新生 -新規ログイン-
小説初投稿です・・・ちょっと不安なところもありますが。
是非、見ていただければなと!
『Bright Myth Online』・・・今流行りのVRオンラインゲームだ。
筐体に入れたソフトを起動して自分のアカウントを作成する。
そこからゲームに関する100個の質問を受ける。
答えたきっかり6時間後に、自分のアカウントにはいつの間にかキャラ原案が届いている。
そのキャラを自分好みに修正すれば、晴れて自分のキャラを操れるようになっている。
このような工程から『とても面白いゲーム』という評判を確立していると同時に、『キャラ作成に8時間かかるゲーム』という悪評も立っていた。
こんなゲームが流行りになった理由は、キャラ一個一個の特色が際立っているからだ。
先ほど言った100の質問の内、20個は容姿に関するもので80個はゲームプレイヤーの性格判断のようなもので、その性格判断によって自らに最も合っているクラスをコンピュータが自動で算出してくれる。
最も合っているクラスを自分で探す楽しみがなくなる、という意見。ごもっともだろう。
だが、このゲームの初期で就けるクラスは700種類だ。どうだ?これでも自分で探す楽しみがどうとか言う気分になれるか?
700種類ものクラスがあるために、自分のキャラと他のプレイヤーのキャラの役割が被るなんて事はそうそうない。自分の楽しみは、自分にしか探すことができないのだ。
そういう面から、賛否両論が分かれている。
ハマる者は超ハマリ、逆に手をつけない者は毛嫌いする。
「って訳なんだ!面白そうだろ?」
僕が通う高校の教室に、燃え滾るように熱い声が響く。
俺の友達、多原 強は僕にゲームを勧めんと押しに押してくる。
「聞いてるよ。でも、なんで僕なのさ?他にもいるだろ?ゲーム好きは」
「それが他の奴冷たくてさぁ。話を聞いてくれないんだ、ブラミスなんてクソゲーだ。キャラ作成に8時間かかるゲームなんて始まる前に飽きる。ってさぁ。」
的を射ていると思った。
敢えて口に出さないのが優しさだろう・・・僕は押し黙る。
「って訳だ!お前ってゲーム嫌いじゃないだろ!」
「嫌だ」
「早っ!」
「どうせ『一緒にやろうぜ~』って言うんだろ?お断りだよ」
「なんで分かった!」
逆になんでわからないと思ったんだろう・・・
僕はゲームは嫌いではない、けど娯楽程度だ。このクラスに5人位いるゲーヲタは所謂廃課金勢。お小遣いの9割をソーシャルゲームの課金に使いレート上げとやらの作業に専念する変人どもだ。強もそのグループも入っているだけに、ゲームへの情熱はひとしおってわけだけど。
「このクラスに居るゲーヲタは5人、その全員に断られて僕にすぐに頼みに来るわけがないだろう?って事は、きっと隣のクラスにも頼み込みに行ったはずだ。それに、強って顔が広かったし・・・僕の知ってるだけでもざっと20人は君と同じような人間がいたはずだろ?20人に断られてこっちに来たんじゃないか?」
「うっ・・・なぜ分かった」
図星らしい、ここで畳み掛けよう。
「だったら、そのブラミスってゲームがお気に入りになっているオタクはおよそ4.8%。そんなゲームを僕はプレイする気にならないね」
「ぐぅ・・・さすが全国模試で数学2位をとっただけある。とことん俺を理詰めにしてきやがった・・・」
強は何も言い返さない。口からでまかせで全部を済ませたが、どうやら上手くいったみたいだ。
「ほら。この話は終わりだ。5時間目が後5分で始まるだろ?さっさと移動しよう」
「あぁ」
次の授業は理科室で始まる。僕は足早に教室を出、強の話を切り上げた。
「とは言え・・・ブラミスか」
帰り道、僕の頭はその事ばかり考えていた。
HRの後に荷物をまとめながら、街中を歩きながら、コンビニで菓子を買いながら。
ずっとそのことばかり。どうしてだろう、気まぐれとでも理由をつけるべきか。
「ブライト・ミス・オンライン。略してブラミス・・・」
その時、後ろから声が聞こえた。女性の声のようだ。
後ろを振り返ると、フード付きのローブで身を包んだ者が立っていた。正直言って、気味が悪い。
「もしも、そのゲームが現実の世界だったら・・・」
「何の話だ?」
春先に多いと聞く電波の人だろうか?だとしたら、僕が話を聞いている理由はない。
「面白いですよね、人ひとりひとりに固有の役割がつく。ファンタジーと現実の違いこそあれど、現実により近いゲームは、現実でもおかしくないはずです」
「どういう意味だよ」
その時、フードの中から覗く口元が笑いに歪んだ気がした。
「あなたには資格がある・・・って事ですよ。音部六徳」
その名は、自分でも嫌っている名前だ。決して覚えているやつも多くもない。
なのになぜ・・・
そう考えている間に、僕の意識は闇に沈んでしまった・・・。