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ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年生秋
37/125

失礼します

生徒会室に入った事はないが、大して広くないなと思う。勿論教室程の広さはなく、大きなテーブルが部屋の大半を占めている。

漫画で敵の組織が会議をするような長いテーブルと、錆のあるパイプ椅子、邪魔な程大きな棚。窓の外では校庭が見え、サッカー部と野球部、ソフトボール部、陸上部が汗を流している。

相楽さんはノートを広げ、ペンを持ち生徒会の面々に質問をしている。

「去年よりも豪華にしたいんですね?」

「そう!去年を否定するわけじゃないけど、もっと豪華にできると思うんだ。」

生徒会長の金田 典天(のりたか)さんは、前のめりでそう言う。

「俺は三年生だから、生徒会長として、現行生徒会としての活動は次の文化祭が最後。後は次の学年に引き継ぐから、より一層気合が入ってるよ。」

相楽さんに誘われ、断れずに生徒会へのインタビューに、統次と色紙さんと同席してしまっている。

メモを取るでもなく、ただ座っているだけで何だか申し訳ない。

相手方はインタビューに答える金田生徒会長と、2年生の臼田 宏副会長、3年生の江川 充希(みつき)書記がいる。会長以外の生徒会役員の方々は、俺と同じで暇そうである。

江川さんはノートを広げているが、特に何もメモを取っていない。器用にペンを回し、大きさが合わないのか何度も黒縁の眼鏡を気にしている。

臼田さんは、ちらちらと会長を見ている。

金田会長は見た目が派手だと思う。髪型もしっかりとセットされていて、全校生徒の前に出る時も気にせず、校則違反を体現している。髪のセットが校則違反かどうか分からない。寝癖のままであるのも良くないが、やり過ぎなのも良くはない。会長はその中間で、ある意味では模範であるかもしれない。

うちの学校の先生は緩い。先生というか、学校自体が緩い。会長程度であれば、身だしなみと言えるのだろう。

「多分、毎年あると思いますけど、やっぱりクラスの出し物で揉めると思うんですよね。今年の荒れました?」

相楽さんは単刀直入に聞く。

「俺は去年、生徒会書記として文化祭に携わっていたけど、去年と大して変わらなかったよ。」

別段、今年だけ揉めた訳ではないらしい。

「会長は、掲示板にあったメッセージをご存知ですか?」

相楽さんは、メッセージについて密かに捜査する必要はない。相楽さんに付いてきて正解だったかもしれない。

「実物は見てないけど、話は聞いた。部外者がやったとは考えにくいから、うちの学校に文化祭へ不満を持った生徒がいるということだと思う。」

「それについて、何かお考えがあります?」

「考えってほどじゃないけど。」

金田会長はそう前置きをして話を始める。

「生徒の声を全部聞けなかったのかなとは思う。でも、それは無理。全校生徒の意見なんて聞けないからね。文化祭楽しみの人がいる一方、正直怠いと思っている人もいる。直接民主制で決めるしかない場で、それを実行するのが生徒会。つまり、とどのつまり、仕方ない。」

なるほど。今まで生徒会と言っても結局教師や過年度という敷かれたレールの上を走るだけかと思っていたけれど、生徒会自体の結構考えているようだ。

「成る程。その通りだと思います。あのメッセージに心当たりや何か分かっているなどありますか。」

「うーん。軽音部はとても強く主張してきたね。同じこと何回も言ったよ。」

「どんなことですか?」

外から差す夕陽が翳り出している。もう少しで撮影が再開されるはずだ。

「去年より発表時間が短いだろって言ってた。去年よりステージを使いたい団体が増えて、開催日数は変わらないから仕方ないとは言ったけど、なかなか聞き入れてもらえなかったよ。」

「最終的にどうなったんですか?」

「納得したか分からないけど、時間は増やさない事にしたよ。ただし、機材の準備もあるだろうから転換時間は長めにした。早く準備できれば多少長く使える。妥協案だね。」

生徒を慮る生徒会長だ。

「それとバレー部の怖かったな。1年空気読めとか言ってたっけ。女子って怖いなと思ったよ。」

女子の前でそれを言ってしまうのもどうかと思うが。

「すみません、変なことを聞いてしまって。最後に文化祭スローガンについて聞かせてください。」


すっかり暗くなってしまった学校というのは何か特別感がある。

こういう雰囲気を出したいから、この時間にしたのだろう。

小清水さんと菅原さんが教室で演技をしている。2人とも上手い。恥を捨てればそれなりに形になるのだろうが、それが一番難しい。

身内ネタで盛り上がっている気もするが、進行するほどに良いものである実感がある。

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