出会い
なし
昔から
なぜかなと思うけど
わたしには
わからない
だけど
やみくもに
とつぜんに
急に電車に乗りたくなる時がある
このあたりは
JRも西武も京王も小田急も
いろいろあるのに
なぜかこの乗り物
そうわたしは
こののりものがすき
この路線は始発駅から
終点の駅まで乗っても
1時間もかからない
大学入学の手続きで
こちらに来て
初めて乗って
運がよかったのか
富士山が車窓から見えた
すごく驚いた
わたしの中には
富士山は都内からしか見えない
そういうイメージがあったから
雪の帽子をかぶった
富士山をみて
ほんとうにおどろいた
この乗り物は
高いところをはしる
いいところは
季節ごとに移りかわる
まちの様子がながめられる
桜がピンクになって
街中が新緑になり
そして
秋になって
赤や黄色に街が変わるのが
たまらない
そして、それが
この乗り物の
すきな理由なのかもしれない。
けやき
わたしと同じ名前
この街は、
この木を大事にしている
そういえば
なんで私ってけやきって名前を
つけてもらったんだっけ
暮れもちかづいた25日
私は終着駅にある
パルテノンを見あげていた
おなじ
広い空
モノレールの時もそう
なっとくする
乗っているとき
本当にそう思う
そしてここも
電柱のない
ただっひろい風景
空が広がる光景。
やっぱり
わたしはそれが好きなのだ
駅の連絡通路には
正月イベントのポスターが
これでもかと貼られている
去年のお正月を思い出す
父さんの酔っぱらいに
つきあいながら
見た駅伝
父さんの相手をしながら
ふと思いたって
イケメンさがし
まぶしいくらいの
美少年多数
軽い気持ちで
はじめたのに
こちらが
夢中になってしまった
中・高時代の
ジャニヲタメモリーが
よみがえる
家族に嫌がられながらも
どんだけHDDの扱いに
詳しくなったことやら
父さんは
終始
機嫌がよかった。
とにかく笑って
お酒をのんでた
その明るさは
わたしに
きっと言いたいことが
あるんだろう
その裏返しに
思われた
みんな
知っているだろうけど
いろいろあって
やめてしまった
Yピアノスクールの講師
父さんは
結局明るく
私の近況にはいっさい触れず
そして
2日間とも
ゴールに着く前に寝てしまった
大晦日に
私が帰省してから
まったくふれられなかった話題
とにかく
話題から
逃げるように
わたしは
じっとテレビから
目がはなせなかった
ふりをしていたのか
そんな去年の年始を
思い出しながら
これから
今年はどうしようかと
ベネッセの方を
ぼんやり
ながめた
とつぜん
突き飛ばされた。
はく息の酒臭い
すぐそばの行列している
宝くじ売り場から出てきたようだ
ぶつかったのは
男だった
「なんだ、あぶねえなあ」
ポケットからウイスキーの瓶が
神殿前に続く
白い道路に転げる
ぶつかった手前
ころがる瓶を
ひろうとしながら
ふとその顔に
どこかであった気が
「なんだ、倉じゃないか。
おまえ、こんなとこに
住んでんのか?」
かつて同じ学部の
金さんだった。
なし