第九
なし
合唱は久しぶりだった
中学時代に
音楽の先生に誘われて
合唱部に入部した
コーラスの重厚さに
しびれるかんじにメロメロだった
私立で
そのとき、はじめて
第九を練習した
最後は、発表会で
近隣の高校や市民楽団と一緒に
市のホールで発表した
中学生での参加は
わたしたちだけだった
そして
ホールは歓喜に
つつまれた
もちろん
いまでは声楽科を卒業したので
それなりに
声には自信がある
ソプラノは、人数の関係で
5人となった
もちろん活用女子軍団は
アルト
でも、その並ぶ姿に
オーラがあるのはなぜ
やはり
華がある
先生は事務局の私をいじめるためか
ソプラノだけ
とりたてて練習することもあった
ソプラノだけで練習するとき
参加者の視線をあつめた
あのやぼったい人が
そう思われているに違いない
大学時代も
そうだった
歌いながら
何年か前、イギリスで
オーデション番組からスターに
なった女性を唐突に思い出した
合唱は
なんとか最後までとおすことができた
おわって休憩の時
柳原がやってきた
「すごい、よかったですよ」
握手を求めそうな勢い
「ソロがすてきでした
僕は、鍵盤でしたが、
けやきさんは、声楽でしたね
昼に話したから、
それは
もう驚きましたよ」
さわやかなバリトン声が続く
ソロは、
平川先生のいやがらせの極致で
毎年、
させられるのでもう動じない
ほんとうは、今日
指揮もふらせたいところだったらしいが
それは、ソロをすることで
許してもらった
なおも
なにかいいたげな
柳原をおいて
中心大学の学生が
講義の最後の
演奏準備をしはじめたので
それを手伝うと断って
その場を離れた
さいごにする演奏
なんとそれは
エレキギターだった
なし