ここは異世界なのかもしれない
いつも短くなってしまっているため、今回は文字数気持ち多めです。
よっぽどよく眠っていたのか、部屋にかかっている針時計は昼の時間を指している。
俺は重い体をベットから起こしリビングまで行く。
「よく眠れたようで」
「村長おはようございます」
「おはぁよぉー」
「おお、アシュも起きてたのか。おはよう」
「昼ご飯を食べ終えたら、お2人にこの村を散歩でもしながら説明しましょう」
確かに俺はまだこの村を知らない。酒屋は門のすぐ近くにあったし、村長の家まではケニーの案内を忘れないように必死だったため、村の様子などはよく見れていなかった。
俺たちは昼ご飯を食べ終え、村長とと共に外に出た。
「まず、村の地図をお渡ししましょう」
地図を見ると村長の家、すなわち今いるところは村の真ん中に位置しており、ここを中心に円状に村は広がっているようだ。
「とりあえず教会まで行ってみましょう」
村長の後を俺とアシュはついていく。
ゆっくりと村を眺めていると、静かなものだと思う。さっきから見かける人はほとんどが高齢の方だ。
「この村は若い人はあまりいないのですか?」
「最近は高齢化が進んでおりましてね……この村では仕事もあまり無いせいか、若いものは皆城下の町やここから隣に位置するベネヴァの街に行くのですよ……」
この村でも過疎化が進んでいるのだろうか? 若い人は皆刺激や職業を求めて街へと出ていく。悲しいことでもあるが気持ちも分からなくもない。
「それはお気の毒です……ところでベネヴァという街にはどんな職業を求めて若者は行くのですか?」
「なんせベネヴァは物の流通の盛んな街ですので商業をするために行く者が多いですが、冒険者の申請を取りに行く者も多いのですよ」
冒険者? 確かに冒険家は職業としてはあるがそんなに大勢の若者が着くような仕事では無いはずだが……
「冒険者とは? そんなに多くの若者が、冒険者を目指すものなのですか?」
「ええ……最近はモンスターの襲撃が王都の街でも多くなってきていると聞きます。ですので冒険者の受容が高いのですよ」
ん? なにかおかしくはないか?
モンスター? 王都? いくら記憶喪失をしていたとしてもそんな情報は俺の頭には無い。
「村長、ここはなんという国ですか!?」
「どうされたのですかな? そんな大声を挙げなくとも……ここはゲールシュタット王国のベネヴァの郊外に位置する小さな村、ベネット村ですぞ」
やはり、おかしい。この村に来てから様々な違和感があったが単なる記憶喪失によるものでは無いようだ。
俺の知っている世界は人を襲う鳥もいなければ王都に攻め入る生物もいない。魔法なんてものも迷信だ。また、ゲールシュタット王国なんて聞いたこともない。
俺の推理が正しかったら記憶喪失をする前と今では違う世界という可能性もあるだろう。
ここは異世界なのかもしれない……。
「どうかされましたかな?」
気がつくと俺は立ち止まってしまっていた。
「だいじょーぶ?」
アシュも少し不安そうな顔をしている。
「いえ、少し考え事をしていただけです」
「それなら良いのですが……もう教会につきましたぞ」
目の前にはキリスト教の教会と同じ様な造りの建物があった。
中に入ると椅子が並んでおり、中央に祭壇があるという外見通りの造りであったが、キリスト教ならあるはずの十字架や聖母像などは見かけられない。
「ここはなんという宗教の教会ですか?」
「ここはパーン教という半獣神さまを祀っている教会でですぞ。神体であるファウヌス様は我々を魔物から守ってくれている神様なのじゃよ」
聞き覚えは無いが、この世界では人々の生活がモンスターからの脅威に脅かされているため、その様な宗教が存在してもおかしくない。
だが、俺の記憶ではギリシア神話にファウヌスという半獣神の神として存在していたはずだ。もし、本当にここが異世界ならこんな偶然あるのだろうか?偶然かもしれないが、どちらにせよまだ結果を出すには早いだろう。
「しかし村長、なんで教会まで俺たちを連れてきたのですか?」
「それはここの神父がわしを除くとこの村で1番物知りだからじゃよ。貴殿たちの事もなにかわかるかもしれんからの」
「でもこの教会には俺たち以外いないようにみえますが……」
--バンッ--
俺が言葉を続けようとすると、勢いよく教会の扉を男が開けた。見た目は村長より少し若いくらいの顔を真っ赤にした男だ。青を基調とした聖職者のような服を着ているため、恐らくこの男がこの教会の神父なのだろう。
「おぉぅ村長ぅ〜来るならまえもっていってくれよぉぉ〜」
(うぉっ! 酒くさっ! まさかこいつ神父の癖に、昼間から酒飲んでんじゃねーか?)
