありがとう。」
「信じないで嫌な思いをしたくないからな。」
照れ隠しのような言い方をする。




