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知らされる新事実

 俺とアシュは教会に向かうために再び人でごった返す街を歩いていたが……


「なんだろう……さっきから同じところを何往復もしている気がするんだが……なあ、アシュ。なんか俺、同じようなところばっか歩いてないか?」


「くろんさっきからずっとこのおみずさんのまわりあるいてるよー」


 俺が尋ねるとアシュは無邪気な笑みをしながらそう答えてくる。

 ふと横を見ると、半径5メートル程のそこそこ大きい噴水があるが、まさかここの周りをずっと歩いていたとは……

 アシュにとっては同じところを何往復もしようが、教会に行こうが、お散歩には変わりはないのかもしれないが……

 俺はもっと早くアシュに聞くべきだったと反省し、ここから先はアシュにナビゲートをしてもらう事にした。


「くろん、そっちはがらがらぼうだよ?」


「……っ! 俺の方向感覚はいったいどうなってんだよぉ……」


 俺は自分の恐ろしい程の方向感覚の無さに気づき、悲しみを覚えながらも、幼い女の子に道案内されるのだった。


----


 アシュに道案内を頼んで30分位はたっただろうか? 通行人などに教会の場所を尋ねながらも、道に迷うことはなく、なんとか教会につくことは出来た。


「立派な教会だなぁ……」


 俺たちの目の前には世界遺産の様な教会まではいかないが、縦横50メートルの土地はあるようなゴシック調の立派な教会が建っていた。少し離れて見ると、小さな城のようにも見える。


 --ドゴン--


 俺は重たい扉を押し開け、教会の中に入った。中には参拝者と思われる、老人の夫婦が椅子に腰をかけてるだけで、他の参拝者はいないようだ。どんなに立派な教会でも、イベントなどがある時以外は人はあまり来ないものなのかもしれない。

 俺はクラッドって人がどこかにいるかもしれない為、椅子に座ってる老夫婦に話を聞くことにした。


「クラッドって人にお会いしたくてここまで来たのですが、今日は不在なのでしょうか?」


「クラッドさんに会いに来たのかね? あの方なら2階の部屋におられると思いますよ」


 俺たちは老夫婦に説明された通り、入り口のすぐ横にあった階段を上り、ギャラリーのような細い通路を通る。階段は左右対称に反対にも付いていた為、構造はよくある体育館のようにも思える。

 俺はアシュを肩から下ろし、体育館と比べると少々距離の長いギャラリーを歩く。ギャラリーからは教会を一望でき、壁や天井のゴシック調の繊細な細工を見ることができ、少々長い距離でも飽きることは無かった。

 ギャラリーを歩き終えた俺たちは体育館でいうと放送席や道具保管室に位置する部屋の前まで行き、扉を3回ノックした。

 

「何か御用ですか?」


 部屋の奥から少し掠れ気味の男の声がし、扉が開いた。中からは村の教会の神父と同じような配色とデザインの服を来た白い髭をはやした60代くらいの男が出てきた。


「ベネット村のスコットさんからのご紹介で貴方にお話がしたいと思い、訪ねたのですが……」


「ほぉー、なるほど。スコットは私の友人です。せっかく遠い所こられたのですからお話でも聞きましょう」


 ベネット村の神父は良くなかったが、この人は優しそうな人だ。安心した俺はクラッドさんに机まで案内され席に座らせてもらう。アシュも隣の椅子に座ろうとしてたが、背の高さが足りず座りにくそうだったため、俺の膝の上に座らせてあげる。


「では、お話を聞く前にお二人のお名前から聞いてもよろしいですかな?」


「はい、俺はクロンでこの娘はアシュです」


「では、クロンさん、アシュさんよろしくお願いしますね」


「よろしくおねがいしまぁすぅ」


 スコットのせいでアシュが神父を怖がったらどうしようかと思っていたが、にこにこしながら慣れない敬語で挨拶している様子を見ると問題ないようだ。


「よろしくお願いしますねアシュさん。……ところで、お話というのはいったい……」


 俺はクラッドさんに今までの経緯を話した。


「……そうですか……それはそれは、嘸ご大変な思いをされましたね……長い話になりそうなので、飲み物でも入れてきましょう。そこら辺にある本でも読んで少しお待ちください」


