目覚め
今回でモノローグ終了って感じですかね?
「ん・・・う~ん・・・」
僕は目覚めた。感覚として10時間くらい寝ていたみたいだ。
「ここは・・・?」
僕は街中で倒れたはずだが、いつのまにかベッドに横たわっていたみたいだ。
部屋をじっくり観察してみると、ここは木造建築の2階らしい。ログハウスの寝室みたいだ。
明かりに電燈はなく、ロウソクによる物だった。
「とりあえず・・・いっつ・・・」
立ち上がろうとしても、全身を痛みが襲う。仕方なく立つことは断念し、もうしばらく寝転がっていることにした。
すると、一人の女性が入ってきた。
いかにも、ゲームに出てくる宿屋の看板娘って感じの娘だった、白い布を頭に三角巾のように巻いていたり、エプロンをつけていたりと、今さっきまでもそういう作業をしていたようだ。
パンや牛乳などを載せているお盆を持っている。
「あっ・・・起きてる」
「起きてたら、なにか?」
「いえ、街道で倒れてたから・・・もうちょっと時間がかかるかなって」
「まぁ、確かにまだ全身痛いので立ち上がれないですが・・・」
僕は上半身を縦に立たせた。起き上がるほどのエネルギーを使わなかったからか、案外すんなり上半身を起き上がらせることが可能だった。
・・・で、疑問が山積みだ。
「で、僕は今まで道で倒れてたんですか?」
「正確に言うと、今から2時間前まで、かな?ずっと寝てたんだよ?」
マジでか・・・正直言って、驚きだった。
今まで17年間生きてきたが、2時間も意識を失っていたことなんて睡眠以外でなかったからな・・・。
「で、武器も持ってないみたいだし・・・魔物にやられたのかなって思ったの。そしたらゴウラさんが、可哀想だから泊めてあげろって。ゴウラさんって、この宿屋の店主ね?」
「ふ~ん・・・え?」
ちょっと待った、色々聞き逃しそうになったが、結構おかしいことを聞いた気がする。
「魔物って何の事です?それと、武器?武器なんて物騒なもの持ってるはずが―――」
「え?・・・えぇ!?そんなピント外れな人がこの世に居るなんて!」
「どういう事ですか?」
「この世界、今はどこに行っても魔物だらけだよ!?街には幸い魔物は攻めて来ないけど、それでも森に行ったなら死ぬくらいの魔物が襲ってくるのに!」
・・・どうやら、倒れる前の記憶は真実みたいだ。ゲームの世界に巻き込まれた?そんな事、ないと信じたいが・・・
「信じるしか、なさそうだな・・・」
「とにかく、一晩寝てれば回復するでしょ!夜ご飯はここに置いていくから、明日になったら下に降りてきて!」
そう言って、彼女はドアを思いっきり開けて出て行ってしまった。お盆はベッドの近くに置いてあるテーブルに置いてあった。
「マジかよ・・・本気か?」
とりあえず、今のままじゃぁ情報が少なすぎる。今日のところはとりあえず、寝よう。
そう思った僕は、夜ご飯を急いでパクつき、急いで寝てしまった。ついでに言うと、この世界のパンと牛乳はおいしかった。
「おう、起きたか」
次の日、起きてすぐ下に降りてきた僕は、二人ほどの人間を見た。
一人は昨夜見た宿屋の娘。今話しかけてきたもうひとりはおそらくゴウラという者だろう。
ボディビルダーのように鍛え上がられた筋肉に、白いワイシャツのような服にベストを来ている。サングラスも掛けていて、そのサングラスが貫禄を出している。
こいつがゴウラでないなら、強盗だろう。
「しっかし、お前さん魔物も武器も知らねぇで育ってきたってぇのか?とんだアマちゃんだな」
「あの・・・その話なんですけど。僕は・・・いえ、なんでもないです」
今、真実を言おうとしたが、どうせ信じてもらえるはずもないだろう。沈黙は金、黙っておいたほうが得なこともある。
「ところで、そのカウンターは?」
さっきから気になっていた、宿屋にしては、カウンターの向こうには酒瓶が大量に置いてある。映画やドラマで見るバーという所はこういうものなんだろう。実際、椅子も大量に置いてあり、酒を飲む店としても機能してそうだ。
「あぁ、俺っちは世界中を旅してた時代があってだなぁ。北はアイシア、南はオーシャック、東はヤマト、西はニューテクノまで。・・・って、言っても分からねぇか。とにかくすげぇ旅しててな。世界中の酒を飲み歩いたさ。そこで、宿屋を開いたついでに酒場も開いたところ、大盛況ってわけだ。昼までは休み時間だ」
「そういう事ですか」
道理で、バーのような配置だった訳だ。
「それで、本題はこっからだ。お前さん、魔物も武器も知らんで育ってきたみたいだが・・・今から知るこたぁ可能だ。そこで、お前にはシルダ姉さんの店に行ってもらう」
「シルダ?」
はじめて聞く名前だ。きっとゲームのシステムでいうNPCなのだろうが。
「まぁ、早い話武器屋だ」
「なるほど。要は、そこに行ってこいって事ですね?」
「おぉ、話が早くて助かるなぁ。じゃぁ、道案内はカラにさせるからな」
「カラ・・・あぁ、あの娘さんですね?」
「おっ、娘たぁ面白ぇこと言うじゃぁねぇか。だが、カラはただの泊まり込みの従業員だよ」
まぁ・・・正直な話、顔も似てないしな。
そんな話をしていると、ゴウラの隣に立ちっぱなしだったカラがやおら立ち上がり
「ほら、さっさと行くよ!」
と言ってきた。急いでいるのか知らないが、早く行きたげだ。
「おぅ、気ぃつけてな~!」
ゴウラが手を振っている。この空気で行かなかったら詐欺だろう。
「えぇ、では行ってきます」
僕は、カラに手を引っ張られるままこの店を後にした。
次回から本格的にゲームし始めます