「ん〜? 今日は客も連れてきたのかぁ〜?」
そう言うと神父は俺とアシュを舐めるように見てきた。
『ひっ……』
よっぽど怖かったのか、アシュは俺の後ろに隠れて今にも泣きそうな顔をしている。
「これこれスコット、聖職者であるお前が昼間から酒を飲んだり、子供を怖がらせてはいかんじゃろ。そんなんじゃからこの間もケンターキーが村に入ろうとしてくるんじゃ!」
村長がなれているように神父に注意している。この様子ではスコットと呼ばれたこの神父はいつもこんな調子なのだろう。
「すまんなぁ〜嬢ちゃん達ぃ〜」
スコットはまたしても舐めるようアシュの顔を見た。もうアシュは恐怖心でいっぱいになったのか、俺の足に顔を埋めてしまった。この男はお世辞にも性格は良いとは言えないだろう。
「まぁ〜こんな俺に会いに来るってことぁ〜なにか聞きたいことがあるんだろぉ?」
「少し困った事がおうての……」
村長はスコットに俺とアシュのことを説明した。
「ふしぎなこともあるもんだねぇ〜、でも、申し訳ないけどぉわからないなぁ〜」
「ならもうわしらは帰るぞ」
どうやら村長もこの男と長いしたくはないらしい。俺たちが帰ろうとするとスコットはなにか言い残したのか、『そ〜いや〜』と話を続けた。
「ベネヴァの街のぉクラッドって奴にぃ会ってみるといいかもしれんなぁ〜」
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スコットが半永久的に話を続けてくるため、無視する形で俺達は教会をなんとか脱出することが出来た。アシュにとってはかなりの恐怖体験だったらしく未だに俺の足にしがみついてぶるぶる震えいてる。
「アシュ〜、これじゃ俺歩けないんだが……」
顔をうずめていたからよくわからなかったが、アシュの顔は涙やらなんやらでぐしゃぐしゃになっていた。もう泣き止んではいるようだが、まだ、恐怖心を振るいきれないのかぶるぶるしてる為、手をつないであげることにした。
「いやー皆さんすみませんな。スコットの奴普段はいいやつなのですが、酒を飲むと人が変わってしまうタチでな」
『じゃ、こんな昼から酒飲むなよ!』とツッコミたかったが、村長にそんな事を言っても仕方ないだろう。それよりもスコットの言っていたクラッドって人のことが気になる。
「村長は、悪くないですよ。それよりも神父さんの話していたクラッドって人に会いにベネヴァまで行きたいのですが……」
「そうおっしゃられる思いましたよ。しかし、もうこの時間からは行くのは難しいでしょう。準備をしておくので明日に出発される方が良いと思いますぞ?」
「この時間って、まだ昼間ぐらいですよ?この村の隣街なら普通に行けるのでは?」
「隣街と言っても馬車で半日ほどかかりますぞ?」
「そんなにかかるのかよ!? もうそれ隣町じゃなくね!?」
あまりの驚きに思わず心の声が出てしまった。
「この村は辺鄙な郊外の小さな村ですので……申し訳ない……」
「いえ!そんなつもりで言ったのではなく……」
村長は不甲斐なさそうな顔をして帰宅するまで『こんな村誰もきたくもないのじゃろ』やら『老いぼれしかおらんものな』やら独り言を続けていた。かなり気にしていたのかもしれない。
(悪いことしたなぁ……)
その後も村長は少しネガティブになっていたが、村の歴史が分かる資料館やら村のシンボルらしい噴水を紹介してくれた。特にこれといって得た情報もなく、村長の家に帰った。
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「晩ご飯の準備が出来ましたぞ」
俺とアシュは村長の家で2度目の食事を頂いていた。メニューは昨日と同じもののようだが、ビックフロッピーはやっぱりうまい。
「ビックフロッピーは気に入りましたかな?」
「はい、今まで食べた唐揚げの中でも最高です!」
「おいしぃー!!」
アシュも唐揚げを気に入ったようでよく食べている。ついさっきまでぶるぶるしていたが、機嫌を戻したようで安心だ。
「お二人に気に入ってもらえてさぞビックフロッピーも喜んでいるでしょう。
さて、話は変わりますが貴殿の名前を決めましたぞ」
忘れていたが、俺は村長に名前を考えてくれるよう頼んでいた。仮名とはいえ、この先いつまで名乗るかわからないものだ。少しドキドキする。しかし、この歳になってしわしわの顔の老人に名付けられるとは……不可解なこともあるものだ。
「ズバリ俺の名は!?」
「でれでれでれでれ……」
焦らしてるつもりか、自分で効果音を付け始めた。いいから早く言ってくれ。
「……でれでれっでん! ズバリ貴殿の名前は……クロンじゃ!」
