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第三話 盗賊との戯れ

「きゃぁ!」


 甲高い悲鳴。

 それと共に森がざわめいている。

 何となく文にするとネタっぽく見えるが、その悲鳴は確かに危機に陥った女性の物だった。


 それを聞いた俺はさらに走る速度を上げる。

 聞こえた声の大きさから推測すると、あと200mといったところだろう。

 進むに連れ徐々に道幅が広くなってきた。


 道の端の方に止められた一台の馬車。馬は逃げ出したのか見あたらないが、その荷台は屋根がないタイプのため恐らく行商用だろう。

 そして荷台にもたれ掛かるようにして怯えている一人の若い女性。

 茶髪でかわいらしい、おとなしそうな同年代ぐらいの少女で、質素な服に頭を茶色い布で覆い隠していた。


 そしてあと100m


 それらを取り囲むように、頭に赤いバンダナをした男の盗賊たちが配置されていた。

 その数10人。

 もちろん周りは森である。


「おかしら~。こいつは上玉でっせ」


 一番痩せこけて、骸骨のようになった体をした一人が、少女の正面で品定めするようなイヤラシい顔つきで口を開いた。


「ああ、金になるもんは全くなかったからな。今回はそいつで我慢するしかねぇか」


 最もガタイのいい一人が口を開く。おそらくこいつがお頭なのだろう。一人だけバンダナを頭でなく腕に巻いている。

 ただ一つ気になるのは、どちらかと言えば唯一お頭だけが盗賊らしからぬ目をしていることだが……


「さぁ、そいつを連れてさっさと引き上げるぞ!」


「へ~い」


 お頭の言葉を聞いて、骸骨のような盗賊の一人が怯える少女に近付いていった。

 そしてそいつの手が少女に触れようとする。

 直後、そいつのわき腹に俺の飛び膝蹴りが炸裂し、骸骨は数メートルぶっ飛んでいった。


「おい、お前。大丈夫か?」


「え? あ、はい」


 突然のことに驚いたのか、少し声が裏返ってはいたが、どうやら取りあえずは大丈夫らしい。


「じゃあ、ちょっと危ないからココに隠れといてくれ」


「あ、わかりました……」


 そうして俺はその女性を荷台へ押し込んだ。


「てめぇ! なにしやがる!」


 吹き飛んだ骸骨が脇腹を押さえながら起きあがると、腰に下げてあった粗末な片手剣を抜き、ドスドスと近付いてきた。


「なにっていうか、盗賊なんかに襲われてる人を見たら助けなきゃなぁ」


 ここファンタジーっぽいんですもの。

 何か情報が欲しかったのと、このすんばらしき森の景色に飽きていたことは秘密だ。


「俺らをなめやがって~」


 悪役っぽいセリフを吐いた骸骨が、何の考えもなしに剣を振りかざして襲いかかってきたので、俺はとりあえず腹を思いっきり蹴り飛ばして退場させてやった。

 「ぐぽぁ!」とかいうかわいい叫び声を上げていたが、気にしないでおこう。



「……お前、なかなかやるじゃねえか」


 一部始終を見守っていたお頭がやっと口を開いた。


「そうですか。そりゃどうも」


「お前のその剣もかなり物が良さそうだな」


 お頭は骸骨の剣よりも数倍以上の価値があるであろう派手な装飾の大剣を背負っていた。おそらくだが相当腕も立つ。

 さすがはお頭だ。


「あなたの剣もいい物なんでしょうね」


「おっ、分かるか? これは貿易商から手に入れてな……」


 そう言ってお頭は、剣を見せびらかすように持った。


「まぁお前の剣も戴いていくんだけどな。野郎ども、かかれ!」


「へい!」


 その声を合図に、残りの8人が動き出した。


 俺は馬車の荷台を背にして抜刀せず(・・・・)に刀を構える。


 まず、最初に左から襲い掛かって来た一人を逆袈裟のカウンターで殴り上げようとすると、背後からもう一人が襲い掛かった。

 それに切られまいと初撃と二撃目を紙一重で躱わすと、さらにもう一人が横から鋭い突きを放つ。

 俺はその攻撃をいなすと、そいつを蹴りで吹き飛ばした。


 正直先程の骸骨とは打って変わって、8人はそれなりに素晴らしい動きだった。

 無闇矢鱈に剣は振りかざさないし、あまり無駄な動きも見せない。


「チッ、埒が明かねぇな……。てかあぶねぇわ」


 俺は思わず愚痴をこぼした。

 鞘付き刀を横に薙ぎ払い、先程の二人を飛び退かせると、俺はもう一度荷台を背にする。

 そしてちらりと荷台の中に目を遣った。


 荷台に隠れる少女。

 残念だが利用させてもらうしかないか……


「おい、お前」


 決意を固めた俺は、その少女に話しかけた……

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