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KEYAKI の恋  作者: 玲於奈
2/13

芸術研修

なし

立正音楽大学 声楽科の同期

遠山 英夫


ひさしぶりに会う同期


体のラインのみえる

ぴっちりとした

スーツ


吊るしじゃない

あわせてつくっているのが

よくわかる

オーダーメイド


いつの時代にも大学に数名は

いる

お金持ち

いや彼の家は

それ以上か

なんでも

家が聖ヶ丘にあって

じいちゃんが多満大学に土地を

売ったとかうらないとか

そんな話がまことしややかに

流れた大学時代


苗字が

遠山だから

時代劇にでてくる

金さん


そして、

金持ちだから金さん。


揶揄する

そんな意味が

実は

込められていると思う。

しかし

本人は知ってるのか

いないのか。

いつもあけっぴろげの自由さで

いつも変わらず

どう思っているのか誰にも

まったくわからない


会うと毎回思うのだが

この人は身なりと行動が

まったく

ともなわない


ころがっている

びんをひろいながら

路上でキャップを開けて一口


キュッとのむ。


飲み方が

さまになっている。


いけない。いけない。

ジャニヲタの

視線になっている


だけど

本当に親切で


学部女子には全員

声をかけてて

話したことがない女子は

いないとか

さらには先輩、後輩、

果てはOGまで

学校にかかわる

女子の名前をおぼえているとか

いないとか

誠しややかな

都市伝説がたえない


さすがに

うちの立正音楽大も

女子ばっかりで

男子300に対して

女子は1500人

わたしは

女子高だったので

女子がいるのが

安心してここにきたけど


金さんは違う


男子はすこしは

いやかなり

かたみがせまくなるところを


金さんは

まったくどうじない

自由奔放

その生き方は

わたしにはできない


しかし

ふとおもえば


こういう

きっぷのよさが

自由さが

金さんといわれる

所以かもしれない


この間、コンマ3秒。


聞かれた質問に

あわてて

首をびゅんびゅんとふる

拍子に

この年でと思いながらの

ポニーテールの髪がゆれる


「まあた、暗い顔して

 おまえ、気をつけろよ。

 じゃあな」


すこし足もとが

ふらついた足取りで

歩き出す


そういえば

わたしのことを

倉とよんだ


本名じゃない

学部でのあだな

暗いから

いつも人をさけてるから倉


そうじゃない

それは違う

別人


わたしの名前はけやき


盛山 けやき


「よく、せいやまさんですか」


と聞かれるけど

そのまま読む

「もりやま」

あの森山直太朗と同じ


もりやま


でも、みんながいうとおりで

わたしは、

あまり人とかかわるのは苦手

いつもなるべく地味に

そして

人にかかわらないようにして

生きていた


センター駅にむかって

あるいていく金さん


「おーい、倉。

 ジャンボはうりきれだぞーーーー」


何をいいだすのかと

おもえば

やはり天然か

すこし笑ってしまった


しかし

その大声に

売り場に並ぶ人々がこちらをみる

道行くまわりの人の視線もはずかしい


恋人じゃないんだから


近くのコンビニにはいって

やりすごそうかと思ったら


「明日からの

 芸研たのしみにしているぜ」


さっきよりも

大きなこえでそうさけばれた


そして

金さんは

言うが早いか

宝くじをぴらぴらさせて

駅にむかっている


のこされた私は

顔面が急速に

あかくなって

いそいで、

サンリオのほうに向かう

家族連れの渦に

紛れ込みながら


そうか、明日から

芸研だった。

われにかえった。


なし

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