267 掛川学院との練習試合(その11)
頭脳担当のFWの斎藤目線です
---------------------------------------------
相手チームのFWのエースに抜かれた
だがほんのわずかな時間ではあるが足止めできることを確認した
・・・先ほど抜かれたのは自分の油断であることに気づいて落ち込んだ
まあ試合開始直後というのは一番気が緩んでいるもんだから?
木下の慰めが聞こえるようだった
いや多分試合後の反省会で言われるだろう
そこの所は容赦がないんだようちの木下
事実は事実
サッカーは結果がすべて
木下の持論だ
やさしい顔して失敗を容赦なく指摘する
正直気が重い
まあ一度注意したら後には引かないからそこは救いだ
・・・もっとも口に出さないだけで絶対に忘れないだろうがな
でも一方で褒められるのも判っている
斎藤が考えた攻防一体の『牙突』が上手くいったからだ
あれはサッカー部ができてすぐのことだった
木下からは
「技を作って名前を付けよう」
と言われた
攻撃でも守備でも些細なテクニックを思いついたら実際に作ってみよう
そして完成したら名前を付けてみよう
そういうことらしい
ホントかいな?
正直な感想だ
他のメンツも半信半疑だった
でも木下は胸を張って言った
昔、新撰組という自警団に変な隊長がいたらしい
刀というのは振りまわすものという常識を覆すように『突き』を突きつめたそうだ
・・・突きを突きつめる(苦笑)
なんでも普通の三倍の速度で繰り出す突きに
『牙突』
という名前を付けて悦に入っていたそうだ
おまけに徳川幕府に立て付く謀反人達をそれで成敗しまくったとか
・・・「初めて聞いた」と言ったら「現在出版されている書物に書かれていないだけじゃないか」と心底呆れた顔をされたのは黒歴史だ
なんで知っている!、と言いたい
なんでも
通常の『牙突』を一式
対空戦用の弐式
迎撃用の参式
大刀の無効圏内に相手が入ってきた時用の接近戦用の零式
とイロイロ名前をつけていたそうだ
「いや~いいね、名付けはリリンの生んだ文化の極みだよ」
などと訳の判らんことを木下は言っていたがここは聞こえなかったフリをした
問い詰めると頭がおかしくなりそうな気がするからな
まあそんな訳でサッカー部のメンバーは自分独自の技をつくることになった
斎藤はというと
相手に向かって手加減なしに突撃してボールを奪う『牙突一式』と
突撃を相手の直前で右足を踏ん張って停止するとともに踏ん張る時にボールの右側を踏みつけて左側にボールを転がすとともに、踏ん張った右足を軸に後ろ向きに右回転しつつボールを追うマルセイユルーレットもどきの『牙突二式』
がなんとかできたくらいだ
ちなみに参式と四式は未完成
残念だよ
・・・だいぶ木下の影響を受けているような気がする
でも牙突一式が少し通用したというのは朗報だ
なにせ掛川学院のFWといったら全国レベルなんだ
ソレに通用するとなれば未来は明るい
それにまだ弐式が残っている
木下が
「試合で通用して初めて完成したと言える」
というのが判ったような気がする
あと
「実際に使ってみて不具合を抽出し改良してこそ技と言える」
とも言っていたな
・・・改良したら技の後ろに『(改)』を入れようと言っていたのは聞こえなかったフリをした
だってダサいじゃん




