表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年生夏
25/125

茹る刃

「色紙さんのいるコンビニの隣の隣の隣のビルの2階にいる。」

そこは何の店だったか。スマートフォンを取り出し調べてみると、1階と2階が同じ飲食店であるようだ。飲食店であれば、ずっと居座っても怪しまれないはずだ。

そして、その場所であれば私がドトール内のCTTを見てこのコンビニに居る事に気付いたはずだ。

状況は分かりやすくなった。CTTは2人いる。2人は、私がドトール内のCTTにしか気付いてないと認識されているはずだ。その隙を狙い私を始末するはず。

その認識を逆手に取り、2人とも殺す。捕縛出来れば、それに越したことはないが、かなり難しい。三城君が二重尾行の情報を逐一教えてくれて、私が不意打ちで二重尾行のCTTを一撃で仕留めても、その後にもう1人を確実に仕留められる自信はない。それなのに、さらに時間のかかる捕縛は難しい。2人とも脳を半分焼き、回収してもらうのが最善。半分焼けば再生はほぼ不可能で、実質殺した事になる。

CTTの取る行動として、まずドトールの奴が店外へ出て私を誘き出す。それについていった私を二重尾行の奴が狙い殺す。

その間に、三城君に二重尾行の場所と行動を報告してもらい、逆にそいつを殺す。

私の命を全て三城君に託す事になるが、それは仕方ない。仲間のPPに助けを呼ぶにも、二重尾行に気付いたきっかけを伝えられない。

既にCTT発見を伝えたため、やるしかない。

「動きはない。念のためドトールの方も覗いたけど、そっちも。」

咳払いをする。今は膠着状態だ。

「いや、動いた。店外に出た。」

そう聞いて外を見ると、奴が外に出ていた。スマートフォンを口に近付け小さな声をかける。

「頼んだよ。」

何も買わないで後にするコンビニはいつも心地が悪いが、今日は何も感じない。

銃を取り出して撃つタイミングは、極力人目を避けたい。実弾が出ないとしても、形は銃で音もする。CTTはその事を知っているから、不自然ではない範囲で人の少ない場所を選び誘導するはずだ。乗ってやろう。

「後ろ200で付いている。間100あたりに1人人影に隠れるように。」

ナイスだ三城君。私の100m後ろに二重尾行の奴がいるなら、私はまだ殺せない。距離が十分じゃないから、余程の技術じゃないと当てれない。一撃で仕留めるなら、そんなリスキーな事はしないはず。

前を歩くCTTがアーケードを抜け、人気の一気に減る通りに入った。ちょうど信号が赤に変わり立ち止まる。

おそらく、この次にやる気だろう。目の前の道路を行き交う車が途中で途切れ、道路を挟んで向こうのコンビニがスーツ姿で溢れている。

「一気に距離を詰めた。次の通りでだと思う。」

咳払いをする。

肩に下げた竹刀ケースを下ろし、左手に下げる。

信号が青に変わり、歩き出す。

まだ早い。

深呼吸をする。これくらい、怪しまれないだろう。

周りの人の目を確認するため、周囲を見渡す。まばらに人が居る、後ろを歩くCTTは見えない。姿を隠しているはずだ。そして、前を行くCTTと私の間に人がいなければ、やれる。

おそらく小学生の男の3人が自転車で通り過ぎる。スーツ姿の男性2人が向こうから歩いてくる。

後ろには若い女性が1人こちらに向かってくる。

立ち止まる。

若い女性が目の前を過ぎずに、途中東の道へ入っていった。

スーツ姿の男性が過ぎれば、人気は更に減りやれる。

スカートの上から武器をそっとなぞる。

「コンビニの中に入ってたが、表に出て煙草を吸い出した。」

後ろのCTTもいよいよ私が殺すと思い、時間調整をしているようだ。

目の前をスーツ姿の男性2人が通り過ぎる。今しかない。

スカートの中、太もも辺りに手を入れ、武器を取り出す。

「動いた。ジャケットに手を入れてる。もうすぐだ。」

三城君の声量が増している。

右手に持った銃の引き金に指を置く。

正面を歩くCTTに動きはない。後ろに気配を感じる。私が銃を構えた瞬間に殺されるだろう。

すぐさま竹刀ケースの中身、日本刀の形をしたそれを取り出す。

それを左手に持ち振り切り、後ろのCTTに鞘を飛ばす。同時に引き金を引き、前を歩くCTTの後頭部を狙う。

鞘はまっすぐ後ろのCTTに飛んでいったが、簡単に払い退けられる。前の奴を見ずに、左手の刀を起動する。熱を帯び、刀身から湯気が出る。

壁に向かって走り、それを建物に勢い良く縦に斬りつけ、途中でスイッチを切る。刃がコンクリートの途中で止まる。手を離し、壁を蹴り駆け上がり、壁に刺さった刀の鞘に足を乗せる。

前を歩くCTTを見ると、こちらを振り向くでもなく歩いて行った。。こっちはもう気にしなくて良い。後ろのCTTが気になるが、そっちを見るだけの時間で頭に照準を合わされ殺されるかもしれない。直ぐ左足を壁に当て、そちらに力を入れ、右手は鞘を掴む。左足で踏ん張ると同時に、刀を起動する。

コンクリートに刺さった刀を抜く。ちらりとCTTを見ると銃を構えてこちらを向けている。このまま自由落下で落ちれば確実に頭を抜かれる。

刀をコンクリートに突き刺し、途中でスイッチを切り壁に突き刺す。左手の握り方を変え、刀にぶら下がる。右手で銃を構えてCTTの頭を狙う。

が、CTTの方が先に銃を構えていた。

懸垂の要領で身を持ち上げ、更に足を振り上げ攻めて頭に当たらないようにする。

この角度ならば、脛が壊れそうだと痛みに備える。足が壊れても、死にはしないし、落下の時に相手を殺せる可能性もある。が、予想に反してない。姿勢を戻すと、CTTが姿勢を崩していたのが見えた。何故かと考える前に、銃を狙い頭を撃つ。ばしんという音が響き、CTTが倒れ込む。

刀のスイッチを入れ、するするとコンクリートが切れていき下まで下る。足が地面に着くと同時に引き抜き、スイッチを切る。

「危ないところだったね。」

すらりと長身の男がそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