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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生冬
114/125

惑星軌道の結束点④

 辺り一体が、高層ビルで溢れている。その一つ一つがスカイスクレーパーと呼ばれる超高層ビルらしい。。

 中でも、1番高く大きなビルには、他のビルから連絡通路が接続しており、中心となっていた。それこそが、セントラルスカイスクレーパー、略してセンスカらしい。

 「初めて来るんですか?」

 真白さんに尋ねられる。

 「初めてだ。とんでもないな。」

 真下から見上げると、首が痛くなるほど高い。隙間から見える空は青く見えるが、吹く風は寒い。

 ここへ来るまで、出来れば歩きたいと言って来た。交通機関を使うより、色紙さんを見つける事ができるかもと言って。かなりの距離を歩かせてしまったが、色紙さんを探すという目的もあった。結果、真白さんが探す色紙さんも、俺らが探す色紙さんも見つからなかった。

 ただ、歩きながら、未来の街並みを見るというのもなかなか楽しかった。非常事態という事を差し置けば悪くない経験だった。

 観光客と思しき人々と連なり、センスカの中へ入る。煌びやかな照明が明滅するロビーには、電光掲示板があちこちにある。

 電子掲示板やデジタルサイネージが多く、目が痛くなる。

 日本語と同じくらいの外国語が目に入り、観光名所ともなっていると分かる。

 「こっちです。」

 そう示された場所には行列が出来ていた。

 その最後尾に並び、これは何に続いているのだろうと疑問に思う。

 「この先のエレベーターが、かなり大型のもので一気に最上階まで行けるんですけど、多少待ち時間もあるので並びましょう。」

 真白さんと一緒に並ぶ。

 上から街を見下ろして、やることは2つ。

 一つは、色紙さんが待っていないか確認すること。

 道に迷えば高い所から全体を見渡すのが常套手段だ。それを察してセンスカで待って居れば良い。ただし、かなり望み薄だ。

 二つ目は、次に向かうべき場所に検討を付けること。高い所から街を見渡し、昨日タイムスリップさせられた場所と今の場所の位置関係や、それを踏まえて色紙さんとの待ち合わせ場所にあたりをつけたい。

 背中を押されて、目の前にエレベーターが開いたことに気付く。めぐにゃんに急かされていたようで、迷惑にならないよう急いで乗る。

 エレベーターはガラス張りで、外がよく見える。

 あたり一体は同じように背の高いビル等立派な建造物や、それを縫うように走るモノレールが見える。立体交差して、地上から数十メートル高い位置にも道路や通路が設けられ、沢山の人が往来している。

