216 小学校最後の試合 ~第五試合前半戦(その1)~
「アイツを出すなっ!」
試合前からなにやら揉めていた
どうやら対戦相手の監督と大会役員が揉めているらしい
やれやれどうして大人というのは喧嘩をするんだろうね
子供の手本となるように穏便に話し合いで解決して貰いたいものだ
「こいつだ、こいつ!」
いきなり対戦相手の監督がオレを指差してきた
え?
オレ?!
相手の監督が言うには
「GKがいると試合にならない」
だそうだ
鉄壁のゴールのせいで今大会1点も与えていない
そんな非常識なやつが守るおかげで試合になっていない
大会は子供の教育の一環なんだから同じレベルでの対戦が望ましい
だからオレを除外しろ
ということらしい
どこのカードの特殊効果だよ、と言いたい
除外されて本デュエルの間は復帰できません
そんなのは某カードゲームの中だけだ
・・・いや実際に見たときはテキストを作った人間の頭がおかしいんじゃないかと思ったね
まあ使ったのが社長だから許されるんだけどな
他の人間なら石を投げられていたと思うぞ?
当然相手の監督は社長じゃない
だから大会役員もクレーマー扱いだ
・・・世の中おかしな人間が多いよな
大体サッカーは紳士のスポーツだ
もう少し人としてのレベルを上げて欲しいものだ
たとえるなら元の世界のオレの先輩?
あの人は凄かった
人としての尊敬できた
一度考えて見るといい
胸を張って人として尊敬していると言える人がいるかどうか
・・・いないっしょ?
だからサッカーをするといいぞ?
紳士のスポーツだからな
え?
何回も言うな?
何度言っても判って貰えないから言っているんだよ!
だってほら目の前の監督とか、監督とか、監督とか
・・・人として終わっているな
しかしそこまで言われるなら仕方がない
喜んで出てやろうじゃないか、試合
嫌がらせこそわが人生
そう言った悪魔がいた
同感だな!
「参加することに意義があるのではないでしょうか?」
下手に出てみた
必要があれば頭だって下げちゃうぞ
元社畜だからな
頭を下げるのはプライスレスだ
そんなことで勝てるなら楽勝だ
相手の嫌がる顔が見れるならば安いものだと言いたい
だから
「えっ?出られないんですか・・・」
伏し目がちにオドオドしてみた
おかしなもので人間っていうのは上から押さえつけられると不利になると判っていても反抗したくなるものなんだよ
逆に下手に出ると鷹揚になる
まあそう言うこと
あと
『ボク子供だからわかんないや』
という小学生を思い出しながら演技をしてみた
・・・あのあざとさはぜひ見習いたいものだ
目を伏せて落胆していますという感じにしてみた
目だけを動かしてチラ見すると大会役員が同情しているように見えた
よっしゃ~
思わず心の中で叫んだオレは悪くない
出る杭は打たれるのが日本というものだ
だから下手に出るのがポイントなんだよ
そういう意味でも相手の監督は選択を間違えた
・・・まあ所詮は昭和の時代の監督
正解できることは少ない
言っておくが大人だからと言って正しいとは限らないんだよ
子供は素直だから大人は正しいと思っている
でもそれは間違いだ
大人になると判る
大人も子供と対して変わらない
だって自殺とかひきこもりとか無抵抗の人間を殺すとかがゴロゴロしているからな
・・・本当に酷いな




