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ハルイチバン  作者: 柳瀬
二年生冬
102/125

作戦開始?

 色紙さんの制服を借りて着た。その上には色紙さんのコート、マフラーをしている。頭にはカツラ、顔はマスクで隠し目元だけ出している。

 歩道を歩きながら、もう既に陽が傾きあと少しで夜になってしまうなと思う。

 街灯の明かりは通りをずっと照らし、車が通る度冷たい風が吹き抜ける。

 色紙さんから借りたコートはハーフコートのようで、腰より少し長いが無防備な脚までは守れない。

 「冬のスカートがこんなに寒いとは思わなかった。」

 「何事も経験ですよ、先輩。」

 めぐにゃんは俺のフル装備を見てから、ずっとニヤニヤしている。あんまり浮かれたような態度にならない彼女が、こんなにも楽しそうなのは面白いが、心中穏やかじゃない。

 放課後に学校の格技場で色紙さんから制服一式を交換して、下校中を装っている。足にはストッキングを初めて履いたが気持ちが悪い。それにかなり太くないか?

 「これ、友達に会ったらかなりまずい。」

 小声でめぐにゃんに話しかける。

 「先輩のですか?色紙さんのですか?」

 「どっちも。」

 「まあ、そうですね。私がフォローしますよ。」

 あまり期待できないなと思いながら首肯する。

 格技場には鹿折さんも来ていた。近寄らなきゃバレないと言っていたが、そもそも恥ずかしいし知り合いに会ったらと考えると緊張感が張り詰める。

 早く作戦を終わらせてしまいたい。

 基本的に、色紙さんの家に向かうように歩く。その途中で見据の進会の残党がついてくるかを、後方から色紙さんと鹿折さんが見張る。

 もし、残党が現れたらとある雑居ビルの間の路地裏に誘い込む。本来であれば通り抜ける事ができるが狭く人の寄り付かない裏路地をわざと通り、そこをついてきた際に裏路地の前後を色紙さんと鹿折さんが挟む。逃げられないように挟み撃ちをした後は、2人に任せる。

 現れないようであれば、一旦色紙さんの家で落ち合い、また作戦会議だ。

 スマートフォンが震え、いつもの癖でポケットを探ろうとするがスカートである上手くいかない。何度かポケットの位置を確認して、ようやく取り出して通知を見る。

 “作戦決決行”

 めぐにゃんもスマートフォンを見ていて、目を合わせ小さく頷いて歩き出す。

 校舎を出る時は夕日が差していた。それが今は暗く、行き交う車はヘッドライトと付けている。時折、やけに眩しい車とすれ違い、自分の姿を照らされている気がして、何となく身を隠したくなる。

 陽が沈み、一層寒さを感じる。できるだけ早く暖かい所に行きたいが、めぐにゃんと歩調を合わせるため、歩幅を短く忙しなく動くようにする。

 決行の場所の路地はまだ先だ。慣れた道を外れ、あまり通らない道へ抜ける。

 住宅街のようで、人通りは少ない。車の滅多に通らないような幅員で、一定距離で街灯が地面を照らしている。

 歩いている人も少なく、今は買い物帰りの主婦らしき女性が1人、向こうからやって来ているだけだ。

 「先輩は感じます?」

 残党の存在だろう。

 「確かはないけど、見られてる。3人かな。この通りにはまだ来てない。」

 「何で分かるんですか?」

 「分からん。感じるんだ。」

 「そうですか。」

 拗ねたように返事をする。

 京都での一件以来、自身の狂態化がより異常になった。超再生もそうだが、視線を感じる感覚がより鋭くなった。最初は、人の目線がどこを見ているかやけに気になるなと思っていたが、背後から俺に話しかけようとしている友達の存在が鮮明に分かるようになった。背中に目が付いてるかのような感覚で、距離が離れるほど精度が下がる。

 不意に、通りの正面から視線を感じる。相変わらず背後からも視線を感じる。

 挟まれている?

 想定外の自体だが、迂闊に動いて残党の策略に嵌るのは避けたい。一旦、色紙さんと情報共有した方が良い。

 「前にもいる。」

 めぐにゃんに小声で伝える。察したようで、スマートフォンを取り出し、色紙さんにメッセージを送る。作戦中は、色紙さんのフリをしている俺は電話連絡をしない事にしている。2人で帰っているのに、1人が突然電話するのは不自然だし、PPに応援を要請していると思われるかもしれないからだ。何かあった時の対応は、めぐにゃんがメッセージを送る事になっている。

 「どのくらい先ですか?」

 「多分100メートル先の十字路の左右に居る。4人かな。」

 素早くメッセージを送る。

 一歩ずつ、敵に近付いて行く。

 めぐにゃんがこちらに身を寄せ、小声で色紙さんからのメッセージを伝える。

 「“正面の視線が残党か、CTTか、それ以外か分からないか?”だそうです。」

 正面の十字路を睨むように見つめ、意識を集中させるが、実際にこちらを見てるかいないかくらいしか分からず、そこから推論を立てるにも情報が少なすぎる。

 「わからない。」

 端的に伝える。

 「“勝てそうなら正面を2人で相手して。戦闘が始ったら私達は後ろの倒す。”だそうです。」

 幸い正面の奴らは強いとは感じない。

 「十字路左の奴らを頼む。多分2人。」

 「分かりました。」

 覚悟を決めて、十字路へ向かう。

 全身を狂態化させ、十字路へ踏み込み右側を向く。

 攻撃を予測していたが、視線の主は数メートル後ろに後退していた。やはり2人いたが、そいつらの前には謎の機械が置かれている。

 めぐにゃんの方を振り返るが、同様に同じ機械が置かれている。

 路地を塞ぐように、俺とめぐにゃんを挟むように機械が据えられている。大きさは軽自動車の正面くらい、全体は黒く金属的な光沢と照明があるらしく青白い光を放っている。

 京都で保呂羽さんから聞いた話を思い出した。いくら強い色紙さんや保呂羽さんも、大掛かりな作戦、装置で死ぬ。これは、まさにその装置ではないか。仕組みや効果は分からないが、ここに誘い込み起動することで必殺となるのではないか。

 一般人がいるにも関わらず、色紙四季を殺すという目標を必ず達成するために強行したのか。

 「逃げ…。」

 めぐにゃんにそう言った途端、眩い光が機械から輝く目を閉じる。前後、上下、方向感覚を全て失い立てなくなり、その場に跪く。

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