出会い
村長に連れられて俺は幼子のいる部屋の前まで行った。
「この部屋に幼子がいるはずじゃよ。しかし、相手は未知の種族。用心してくださいな……大人が2人も押しかけると怖がられるかもしれんからわしは外で待っておりますわ」
そう言うと村長はリビングに帰っていった。
俺が記憶喪失したすぐ前に村に1人で来た子供……現状、俺の事について何か知っている可能性はかなり高い。しかし、相手は人間族では無い。何をされるかわからない恐怖心もあるが、話をしてみないことにはなにも進展はないだろう。
そう思い俺はドアを開けた。
--カチャ--
ドアが開くと同時にふわっと微かに甘い香りがした。
ドアを完全に開けると、そこにはベットの上にちょこんと座っている幼い女の子がいた。
白いワンピースのような服を着たており、銀色の髪のショートヘアに緑色の目、強く握ったら折れてしまいそうな細い腕と足を持った、か弱そうな女の子がそこにはいた。
なんだか懐かしい気分もするが、記憶喪失をしているため気のせいだろう。
「ひぇっ」
そんな考えも束の間、俺の顔を見た途端、幼い女の子は小さな悲鳴のようなものを挙げた。
「お兄さん怖い人じゃないよっ! 何もしないから怖がらないでねっ!」
焦ったためか、 余計怪しいセリフを思わず吐いてしまったが、以前幼い女の子は俺を見て震えている。
「お兄さんは少し君とお話をしに来ただけなんだよ。そこに座ってもいいかな?」
俺は再び幼い女の子に対して言葉を投げかける。
『ブルブルブル……』
尚も返答はなく、幼い女の子はただ震えているだけでいる。仕方ないのでベットの近くの椅子に腰をかけようとしたが……
『びくっっ!!』
俺が一歩踏み出しただけで幼い女の子は大きく震えた。思わず俺もびくっとしてしまった。
(すげぇー怖がらてるんですけど、これ近づいても大丈夫か?)
話すのを諦めようかともおもったが、この女の子は俺の記憶喪失を知っているかもしれない重要な人物だ。ここで引くわけには行かない。
俺はそろーりと椅子までたどり着き、なんとか椅子に腰をかけることに成功した。
「君の名前は何ていうの?」
「…………」
「答えたくなかったら良いんだけど……」
「わかりゃない……」
(わかりゃないって……)
俺の緊張感は一瞬にしてこわされたが、確かに今この女の子は自分の名前がわからないって言った。
もしかしすると、この女の子は俺と同じような記憶喪失を起こしているのかもしれない。
そうとあれば、俺との関わりが何らかの形であるのはほぼ確実と言えるだろう。この女の子を怖がらせずに情報を聞き出さなくては。
「家族とかはいるの?」
「わかりゃない……」
「なんでここにいるのかわかる?」
「うっうぅぅ……」
(やべぇ……泣かせちまったか……)
少し一気に聞きすぎたかもしれない。
気が付くと何もわからない。自分もわからない。こんな幼い女の子にとって、そんな状態になってしまったら恐怖でしかないだろう。
(少し落ち着くまで待つか……)
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五分くらいたっただろうか?
女の子の様子もだいぶ落ち着いてきたようなので、質問ではなくお話をすることにした。
「好きな食べ物とかあるの?」
記憶喪失する前の俺はコミュ障だったのか……こんな時にどんな話をすれば良いのか? 全く思いつかない……
「ちぃくわぁ」
(ちぃくわぁ? ああ、竹輪かぁ…… っておい!竹輪かよ!!)
思いもしなかった回答に心の中でツッコミをいれるが、まさか竹輪かよ……
「お兄ちゃんも竹輪大好きだよー」
「ふふふっ」
(おっ! 笑ったぞ! 今確かに笑ったぞ!!)
別に竹輪は大好きという訳では無いが、女の子が笑ってくれたのはとても嬉しい。この調子で仲良くなれたら話も聞きやすいかもしれない。
「おにーちゃんのおなまえわぁ?」
向こうから話しかけてくれるのは嬉しいがこの質問には答えられない。だが、同じ立場である可能性がある為ここは素直に答えよう。
「実はおにーちゃんも名前わかんないんだよ」
女の子は一緒戸惑ったかのように見えたが、なにかを閃いたかのような顔をしてこう言った。
「おなまえをつけあいっこしよう?」
それは、考えてもいない展開だった。
だが、たしかに、このままおにーちゃんや君と言い合うのはお互いの仲を深めるには少し素っ気ないかも知れない。ここはお互いに名前をつけあって少しでも親近感を持ってもらおう。また、今後の情報収集で名前がわかるかもしれない。今だけでも呼び合う名前をつけ合うのも悪くないかもしれない。
(でも、おにーちゃんって呼ばれるのも捨て難いなぁ……)
そんな事をを考えながらも、この女の子の名前を考えるのであった。
やっと幼女を出せました。名前は次回ということでまた宜しくお願いします。