302 サッカー部狂想曲(その12)
「だって紳士に見えなかっただろ」
このときボクは『紳士』というのが『真摯』だと聞こえた
そして思わず納得した
話を少し戻そうか
ボクは小川
中学一年生
サッカー部だ
ウチの部のキャプテンは同じクラスの飯田に冷たい
サッカー部の仲間が真夏 ~いや実際に暑苦しいくらいに面倒がいいんだよ~ だとすると
飯田へは真冬だ
それも氷柱ができるくらい?
あるいは雪で家が埋まるくらい?
もう冷たい冷たい
いや実際に大人でもココまで冷たくしているのを見たことがない
親や先生は厳しいけど「こらっ!」と怒って終わり
それに比べると厳しいなんてもんじゃない
あ、そういえばアレがあった
テレビのドラマの『積み木崩し』
家庭内暴力を扱った内容だった
いやマジであれは酷かった
木刀を振りまわして部屋の中が滅茶苦茶だった
大事なことなので二度言う
窓ガラスが割れて
テレビが床に落ちて
壁に穴が開いていて
動かせる小物はすべて床の上
あと親も床に倒れていたっけ
娘に木刀でボッコボコにされて
部屋ってここまで酷くなるのか!?
と驚いた
一体だれがあの部屋を片付けると思っているんだ
とも思ったね
さらに驚いたのが実話をもとにしたドラマだそうだ
原作本があるらしい
有名な俳優が書いたらしい
とまあそれくらい飯田に冷たかったと思ってくれ
・・・積み木崩しはいまだかつてない悪意という意味で唯一無二で、今後変動する気配がないのが恐ろしいよな
とまあある意味の究極に達していたから
「なあなんで飯田を目の敵にするんだ」
とキャプテンに聞いてみた
一体どんな返事が来るのか愉しみでワクワクしたのは秘密だ
怖さ半分、愉しみ半分ってところだね
しかしどんな返事がくるか想像もできないところが凄いよな
・・・キャプテンは本当に人間か?と思っていたりもする
話を戻そう
なんで?って聞くのは当然だ
聞くは一時の恥
聞かぬは一生の恥
そういうこと
・・・ちなみに上の格言はいつもキャプテンが言っていたりする
うちのキャプテンは一体いくつもの引き出しがあるのか聞いてみたいものだ
時々だけど、うちの親よりも凄いんじゃないかなと思うこともある
ホントだよ?
ウチの親や学校の先生、あと近所の友達の親と片っ端から思い出してみてもうちのキャプテンを超えた人がいない
いや同レベルの大人も見たことがない
・・・ちょっと大人ってなさけなくね?
もうちょっと頑張ってみてもいいんじゃね?
そう思ったのは秘密だ
という訳で聞いてみた訳だ
それが冒頭のシーンだ
思わず納得したね
座布団一枚!
そう思ったね
・・・親が笑点好きなんだよ




