278 掛川学院との練習試合(その22)~FW上杉~
「一度で駄目なら二度
二度で駄目なら三度
いえ勝つまでやるのです」
木下が小川に向かってそんなことを言っていた
単細胞の小川にとっては神の言葉だっただろう
目をキラキラさせていたからな
・・・小学校の監督よりも小川の扱いが上手だと言えるかもしれん
おかげで小川は
「さあ(ゴールが決まるまで)やるぞ!」
とやる気満々だった
まあその分、同じFWの上杉に負担がかかるんだけどな
木下からは
「相手が何回もったか調べておいてくれ」
と言われた
なんでもあるチームの話だが
「ほぼ勝った」
と確信した途端、集中力を欠いて試合終了の1分前にゴールされることがあるそうだ
それも一度や二度ではない
大事な試合だと特にその傾向が多いんだそうだ
おかげで
「ロスタイム(のちのアディッショナルタイム)で必ず負けるチーム」
と言われているらしい
はて?
そんなサッカーチームは聞いたことがないんだが?
だからといって木下が嘘言っているようにも見えない
正直なところ半信半疑だった
だから一度、練習試合で同じ技を何度もしてみたんだ
一度目は通用しなかった
二度目も同じだった
だが三度目で相手FWを抜き去ることができた
・・・辛抱しなさすぎだろうと言いたい
「まあ中学生だからな」
とは木下の談
・・・なるほど上杉もそう見られているのか
木下の闇を見た気分だった
と言う訳で相手が何回まで持つかというのを調べる係となった
まあ頭脳担当だから当然なのかもしれない
・・・木下がいるのに頭脳担当なんておこがましいんだが仕方がない
なにせキャプテン直々の御指名だからな
ちなみに同じことを部活の練習でキャプテンからやられたことがある
・・・人間同じ行動を何度もするのに耐えられない動物だというのが良く判った
いや真面目な話
三度目でイライラした
「この根性悪!」って心の底から思ったね
なにせ
「身体に覚えるまで」
と言って9回くらいやられたからな
これで怒らなければ人間ではないと声を大にして言いたい
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この作品はフィクションです
作中のチームに御心当たりがあっても気のせいです
なにせ作り話しですから
・・・私は心の底からサッカーを愛していますよ?
相手チームの選手の怪我の対処のため自らボールを外に蹴りだすのを見ると特にそう思います




