遭遇!ビックフロッピー!
森は主に白樺や当檜等の木々が多く見られる。そのため、陽樹林と混交林の間と言ったところだろうか? しかし、自然にできた森というよりも、誰かが意図的に手を加えた、雑木林感が否めないのだが……
「それにしても、いきなり草原から森になるものだな……」
「そりゃそうさ。ここは世界でも有数の成功した人工バイオームだからな」
「人工バイオーム? それってなんなんだ?」
「何もクソも、その名の通り人の手で森、林、川、雪原なんてものが作られた土地のことさ」
おいおい……なんだそりゃぁ……そんなことが出来るなら、海辺とか関わらず、可愛い子が水着で生息している夢の南国リゾートが世界中にできるじゃねーか!!
「いったいどうやったらそんな事出来るんだよ。仮に出来るとしても、なんで森作ったんだよ! 南国リゾートにしろよ!」
「おいおい、俺にそんなこと言われてもこまるんぜ……」
ペイルは困ったように眉をひそめたが、『でも……』と話を続けた。
「どうやって作ってるかはよく知らんが、噂では魔法族のお偉いさんがなんやかんやしてるらしいぜ。あと、わざわざ森のバイオーム作ったのにはきちんと訳があんだよ。この辺りは1面草原だったろ? だから食糧となるモンスターとかが少なかったんだよ。昔のべネヴァは食糧難で飢えに苦しむ人が多かったが、お陰様で今では食料自給率97%だせ」
まじかよ。この森すげーな。どのくらいの面積誇っているかは知らないが、この森のおかげであのバカでかい街の食料自給率をほぼ満たすとは……
「まあ、森があっても俺達みたいな食糧を調達してくる奴がいなきや勿体ないってことさ。さぁ、この街の食料自給率に貢献して100%目指すぞ!」
(2人でこの街の食糧の3%も調達するのかよ……)
そんな事を考えながら歩いていると、先導していたペイルが動きを止め、木に隠れるように張り付き、こちらに手のひらを向けてきた。止まれということだろう。何かモンスターでも、見つけたのだろうか?
「おい、ビックフロッピーだ。あまり大きな音をたてるなよ」
ペイルはほとんど声とは言えないくらい、微かな声で伝えてきた。
「でも、どこにも見当たらないぞ?」
俺もペイルのすぐ隣にあった白樺の木に隠れ、ペイルが指さす方向に目をやるが、何も見当たらない。ビックフロッピーというだけあって、相手はビックなはずなのだが……
「ほら、あそこ見てみろよ。地面からなんか出てんだろ。あれがビックフロッピーの舌だ」
ペイルの指さす方向をよく見ると、地面から30cmくらいの長さのピンク色のキノコの様なものが生えているが……
「あれがビックフロッピーの舌? どう見ても怪しいキノコだぞ? てか、なんで舌だけなんだよ」
「あいつの本体は地中だ。ビックフロッピーは普段、ああやって地面から舌を出し、キノコと間違えて近寄ってきた獲物を丸呑みにするのさ」
どうやら、ビックフロッピーはチョウチンアンコウ的なスタイルで生きているようだ。
「あれがビックフロッピーなのは分かったがどうやって倒すんだよ」
「そんなの簡単さ。お前があの舌を引き抜くんだよ」
(まじかよ……)
冗談で言っていると信じたいものだが、ペイルの顔を見ると至って真剣だ。どうやらそれが正攻法らしい……
俺はほとんどため息とは言えないくらい、微かなため息を吐いた。
少し短いですが今回はここで切らせてもらいます。次回はビックフロッピーとの熱い格闘!?次回も宜しくお願いします。




