265 掛川学院との練習試合(その9)
上杉は混乱していた
なにせ相手チームのFWのドリブルを止められたからである
え?
なに?
止めちゃったけどいいの?!
正直な感想だった
相手チームのカケルを知ったのは小学校6年生の時だった
地区内に出来た公営の運動場のこけら落としのために親善試合が行われた
要は周辺の学校のサッカー部を読んで試合をしよう、ということである
カケルのいた小学校は全国レベルの優勝校
そりゃちょっと遠くても呼ばれるはな!、と納得するほどだ
・・・昭和の時代というのはサッカーにとって冬の時代なのだからこの知名度はある意味チートなのである
試合したのは上杉のいた小学校
強豪校と試合できて良かったと言うべきか?
ボロボロにされたので残念だったと言うべきか?
どっちだろうな
当時はやらなければ良かったと思った
だが今ではやってよかったと思っている
上を知ると言うことは大事だからな
まあ一生敵わないと思ったのは事実だ
・・・まさか数年で覆るとは思ってみなかったな
のちに木下に聞いたらこう言った
「サッカーは団体戦だぞ?」
まあそうだけどな
いやそのつもりで練習をしていたけどな
ここまで効果があるとは思ってもみなかったんだよ!
・・・三人がかりで、だけどな
木下曰く
「たった一人で突撃できる人間は全世界で5人くらいだ」
だからオレ達の前にはそんなできる人間は登場しない
安心してくれていいんだぞ
と言うことだった
・・・なにその具体的な数字、と思ったのは秘密だ
木下の言う事は微妙に具体的なんだよな
他には
「13年早いわ!」
だとかがある
・・・木下は中間テストの問題を全科目完璧に予想できるそうだ
本人が言っていた
そんでもって100点マシーンと化していたりする
おかげでサッカー関係の奇妙な言動を完全否定することは難しい
いや否定するのはできるよ?
「で?」
と冷たい目で見られるけどな
どこの誰かとは言わないがそう言われた人間がいた
そんでもって固まっていたからな
君子危うきに近寄らず
木下から身体で教えて貰ったっけな
だから余計なことは言わずに黙っていることにした
人間知らない方が幸せなことがあるからな
そういえばこの前の金曜の夜にTVで外国の映画をやっていた
教師が
「戦争が始まったのは?」
とか
「~をした人物の名前は?」
と質問すると生徒が間髪入れず即座に回答していたのを思い出す
・・・たしか答えていたのは悪魔の子だったような気がする




