エピローグ
この世は不公平だ。
高校の帰り道、電車に揺られていると、俺、中野優真は憂愁に包まれつつあった。
窓からは夕日が差し込み、時折目の前が眩しく照らされて一瞬だけ視界を奪われる。
というか、夕日に照らされなくても、さっきから眩しい…!
目の前には、手を繋ぎながらじゃれあっている他校生カップルの姿。
----なーに、公共の場でイチャイチャしてんだよ…。
ため息と共にガヤを入れ、目線を左に逸らす。
すると、大学生と見られる男性が連れの女性の肩に手を回し、女性は頬を赤らめていた。----大学生も高校生とやることは変わんねえな。
やや軽蔑した目で見ていると、『ガタン!』と電車が揺れ、隣に座って寝ていた女子高生が体制を崩し、俺にもたれかかってきた。
「あ、すいません…!」
彼女は、俺の肩に頭をぶつけるや否やすぐに目を覚まし、謝ってくる。
----ちょっと可愛い…。
この子になら、肩くらい貸してあげてもいいかなと思ったその時、彼女の持っていたスマホの画面が見え、『じゃあ、この後〇〇駅前のスタバで待ち合わせね』
すぐに彼氏持ちだと想像できた。
----この子もいるんかい!
電車に乗車している人数は十人に満たないところ、その半分はカップルという内訳。
なんなの? やけに恋人持ち多くない? なんで俺はいないの?
もう一度言おう。この世は不公平である。
皆が幸せそうに微笑んでいるのをよそに、俺はというと、自らの人生を憂い、自己嫌悪に陥っていた。
気を紛らわすために、鞄を漁りスマホを取り出す。
残念ながら、というか当たり前ながら、俺の携帯には誰からの連絡もない。
人生で感じる幸せは、プラスマイナスゼロというが、そんな愚説を唱えたヤツに対してこれでもかとビンタしてやりたい。
我が人生の幸福度は、今のところマイナス続き。底なし沼のようにズブズブと深部へ沈んでいる。
「いいことねえかな…」
分かっている。そういうことを言うヤツに限って、幸運が降りてこないことなどは。