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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生冬
105/125

3年前のこと

 前を歩いていた三城君とめぐにゃんから通信が途絶えた。

 「四季、ヤバいんじゃない?」

 美夜が不安そうな顔でこちらを見る。

 「急ごう。」

 出来るだけ早く走り、2人が歩いた道を続く。

 心臓が酷く脈打ち、嫌な緊張を感じる。冷や汗が背を伝い、拭いきれない不安感に襲われる。

 「4人居る。十字路。右2人やって。」

 前を走る美夜が声を掛けてくる。

 美夜は常時狂態化している。気配の察知は誰よりも早く、探索に優れている。

 本気で駆け出し、十字路に飛び出す。

 そこの光景を見て全てを察した。

 タイムマシンがある。

 その後方、2人の人影が見える。私の顔を見て驚愕している。

 容赦せず、1人目の顔面に拳を入れる。鼻の折れる音が響き、血が溢れ、意識を失う。

 2人目は逃げ出そうと背を向けたため、すぐさま髪を掴み後ろに引き倒す。そのまま鳩尾を踏み抜く。肋が折れ、横隔膜が圧迫されまともに息ができなくなる。

 いつもより、手加減が出来なかった。

 落ち着くために大きく息を吸って吐く。

 「殺した?」

 「まだ生きてる。」

 事情を察して少し暗い顔をする。

 「2人は未来に飛ばされたんだね。」

 首肯する。

 タイムマシンの設定を調べて、どの時代に飛ばされたのかを調べる。機械の一部がセンサーパネルになっており、指をかざすとホログラムが浮き上がる。設定を確認し、転送設定を確かめる。どこから漏れたのか、転送設定は私の身長体重を設定している。時代は、

 「3年前か。」

 美夜が呟く。後ろから私の操作を覗き込んでいたようだ。

 この時代から3年前ではなく、最未来から3年前、つまり私達がPP育成校に通っていた2年生の冬だ。しかも、この日付はまずい。

 「未来に行っても、残党の待ち伏せがあるとみて間違いないね。2人は四季の設定で飛ばされてるから、ピンポイントの時間には飛んでないんじゃないかな。少し前か少し後の時間の周辺に飛んでみて様子見してみる?」

 美夜の言う通り、それが最善だ。しかし。

 「私はいけない。」

 「何で?」

 美夜は不思議そうな顔をするが、すぐに事情があると察したらしい。隠したい話だったが、やむを得ない。

 「私はその時代に既に2回タイムスリップしてる。もう一回行ったら死ぬ。」

 「その時代に2回も?」

 美夜が訝しむ。

 それもそうだ。担当する時代でもない時代にタイムスリップするのは、違法行為だ。

 「…そうすると待ち伏せじゃなくてタイムスリップ自体が殺しの手段だったわけだ。」

 その通り。正直、この方法取られるとこちらは打つ手を無くしてしまう。

 「それじゃあ、2人がタイムスリップさせられる前に戻って引き止める?」

 過去改変になるが、そもそも2人がタイムスリップこと自体が過去改変だ。それを阻止する事は問題ない。2人にとってはそれが良いだろう。しかし、これもまた問題がある。

 「もしそれに失敗したらその時間にはタイムスリップできなくなる。慎重にいきたい。それは最終手段にしたい。」

 「一体何をやらかしたの?」

 「別にやらかしたわけじゃない。」

 「なんの用事があったわけ?」

 今聞かないと一生聞き出す機会がないと思ったのかもしれない。それに、私はもう隠すのに疲れた。

 「言おうとは思ってた。けど、これを聞いたら美夜も…。」

 そこまで言って、そんなことを気する人じゃないと気付く。

 「美々にも助けてもらおう。そして、2人に話すよ。3年前のことを。」

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