 どんどんと上昇して行くと、更に遠くまで見える。

 昨日、俺たちが飛ばされた辺りが見える。改めて見ると結構な距離がある。よく歩いて来たなと思う。

 そして、あの辺りだけ雰囲気が違う。他と比べて、整備されていない。それにそもそも古い。

 エレベーターの扉が開いたため、他の人と一緒に吐き出される。

 展望スペースになっている階に到着する。エレベーターから降りていく人の流れに身を任せ、奥へと進む。

 「あそこです。」

 真白さんの目線の先には、この街を見下ろせる一面ガラス張りの展望スペースがある。

 改めて、高い場所から未来の街を見る。

 このセンスカを中心に綺麗に区画整理され、高いビルとモノレールが密集している。ドローンが飛び交い、人の往来も多い。

 離れた所には、俺達がタイムスリップした場所があり、雑然と廃墟のような地域となっている。

 「こっちに来てください。」

 少し街並みを眺めた後、真白さんは奥のスペースを指差す。

 後ろをついて行くと、間仕切りされたスペースが現れる。半個室状態で、街並みを眺める事が出来るスペースのようだ。

 家族やカップルなどがプライバシーを配慮しつつ、眺望を堪能できるということだろうか。

 3人で街を見下ろす。

 「単刀直入にお聞きします。」

 真白さんはそこでゆっくりと間を開けて次の言葉を続ける。

 「あなた達は何者ですか?」

 どこかでめぐにゃんとの会話を聞かれていただろうか。記憶を辿るが、特に不審だった場面はない。ここで変に間を開けても不審だ。可能な限り平静を装って返答する。

 「何者って、一般人だけど。」

 嘘はついていない。

 PPでもCTTでも何でもないなら、立場的には一般人だ。

 真白さんは俺の目をじっと見つめる。

 「私は、四季が見つかるならお二人に協力します。たとえ何者であってもです。ただ、四季に危害を加えようとしているなら…。」

 そこで言葉を切った。

 言いたいことは分かった。

 こちらの様子を伺い、口を開く。

 「私は、お二人が過去の人間なんじゃないかと思っています。」

 バレていたか。心臓が高鳴り、緊張していると冷静に自分の感情を分析する。

 「なぜそう思う?」

 至って冷静であると装って尋ねる。

 「四季の呼び方です。」

 そう言われて気付いた。

 「そうか。俺たちは全く気にしてなかったな。」

 めぐにゃんはピンときていないような顔をする。それを見て、真白さんは説明続ける。

 「桃生さんは16歳で三城さんは一つ上で17歳ということでした。三城さんは、四季のことを色紙さんと呼んでいます。17歳の男性が14歳の女性を呼ぶ時にさんを付けること自体は、多少違和感がありますが、親密度次第ではあり得ます。ただ、16歳の女性が14歳の女性を呼ぶ時に先輩を付けるのはおかしいです。」

 めぐにゃんは顔を顰める。

 「それで色々なパターンを考えました。そこで最も違和感がない組み合わせは、四季が17歳以上で三城さんも17歳、桃生さんが16歳の場合です。」

 「確かにそうか。」

 めぐにゃんはバツが悪そうな顔をする。

 「つまり、お二人は過去人でこの時代へタイムスリップしてきた。そして、元の時代へ帰るため四季を探している。」

 めぐにゃんは俺をチラリと見る。

 「流石PP候補生だな。」

 「私の仮説を認めるんですね。」

 「認める。ただ、嘘を吐いていたのはそこだけだ。色紙さんのためにも、そのことは伏せるべきだった。」

 「そこは理解しています。四季のためにも懸命な判断だったと思います。」

 正直、真白さんは本当に色紙さんの友人ということも信じるに足る根拠は何もなかった。

 最初から、全てを打ち明けるには判断材料が少な過ぎた。

 「俺たちは過去から、CTTに色紙さんに間違われて飛ばされて来た。」

 かいつまんで説明することにする。

 「色紙さんの助けを待っているんだけど、さっぱり現れない。何か事情があるんだと思う。」

 「それで四季を探しているという話なんですね。」

 「そうなる。」

 「結局、四季がどこに居るかは分からない事実は同じなんですね。」

 首肯する。

 「ただ、真白さんが色紙さんを探しているという事情を慮ると一つ可能性がある。この時代に飛ばされた時から頭にあったことだけど。」

 そこまで言うと真白さんも思い当たっていたようで話し出す。

 「既にこの時代でタイムスリップを重ねている可能性ですね。」

 「うん。何かタイムスリップせざるを得ない事件に巻き込まれているとか。」

 「巻き込まれたというか、首を突っ込んだような気がします。」

 「色紙さん、昔っからそんな感じなんですね。」

 「やっぱりその可能性が高いと思う?」

 真白さんは腕を組んで唸る。

 「お二人がタイムスリップさせられるに至った経緯を詳しく聞かないとなんとも言えないですけど。」

 そう前置きをするが、色紙さんの事情も考慮し深くは聞かないとようだ。

 「特段、四季がお二人を助けに来ない理由が思い浮かばないなら、来れないと考えるべきです。そして、四季が物理的な障害があって来れないとは考えられません。」

 「という事は、やっぱり。」

 めぐちゃんが確かめるように声を出す。

 「その可能性が高いです。」

 「そうなると、タイムスリップ出来るようになるまでここにいるしかないか。」

 「そうですね。私がタイムマシンを無理矢理使う手もありますが…。」

 「どのくらい危険?」

 「タイムマシンがある施設は警備が厳重です。1番身近な場所は、私の通ってる学校ですが、そもそも学内に部外者が入れないセキュリティがあります。」

 「そもそも過去人である俺たちを連れて回る事自体、リスクが高い。」

 真白さんは唸りながら思考している。

 「私は別に問題ないと思います。調べればタイムスリップに関与していない事が分かりますから。ただ、四季がどうなるか分からない以上、下手な手は打てないです。」

 「色紙さんが来れないなら…、会いたい人が居るんだけど。」

 そう提案した途端、真白さんの背後に人影が現れる。

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