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ハルイチバン  作者: 柳瀬
一年春
18/125

パーカー

「南君と三城君。この子誰か分かる?」

「相楽さんが知らない人を、俺が知ってるわけないだろう。」

その通りだと俺も頷く。新聞部の相楽さんは色んな人を知っている。色々校内を取材等で動き回り、人脈が広いのだろう。

そんな人に色紙さんのタイムスリップ後の変装を見られたのはまずい。更には写真を撮られた。証拠が残ってる。

俺だけで対処できる問題ではない。一度色紙さんの指示を仰ぎたい。

「私も知らないから、90%この学校の生徒じゃない。」

「100%じゃないのか?」

統次が質問することで、俺が質問せずに済み助かる。思い過ぎかもしれないが、俺が質問しすぎると不自然な気がする。秘密を知っているからこそ、何か動揺が生まれそうだ。

「私だって全員を把握できてるわけじゃない。まだ入学から3ヶ月目だし。」

「そりゃそうか。でも一年生みたいだな。」

あまり発言しないのもおかしな気がして声を出す。この学校では、学年ごとに靴に色が違うラインが入っている。少し遠くで分かりにくいが、一学年の色だと分かる。

更に、下は学校指定ジャージの半パンだ。これもまた学年ごとに色が違い色は紺で一学年だと分かる。

クラスマッチ中は学校指定のジャージじゃなく動きやすい格好であれば良いと言われている。だから学校指定のジャージじゃない人も多い。

色紙さんは確か学校指定じゃない黒の半パンだった気がする。

「そうなの。同じ学年なのに知らない。上はパーカー着てるからクラス別Tシャツが分かんないし。」

「なんだか、わざとクラスが分からないようにしてるみたいだな。」

統次、余計な事を言うんじゃない。

「たしかにそう言われたらそうっぽい。」

相楽さんも同意する。

「下は学校指定なのに上がパーカーだから、下と靴でここの生徒アピールして上でクラスを特定されるのを恐れているように思える。」

統次は鋭過ぎる。急拵えの嘘や不自然さで乗り越えるのは無理そうだ。

「より一層怪しい。私はこの人が犯人だと思う。」

最善の手を考えて、これだと思い発言する。

「相楽さんは今日中の解決を望んでるんでしょ?それならどこの誰か分からないパーカー女生徒を探し出すよりも、まず小林 丈先輩を疑ってみるべきだ。」

言ってから不自然じゃないか不安になる。統次が窓の外を眺める。いつの間にか夕方になり、橙の光が眩しい。ぐるりと時計を探し、小さなデジタル時計を見つけ時刻を見ると、もうそろそろ今日のクラスマッチ終了する。

窓の外の景色は大して良くない。校舎が見えるだけで、それ以外にはあまり良い眺望ではない。

窓から目を外し、統次が口を開く。

「そうだな。それでダメならパーカー1年を探そう。」

2対1だ。相楽さんは不満そうに腰に手を当て、えー、と言う。

「絶対にパーカー何某が犯人だと思うんだけどなぁ。」

アナログ時計を見ると、ぞろ目の時刻であり、なんとも嬉しいような奇妙な気がする。学校の怪談なら異世界に閉じ込められてしまいそうだ。

「じゃあ行こうか。」

そう言って相楽さんは戸を開けて出て行く。統次は立ち上がらず、スマートフォンを取り出して眺めている。

「ほら。」

相楽さんが戻ってきて、俺たちを急かす。ようやっと統次は腰を上げて伸びをする。潰していた踵をしっかりを履き直し、息をふうと吐く。

「どこにいると思う?」

そう聞いてみる。俺自身、小林先輩の行方など知る由もない。

「別れましょう。」

「なんか今の言い方、冷え切ったカップルみたいだな。」

「え?」

「いや、何でもない。」

統次の言いたいことは分かるが、何も言わないことがこいつのためだろう。

スマートフォンを見るがメッセージはない。

「どう手分けする?」

統次が切り替えて聞く。

「そうだなぁ。体育館と特別棟係と校庭メインの外係、管理棟教室棟係でどう?」

大変さの比率が同じくらいだ。配分が上手い。異議はなく、誰がどこを担当するか決める。

「どこが良いとかある?」

「外以外。」

統次がそう言う。俺だって外が面倒だ。

「じゃあ私外、2人でどっちか決めて。」

2人で顔を見合わせる。なんだか申し訳ない事をしてしまった。残り2つは別にどちらでも良い。

「じゃあ教室棟管理棟にする。」

統次は、少し負い目を感じるのか2つのうちここから遠い方を選んだ。それを否定する理由もないため、受け入れる。

「見つけたら即連絡、1人で確保するのは2人は良いかもしれないけど、私はちょっと怖いから3人で囲もう。」

首肯し、2人が出て行くのを見る。特別棟から探そうと思うが、まずはスマートフォンを取り出す。連絡先を流し、色紙四季の名前をタップする。

小林さんの顔を俺は知らない。探そうにも探せないならやる事は一つしかない。

耳に当てコール音を聞く。この時間が嫌いだ。数コールで相手のもしもしという声が聞こえる。

「今、話大丈夫?」

時間があるかという確認と、未来に関わる話をして良いかの確認の2つの意味がある。

「…大丈夫。」

しばしの間に、辺りに注意を払ったのだろう。

「ほぼ俺のせいだけど、お昼の色紙さんが写真に写り込んで怪しんでいる人がいる。」

「実際会って話そうか。今は大丈夫?」

「特別棟を歩きながらなら大丈夫。」

「2分で行く。」

特別棟一階、管理棟とを繋ぐ通路で色紙さんを待とうと階段を降りると、既にこちらへ登って来る色紙さんがいた。

「詳しく。」


ざっと内容を説明する。質問する事なく黙って聞いていた後、また更に黙って何か考えている。やがてスマートフォンで時計を見て、何やらぶつぶつと言い出す。

「もう一度昼に戻って、色紙さんを体育館へ行くのをやめさせるのは…。」

そこまで言ってから気付く、それはできない。

「出来ない。もう一度戻ったらタイムスリップ3回目で私が死ぬ。」

既にこの時代に一回タイムスリップで来ているという事を忘れてしまっていた。

「それとも私に死ねって言ってる?」

「とんでもない。」

何かできる事はないか考えてみる。パーカー女生徒をここの在学生と証明する。それは無理だ、顔を見て相楽さんが知らないと言っているのだから無理だろう。

どうにも回避できないか。

「やや強引に行くしかないかな。」

何か術があるような言い方だ。期待して聞いてみる。

「どうする?」

「これを使う。」


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