「くろん!」
アシュは気に入ったようだが……
「……悪くないですが、理由は?」
「そんなにしらけた顔しなくてもよいのではぁ? そんな顔するならちぃくわぁの方が良いのですかなぁ?」
「ちぃくわぁ!!」
本当にどこまでアシュとの会話を聞いていたのだろうか……
「いえ、ちぃくわぁやめてください。ただ理由があるのかなぁなんて思ったりしただけで……」
「理由は一応ありますぞ? この世界にまだ完全に解読されてない言葉がありまして、その言葉の中から適当に選んだのですぞ」
(適当なのかよ……)
「ロマンがありますじゃろ?」
特に要望も無いため、俺の仮名は、クロンに決定ということになるだろう。
「食事を終えましたら風呂にでも入ってはいかがですかな?」
今思い返すと、昨日は疲れて眠ってしまった為、風呂に入っていなかった。俺は村長の言葉に甘え、風呂に入ることにした。
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1日ぶりの風呂はとても気持ちがいい。
この家の風呂は蓋であっただろう木製の板をそこに沈めているため、五右衛門風呂のようなタイプだろう。恐らく外で村長が薪を適度に炊いてくれているのだろう。ただ違う点としては横にも長く特大五右衛門風呂と言った印象のする風呂だ。俺が気持ち良く風呂に浸かっていると、誰かが風呂の扉を叩く音がした。
「誰ですかー?」
「くろん? ひとりはこわいからいっしょにはいってもいいかなあ?」
アシュの声だ。
確かにあの歳の子供がひとりで入るのは怖いだろうし、危険でもある。
だが、幼いとはいえ、アシュも女の子だ。俺のような他人の男がいっしょに風呂に入るなんていいのか? だが、一緒に入らなかったらアシュは風呂に入れないんじゃないか? いや、その場合村長と入ることになるか……それなら俺でいいじゃないか!
あれこれ考えた結果、紳士な俺は共に風呂に入ることにした。
「いいよ。入っておいで」
--ガラガラ--
「さむかったよぉ……」
外との気温差によりたちこめた湯けむりの奥に、服を脱いで裸になったアシュがいた。
俺が色々な考えを巡らせてしまっていたせいでアシュの体は冷えてしまったらしい。
「ごめんな、ちょっと考え事してたんだよ」
「ううぅ……」
アシュはなにかもじもじしながらもお湯を使おうとしない。
「洗ってほしいの?」
アシュの顔が少し赤くなった。まだ、アシュの歳では、1人では洗えないのだろう。俺は持って入ってたタオルをゆっくりと慎重に腰に巻き、浴槽から出てアシュの後ろの椅子に座った。
「髪から洗うか?」
首を上下にこくこくと頷いている。俺はアシュの髪から洗うことにした。
(女の子の髪なんて洗ったことないと思うぞ!? どうすればいいのかっ!)
俺に女の子の髪を洗う知識はない。これは記憶喪失とは関係ないだろうが……
とりあえず、自分にしているように、お湯ですすいでから石鹸で洗ってあげることにした。
--ゴシゴシ--
「アシュ、気持ちいいか?」
「とってもきもちいいよぉっ」
どうやら気に入ってくれたようで俺も安心だ。
その後は同じ様に身体も洗ってあげ、風呂にも一緒につかった。
「そろそろ上がる?」
アシュがうなづいてくれたので風呂を上がることにした。
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脱衣場でアシュの髪を乾かしながら思ったが、銀髪に碧眼、色白……俺のような黒髪、黒目の人種とはお世辞にも思えない。推理通り、アシュも俺のように、もといた世界から異世界に転移していたとしたら、なぜこんなにも見た目の違う2人が共に転移したのだろう?
「ふきふきできたぁ?」
考え事をしてしまっていたせいでずっとアシュの髪をタオルで拭き続けてしまってたようだ。
「綺麗にお水さんバイバイしたよ」
「おみずさんばいばーい」
おかげでだいぶ水気はとれたが……髪の毛の1本1本が、細いふわふわでいい香りのする銀髪が戻ってきた。ドライヤーがあればもっといいのだが、魔法などがあるこの世界にはきっとないのだろう。
その後はお互いに綺麗に水分をとり、服を着てそれぞれの部屋に戻って寝ることにした。
明日は早い時間から出発だ。アシュには話してなかったが一緒に来てくれるのだろうか? もうアシュも寝ているだろうし、起こしてまで聞くことでもない。また、明日聞いてみよう。そう思い俺は今日も深い眠りについた。
今回は少し長かったと思いますが、読んでくださり誠にありがとうございます!次回からも5000文字くらいを目安にしていこうかと思っております。