 そう言うと、クラッドさんは奥の部屋へと姿を消した。やはり、親切そうな人だ。

 俺は言われた通り机の横に積み上げられた本来ならを1冊手に取った。


(どれどれ……『マナの仕組み』か。マナについては知りたいことが沢山あるからこれでも読もうか…)


 思い返せば記憶喪失してから初めてみる文字だが、理解できるようだ。俺は本の冒頭から読むことにした。


『マナとは、未だに国立魔道科学院でも解明されていない謎の多い“モノ“である。マナは血の通う生物ならどの生物も持っており、量は種族や個体によって様々である。主にマナは魔法を使う時にしようするものだが、最新の研究では、魔法の域を越えた"神の魔法"を使うことができるという研究者もいる。ただ今言えることは、マナにはまだ謎も多く、この先明らかになることは多いだろう』


 丁度前書きを読み終えた所にクラッドさんが飲み物を持って帰ってきた。しかし、この本のおかげでマナに付いては少し理解出来た気がする。"神の魔法"とは、なんだろう? 気になることはまだ沢山あるが今はクラッドさんに俺たちの話を聞く方が優先すべき事だろう。


「クロンさんには、ニュル地方の発酵茶葉の紅茶です。アシュさんにはクイの果実のジュースです」


「申し訳ありません……では、せっかくなんで……って! 美味しい!」


 この世界には美味しいものしか無いのだろうか? この紅茶は独特の渋みと香りが素晴らしいハーモニーを奏でている。アシュも横で喉がかわいていたのか、『うわぁっ!』と言って美味しそうにストローのようなもので飲んでいる。


「喜んでいただけて光栄です。さっそくお話の方に入っていきたいのですが、あなた方のマナを拝見させてもらってもよろしいかな?」


 俺が『はい』と言うとクラッドさんはおれの額に手を当てて目をつむった。


「ふむふむ……クロンさんは人間族のようですが、ついこの間マナのリミットオーバーをしたようです。」


「リミットオーバーとは?」


「リミットオーバーというのは、自身のマナの量を一時的に無理やり増幅させることです。使うことで高魔力を要する魔法でも使うことが出来ますが、副作用が大きい為、まず使うことはほぼないのです。恐らくクロンさんは何らかの理由でリミットオーバーを発動させ、その副作用に寄って記憶喪失を起こしたのかも知れません」


「なんで俺はそんな事したんだ……そこはわかりませんか!?」


「申し訳ないが、私はそれ以上はわかりませんな……」


 記憶喪失を起こしたおおよその理由はわかったが、なぜ俺はそんな捨て身な事をしたのだろう? 命の危機でもあったのだろうか? いや、その前にもしクラッドさんが言っていることが真実であるなら俺が元いた世界の推理が覆ることになる。いったい何が俺にとっての真実なのだろうか……

 分からないことはたくさんあるが、アシュの結果次第では何かわかるかもしれない。


「わかりました……次はアシュの事も見てやってください」


「お気持ちお察しします……では、アシュさん、少し失礼致します」


 そう言うとクラッドさんはおれと同じようにアシュの額に手を当てて目をつむる。


「…………っ!? なんと……まさか……!!」


 クラッドさんは少し考えていたかと思うと、眉をあげて驚いている。いったいなんだと言うんだ。


「アシュがどうかしたのですか?」


「……はい……このマナはきっと……恐らくアシュさんはこの世界でも、最も謎の多い種族であるボニタスの種族だと思われます……」








 いったいアシュの種族には何が隠されているのか!? 次回もよろしくお願いします!

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